中国においては、これまで何度も触れたとおり、共産党独裁政権に支障を来すと判断される、ウィグル族等の少数民族保護やその他人権活動をする弁護士等が拘束されている。そして今度は、中国本土で発禁となっている、共産党批判や政府要人のスキャンダルなどの暴露本を販売していた、香港の書店関係者5人が失踪したと各国メディアが一斉に伝えた。
1月5日付米
『ロイター通信米国版』は、「英国政府、香港書店関係者の失踪事件に伴い、香港の報道の自由を守れと要求」との見出しで、次のように報じた。
「・在中国英国大使館は1月5日、中国政府に批判的な本を販売していた香港の銅鑼湾(トンローワン、コーズウェイベイ)書店の関係者5人の失踪に中国政府が関わっている節があること、また、そのうちの1人が英国市民であることから、深く憂慮と声明。
・同大使館はまた、失踪事件が、一国二制度の下に保障されていた報道の自由等を脅かすものとして、香港行政府及び中国政府に事態解明を要求。...
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1月5日付米
『ロイター通信米国版』は、「英国政府、香港書店関係者の失踪事件に伴い、香港の報道の自由を守れと要求」との見出しで、次のように報じた。
「・在中国英国大使館は1月5日、中国政府に批判的な本を販売していた香港の銅鑼湾(トンローワン、コーズウェイベイ)書店の関係者5人の失踪に中国政府が関わっている節があること、また、そのうちの1人が英国市民であることから、深く憂慮と声明。
・同大使館はまた、失踪事件が、一国二制度の下に保障されていた報道の自由等を脅かすものとして、香港行政府及び中国政府に事態解明を要求。
・中国外交部(外務省に相当)華(ファ)報道官は、香港は中国の一部であり、如何なる国も内政干渉は認められない、と反論。」
同日付米
『アル・ジャジーラ・アメリカ』(
『AP通信』記事引用)は、「失踪者の妻、捜索願を取り下げ」との見出しで、以下のように伝えた。
「・12月30日に失踪した、英国人で銅鑼湾書店のオーナー李波(リー・ボー)氏(65歳)の妻は1月5日、李氏の捜索願を取り下げ。
・李氏から、当局の調査に協力するため中国大陸にいること、暫く時間がかかること、自身は安全等々と書かれた手紙が届いたことを理由に挙げたが、李氏の中国大陸入国許可証は自宅にあり、謎は深まる。
・同書店の別のオーナーで、スウェーデン人の貴鳴海(グイ・ミンハイ)氏は、10月にタイに滞在中に失踪したが、スウェーデン政府が大変憂慮と声明。」
1月6日付米
『Foxニュース』は、次のように報じた。
「・訪中していた英国のハモンド外相は、失踪したうちの1人、英国市民の李氏について、香港行政府及び中国政府に対し、居場所等を明らかにすること、また、もし彼が違反行為に関わっているとしたら、香港司法によって調査等が進められるべきだと主張。
・一方、中国王(ワン)外交部長は、根拠のない憶測は控えるべきであるし、また、彼は中国人だと反論。」
1月5日付英
『BBCニュース』は、以下のように伝えた。
「・失踪した5人が関係する銅鑼湾書店では、直近も“マイティ・カレント(強大な流れ)”という、共産党政府要人のスキャンダルを暴露する本を発売しようとしていた。
・香港の民主派議員や人権活動家は、今回の書店関係者失踪事件で、報道の自由等、香港の様々な権利が侵されようとしている証拠と表明。」
一方、1月6日付中国
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』香港オンラインニュースは、「香港の書店、中国本土発禁本の販売取り止め」との見出しで、次のように報じた。
「・英文書籍を主に扱うページ・ワン書店は、銅鑼湾書店の関係者の1人が最初に失踪して以降、11月下旬ころから、中国本土で発禁扱いとなっている書籍の販売を取り止め。
・ページ・ワン書店は香港国際空港内に6店舗保有しており、発禁本は中国本土からの旅行者に飛ぶように売れ、同書店にとって儲け頭であり、それは銅鑼湾書店も同様。」
また、同日付中国
『チャイナ・ポスト』英文ニュースは、以下のように伝えた。
「・英国人李氏の妻は、李氏本人から手紙を受け取ったことで捜索願を取り下げたが、香港の民主派議員や人権活動家は、手紙があったからと言って、李氏が安全だとの保障は全くないと表明。」
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先週何度か報じたとおり、米国防総省高官が、中国が主権範囲と主張する声明に抗って、中国が一方的に埋め立てて築いた人工島の12海里(約21キロメーター)以内を、米艦船に監視航行させる予定だと述べていた。そして、ついに米海軍が有言実行したと、米メディアが一斉に伝えた。
10月27日付
『ボイス・オブ・アメリカ』は、「米国防総省の高官は10月26日、中国が南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島で埋め立てた人工島から12海里内にミサイル駆逐艦“ラッセン”を派遣し、10月27日(米国時間10月26日)に航行の自由を行動で示す作戦を実行したと発表した。同艦船は、中国が3千メーター級の滑走路を建設しているスビ礁の12海里内を航行したという。これに対して在米中国大使館の報道官は、米国が挑発的な行動を抑制し、地域の平和と安定を維持する責任を果たすよう求める、との声明を出した。」とし、「なお、同艦船は、フィリピンとベトナムがかつて一部埋め立てた岩礁近海も監視航行したという。」と報じた。
10月26日付
『アル・ジャジーラ・アメリカ』(
『AP通信』記事引用)は、「同艦船には、念の為警戒機も同行したが、作戦は何のトラブルもなく完了した。中国外交部の王毅(ワン・イー)部長(外務相に相当、62歳)は、もし事実であるなら、米国に対して、行動を起こす前に、逆効果をもたらすような軽率な行動とならないか、良く熟考することを提案すると語った。なお、中国が近年活発な海洋進出を行っている南シナ海海域は、110億バレル(約17億キロリットル)、世界の原油取引量の半分余り、5兆3,000億ドル(約636兆円)相当の石油埋蔵量があると言われ、また、世界有数の漁場でもある。」と伝えた。
また、同日付
『ワシントン・ポスト』紙は、米国務省のジョン・カービー報道官のコメントを引用して、「米海軍が監視航行を行ったのは、国際法上認められた公海であることから、米国としては、(領有権などを一方的に主張する国に対し)事前通告をしないでその海域や空域を航行し、航行の自由があることを示していく。」と報じた。
中国は9月末の習主席訪米の直前に、アラスカ沖の米領海を軍艦で横切らせるなど「航行の自由」作戦へのさや当てとみられる行動を取っていた。こうした経緯を受け、米中は9月のワシントンでの首脳会談で、両軍機の偶発的な衝突回避策で合意している。昨年の11月の北京での首脳会談でも、偶発的衝突を回避する連絡メカニズムや信頼醸成措置の導入で合意していた。こうしたメカニズムの有効性は、今回の航行の自由作戦で異常接近などが発生した際に機能するかにかかっている。
米中両国間では、1996年の台湾総統選直前に中国が台湾沖でミサイル演習を実施し、米国が空母を急きょ派遣した台湾海峡危機が起きている。また、2001年には、中国南部・海南島付近の公海上で、米軍偵察機と中国軍戦闘機との接触事故が発生した。このとき、戦闘機は墜落して操縦士1人が死亡、偵察機は不時着し、乗組員らが中国当局に一時拘束されて非難合戦を繰り広げたことがある。
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