フィリピンでは5月9日、6年に一度の大統領選が行われる。ロドリゴ・ドゥテルテ現大統領(76歳、3月28日に77歳、2016年就任)は就任早々から脱米国、親中国・ロシアを標榜してきた。しかし、近年の中国による南シナ海領有権問題に関わる威圧的な姿勢の激化に加えて、直近のウクライナ軍事侵攻に伴う国際社会からの強烈な対ロシア制裁をみるにつけて、次期大統領は誰がなっても、従来の親米路線に復帰するとの見方が強い。これは、3月28日に幕を開ける近年で最大規模の米比合同軍事演習が実施されることからも、十分窺い知ることができる。
3月25日付香港
『アジアタイムズ』オンラインニュース(1995年設立)
2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、開口一番、脱米国、親中国・ロシア政策を打ち出した。
最初の外遊先を中国に決め、2016年10月の訪問時には、“これからは、中国・フィリピン・ロシアの3ヵ国連携が世界に対抗する唯一の同盟だ”とまで言ってのけた。
更に、数日後に来日した際には、安倍晋三首相(当時62歳、2012~2020年在任)との会談前に、“就任後2年以内に、駐留米軍に退去してもらう”と言い切っていた。...
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3月25日付香港
『アジアタイムズ』オンラインニュース(1995年設立)
2016年6月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、開口一番、脱米国、親中国・ロシア政策を打ち出した。
最初の外遊先を中国に決め、2016年10月の訪問時には、“これからは、中国・フィリピン・ロシアの3ヵ国連携が世界に対抗する唯一の同盟だ”とまで言ってのけた。
更に、数日後に来日した際には、安倍晋三首相(当時62歳、2012~2020年在任)との会談前に、“就任後2年以内に、駐留米軍に退去してもらう”と言い切っていた。
その関係もあって、フィリピン政府は、2016年のバリカタン演習(注後記)を突然中止とすると決定している。
また、その後の演習は規模を縮小して続けられたが、2020年の演習は、折からの新型コロナウィルス感染問題深刻化の影響で中止に追い込まれている。
しかし、フィリピン国軍(AFP、1897年創設)は昨年10月、2022年以降バリカタン演習を最大規模で開催し、また、それ以外の小規模共同訓練を300回以上実施する旨発表した。
この背景には、中国軍が南シナ海において、フィリピン軍艦や漁船団に対する度重なる威圧的行為を激化してきていることと、武器供与に頼っていたロシアが、直近のウクライナ軍事侵攻に伴って国際社会から非常に厳しい制裁を科されるに至っていることがある。
すなわち、ドゥテルテ大統領は親中国路線に伴って、総額260億ドル(約3兆1,200億円)に上る大規模経済援助の約束を取り付けたものの、同大統領任期中には大型インフラ・プロジェクトが唯の一つも完成していないにも拘らず、フィリピンが主権を主張する南シナ海スプラトリー諸島(南沙諸島、フィリピン呼称:西フィリピン海)において、中国側の一方的海洋進出が進められてしまっている。
そこで、同大統領としても昨年開催の東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)・中国サミットにおいて、中国側蛮行を直接的に非難する対応をしている。
同大統領以上に、国民や軍関係者の中では、もっと中国への不信感が醸成されているようで、フィリピン民間NPO社会気象ステーション(1958年設立の研究機関)が2019年に実施した世論調査によると、中国支持は僅か33%であったのに対して、米国支持は72%にも上っていた。
また、2018年にフィリピン国防大学(1963年創立の国立大学)所属の学生らに対する調査の結果、大多数が中国よりも米国との関係強化を望んでいることが分かった。
一方、ロシアについても、同大統領は就任当初、ウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を“好ましい英雄”と褒め称えていたが、直近のウクライナ侵攻で国際社会から孤立する状況に追い込まれてしまっていることから、“プーチンは自暴自棄”とまで扱き下ろす程である。
かかる背景もあって、5月9日投開票の大統領選において、どの候補が当選しようとも、脱中国・ロシア、親米路線復帰という政策が取られることになろう。
同日付マレーシア『ザ・スター・オンライン』(1971年設立)
AFPは3月25日、3月28日~4月8日の間、米比両軍合計9千人近くの将兵が参加する、ドゥテルテ政権下では最大規模のバリカタン演習を実施すると発表した。
チャールトン・ショーン・ガエラン少将によれば、“バリカタン演習は、フィリピンと米国両国間の安全保障関係の強靭さを証明するものだ”とする。
今年の同演習は、海上治安活動、水陸両用作戦、実弾訓練、市街戦、飛行訓練、テロ対策、人道支援及び災害復旧に注力して実施されるという。
米第3海兵師団(1942年創設)司令官のジェイ・バージェロン少将は、“米軍及びAFPは、世界の現実的問題に高い能力と責任を以て対応していくため、戦術・先端技術共有、及び具体的作戦実施の成果を高めていく共同訓練を実施する”としている。
なお、1990年代に始められた同演習は、ドゥテルテ政権下で一時期縮小化されていたが、同大統領自身、近年の中国軍の台頭及び南シナ海領有権問題での威圧的行動を目の当たりにして、親米路線に舵を切り始めたことから、大規模演習を復活させている。
(注)バリカタン演習:1998年の在フィリピン米軍基地閉鎖に伴って開催されるようになった米比年次軍事演習。「バリカタン」はタガログ語で「肩を並べて」の意。
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カナダのビル・ブレア公安相は議会特別委員会で25日、中国は合成オピオイドであるフェンタニルの主な供給源の一つであり、カナダ国内での過剰摂取の問題において重要な役割を果たしていると語った。
カナダ日刊紙
『ナショナル・ポスト』によると、ブレア公安相は冒頭の演説で、カナダにおける中国の対外干渉の試みが増えていることや、現在のオピオイド危機における中国の役割について繰り返し警告を発した。
「外国からの干渉は最重要課題の一つですが、それが唯一の問題ではありません。中国がフェンタニルだけでなく、この非常に強力で致死性の高い合成オピオイドを作るために使用される前駆体化学物質の主要な供給国の一つであることは周知の事実です。」と述べ「過去4年間で カナダ国境サービス庁は335件の押収を行い 合計42. 2キログラム以上を押収しました。そのうち129件は 中国を供給国としています。」と説明した。
米『エポックタイムズ』によると、ブレア公安相は、カナダ・中国関係常任委員会の前で、諜報機関トップや安全保障関係者とともに、中国政権によるカナダへの対外干渉や潜入が増加していることについて証言し、その一つがフェンタニルの密輸であることを問題視した。
カナダ政府の統計によると、2016年1月から2020年6月までの間に、17,000人以上のカナダ人がオピオイドの過剰摂取で死亡した。2020年1月から2020年6月までの間に、死亡者の75%はフェンタニルが関係していた。
ブレア公安相は、カナダ連邦警察(RCMP)がカナダ国境サービス庁(CBSA)およびカナダ郵便と共に「組織犯罪共同対策センター」を設立し、国内への麻薬の流入を追跡し阻止するための措置を講じていると述べた。
中国からのフェンタニル流入は、カナダだけでなく米国でも深刻な被害をもたらしている。
香港メディア『アジアタイムズ』は昨年12月の記事で、2017年には、米国で28,000人がフェンタニルの過剰摂取で死亡しており、そのほとんどが中国から流入したものであったと伝えている。
中国の習近平国家主席は2018年に、当時のトランプ大統領との会談で、すべてのフェンタニル様物質を制限することを約束した。 トランプはこれを「大変革をもたらす(ゲームチェンジャー)」と宣言したが、その後もオピオイドの流入が止まることはなかった。
2019年には、37,000人を超えるアメリカ人がフェンタニルの過剰摂取で死亡した。状況は新型コロナウイルスによるロックダウン措置のために悪化しており、ジョージア州では、フェンタニルによる死亡は2020年3月以降60%増加した。そして死亡者の約半数は若者となっている。
同メディアは、国家主席の一声で法律を作り、監視カメラであらゆる人を確実に取り締まることの出来る中国が、フェンタニル製造者や密輸人に手を出さないのは、敵を弱体化させかつ稼ぐことができるというメリットがあるからだろうと伝えている。
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