莫大な人口を抱える中国は、国内の穀物生産量を増加させているものの、海外からの輸入にまだ大きく頼っている。中でもウクライナから大量の農作物を輸入していた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、中国当局は米国産農産物の輸入を再び増やしている。
英ニュースサイト
『トゥデイUKニュース』によると、中国は世界最大の農産物輸入国であり、昨年は、過去最高の2800万トンのウクライナ産トウモロコシを輸入した。これは前年の1100万トンから2倍以上である。それでも中国の穀物供給不足は今後3年間で約1億3000万トンに達すると推測されており、家畜の飼料が不足すれば、現地の食料インフレはさらに深刻な問題となることが懸念されている。
昨年の異常気象が地域の収穫に影響を与えたため、供給不足はすでに問題になっている。さらに中国の厳格なゼロ・コロナ政策が、輸入食品のサプライチェーン問題を増幅させている。先月、中国当局は国の中央備蓄から食用油の一部を放出することを決定していた。
輸入小麦とトウモロコシの価格はすでに記録的な水準近くまで急騰しているが、中国にとって特に大豆が重要な弱点である。大豆消費の80%以上を輸入に頼っている。
香港の『サウスチャイナモーニング・ポスト』によると、中国は最近、アメリカのトウモロコシ出荷を10隻分、さらにブラジルからの不足分を補うために、アメリカの大豆の出荷を20隻分予約したという。
ウクライナの戦争は、中国へのトウモロコシ、大麦、ヒマワリ油の主要な輸出を中断させる恐れがあり、おそらくロシアからの農産物出荷も中断させる可能性がある。ウクライナでのトウモロコシの植え付けシーズンは来月から始まる予定であるものの、ロシア侵攻、農業従事者の不足、輸送・物流周りの混乱により、これらの作物が危うくなる可能性が出てきている。また、ブラジルも悪天候により大豆の収穫が遅れ、トウモロコシの収穫は減少した。
『ロイター通信』は、習近平国家主席は6日、穀物の安全保障と国内市場への依存を確保し、生産を維持しなければならないと述べたと伝えている。習首席は、中国人民政治協商会議の代表との会合で、中国は国内の生産能力を保証し、穀物を「適切に」輸入すべきだと述べた。「食糧問題は工業化と同じくらい重要であり、国際市場に頼ってはならない」と語ったという。
米『ブライトバート』によると、中国は昨年、アメリカ産のトウモロコシや穀物の代わりとして、ウクライナからの輸入の割合を増やした。2 月に発表されたイリノイ大学の研究によると、ウクライナは「中国への輸入の 60 ~ 90%」を供給している。中国は2020年にウクライナの最大のトウモロコシの顧客として欧州連合を抜いた。大豆にいたっては、約84%が輸入品で、ブラジルと米国が主要供給国となっている。また、専門家たちは、ウクライナのひまわり油の生産量が減少し、顧客が代替の植物油を求めるようになれば、大豆の需要が急増する可能性があると見ている。
一方、ウクライナとロシアはトルコからの青果物の主要な買い手であり、戦争で輸出が途絶え、価格が50%近く下落したため、突然、トマト、キュウリ、ピーマン、ナス、ズッキーニが余ることになった。寒波の襲来で価格の下落は止まったものの、トルコの農産物ディーラーは、再び暖かくなるにつれ再度下落すると予想している。
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3月2日付米
『スぺース・ポリシー・オンライン』ニュース(1973年設立の米宇宙政策等の専門ニュース)は、「ロゴージン長官、ISS含めて米・欧州との事業協力模索」と題して、英国政府参画の衛星通信会社の衛星打ち上げを中止すると脅しをかける一方、最終的には欧米との宇宙開発事業継続を望んでいる模様と詳報している。
ロシア国営メディア『RT(ロシア・トゥデイ)』テレビニュースは、ロシア連邦宇宙局(ロスコスモス、1992年設立)のドミトリー・ロゴージン長官(58歳、2018年就任)が3月1日、欧州が制裁によってロシアのロケット・宇宙産業を破壊しようとし、ウクライナ人ハッカーがロシアの宇宙船コントロール・センターにサイバー攻撃をかけようとしていると非難していると報じた。
更に同長官は、ロシアに敵対的な英国政府が参画している衛星通信会社ワンウェブから出資を引き揚げること、及び、同社衛星を軍事目的に使用しないことを保証することを要求するとし、もし実行されなければ、3月5日発射予定の同社衛星36基搭載のソユーズ・ロケット打ち上げを中止する、と脅した。
ワンウェブは、英国政府及びインドの移動通信会社バーティ・グローバル(1976年設立)が主要出資者となっていて、他にフランスの通信衛星運営会社ユーテルサット(1977年設立)、ソフトバンク(1986年設立)、米国の衛星通信会社ヒューズ(1971年設立)、韓国の複合企業ハンファグループ(1952年設立)が加わっている。
同社はこれまで、衛星通信運用のために計画した648基の衛星のうち422基の打ち上げをソユーズ・ロケットに委ねてきていた。
この脅しに対して、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略担当のクワシ・クワルテン国務長官(46歳)が、英国はワンウェブから撤退するつもりはないと言い返したことから、ロゴージン長官は3月2日、英国政府に2日間の猶予を与えるとして、3月4日までにロシア側要求を呑む回答がない限り、3月5日のソユーズ・ロケット打ち上げを中止する、とやり返してきた。
一方、ロゴージン氏は米国に対しても冷ややかなコメントをしていた。
同氏は2014年当時、国防及び宇宙開発事業担当の副首相であったが、同年発生のクリミア半島併合に伴う欧米による制裁に遭っている。
その際、同氏は、米国が対ロシア制裁に踏み切れば、ロシアは米国人宇宙飛行士をISSに向かわせるためのロケット提供を止めることになるが、そうなったら、米国はトランポリンを使ってISSまで飛行士を飛ばすのか、と皮肉交じりに批判していた。
米国は、スペースシャトル運用を2011年に終了してしまったので、その後の米国人宇宙飛行士をISSに送り込むのにロシアの協力を仰いできていた。
ただ、同氏の批判はあったものの、その後もロシアは米国人宇宙飛行士をISSに送り届ける協力は続けてきていた。
今回、同氏が言わば降格人事で2018年にロスコスモス長官に就任していることから、米国への対応が注目される。
何故なら、昨年4月9日にソユーズ・ロケットでISSに向かった米国人のマーク・バンデ・ヘイ宇宙飛行士(55歳)が、ISSに連続355日という最長滞在記録を打ち立てた後の今年3月30日、ソユーズ・ロケットで地球に帰還する予定となっているからである。
しかし、今のところロゴージン長官は、米国がロシアに対してこれ以上“冷酷にならなければ”、ISSに関わる事業協力を再考する用意はあると仄めかしている。
3月3日付フランス『AFP通信』は、「ロシア宇宙局、英国の衛星通信会社の衛星を軍事目的不使用の保証を要求」と題して、ロスコスモスが、ソユーズ・ロケットで打ち上げが予定されている英国衛星通信会社の衛星を、軍事目的に使用しないよう法的拘束力を伴う保証を求めたと報じている。
すなわち、ロスコスモスは3月2日、3月5日にソユーズ・ロケットで打ち上げる予定の36基の衛星について、依頼主である英国の衛星通信会社ワンウェブ及び欧州ロケット打ち上げ企業アリアンスペース(1980年設立、フランス本拠)に対して、“軍事目的に使用しないこと、また、関連軍事機関に衛星サービスを提供しないことにつき、完全な法的拘束力に基づいた保証をすることを求める”との声明を出した。
更に、“英国のロシアに対する姿勢が敵対的”であることを理由に、英国政府に対してワンウェブへの出資を引き揚げるよう要求した。
その上で、ロスコスモスは、グリニッジ標準時の3月4日午後6時半(日本時間5日午前3時半)までに明確な回答がない場合、5日に予定しているワンウェブの衛星を搭載したソユーズ・ロケットの打ち上げを中止すると言明した。
(注1)ISS:米国・ロシア・日本・カナダ及び欧州宇宙機関(ESA、2012年設立)が協力して運用している宇宙ステーション。地球及び宇宙の観測、宇宙環境を利用した様々な研究や実験を行うための巨大な有人施設である。1998年11月から軌道上での組立が開始され、2011年7月に完成。当初の運用期間は2024年までの予定であったが、2022年2月、米航空宇宙局(NASA、1958年設立)は2030年まで運用を継続すると発表している。
(注2)ワンウェブ:2012年に米国で立ち上げられた低軌道衛星群を用いた衛星通信会社。ソフトバンクグループが10億ドル(約1,100億円)出資して、650基の衛星を打ち上げて衛星通信サービスを開始する計画であったが、74基打ち上げたところで追加資金調達に失敗し、2020年3月に米連邦破産法第11章(チャプター11)に基づく会社更生手続きを申請。同年7月に英国政府・インド通信会社が計10億ドルを出資して事業再開。
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