安倍首相はこの程、長らく保留してきた日銀総裁人事について、黒田東彦現総裁(73歳)の続投を決断した。アベノミクスの中核となる異次元緩和と呼ばれる大規模金融緩和政策の推進で、デフレ脱却の道筋を作ったことが評価されたとされる。同首相としては、同総裁が高齢であること、また、総裁の2期連続就任は異例であることから、かなりの時間をかけ熟慮したが、路線継続による金融政策の安定運営を優先したものとみられる。ただ、同総裁のマイナス金利政策は長く続けられるものではないこと、更に、米国発の世界株価下落の事態が発生していることもあって、同総裁の2期目においては、これまで同様の大規模金融緩和政策の継続は難しいだろうと一部海外メディアはみている。
2月10日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「日銀総裁、黒田氏が2023年まで続投」
安倍晋三首相は2月9日、今年4月8日に任期切れとなる黒田総裁について、2期目も続投させることを決心した模様である。
安倍首相は2012年末に政権を奪取するや否や、大胆な金融政策実行に期待して、アジア開発銀行総裁だった黒田氏を日銀総裁に抜擢した。
同総裁は、同首相の期待に応えるように、“黒田バズーカ”と呼ばれる大規模金融緩和政策を推進し、結果として円安・株高、更には企業収益の大幅改善をもたらしたと評価されている。...
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2月10日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「日銀総裁、黒田氏が2023年まで続投」
安倍晋三首相は2月9日、今年4月8日に任期切れとなる黒田総裁について、2期目も続投させることを決心した模様である。
安倍首相は2012年末に政権を奪取するや否や、大胆な金融政策実行に期待して、アジア開発銀行総裁だった黒田氏を日銀総裁に抜擢した。
同総裁は、同首相の期待に応えるように、“黒田バズーカ”と呼ばれる大規模金融緩和政策を推進し、結果として円安・株高、更には企業収益の大幅改善をもたらしたと評価されている。
ただ、同総裁が掲げた物価上昇率2%の2年以内達成目標について、昨年の上昇率は僅か0.5%と、依然遠く及ばない状況である。また、他先進国の中央銀行総裁が、金融緩和策を止める方向で考えていることから、同総裁の2期目の政策が注目される。
2月11日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「安倍首相、黒田日銀総裁の続投を決定」
安倍首相が黒田総裁の続投を決断した背景には、同総裁が掲げた物価上昇率2%目標の達成についての継続努力、更には、同首相の目玉であるアベノミクスの成就に向けての後押しを期待してのこととみられる。
一方、3月下旬に任期を迎える日銀副総裁の後任として、雨宮正佳日銀理事の昇格が見込まれている。同理事は、黒田総裁が推進してきた大規模金融緩和政策を後押ししてきた人物で、同総裁の2期目となれば、更に強烈な支援が期待されることになろう。
しかし、同総裁、副総裁の人事は国会の承認が必要となるため、野党勢力は、黒田氏が安倍首相に近すぎて、日銀の独立性が損なわれるとして反対する意向である。そして、いずれもリフレ派(注後記)である、若田部昌澄早稲田大学政治経済学部教授(53歳)や伊藤隆敏コロンビア大学教授(67歳)を推薦するとの声が上がっている。
一方、2月13日付米『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日銀総裁人事、“これまでと同じ政策”は考えられない」
2月10日付『日本経済新聞』及び『共同通信』は、安倍政権が、黒田総裁の再任を決定した模様と報じた。
同政権は、同総裁の大胆な金融緩和政策が現在の好況をもたらしたと評価している。すなわち、円安・株価上昇・企業収益向上、更には失業率3%以下と、日本の経済は現在、1990年代半ば以来の最長の景気継続期を迎えている。
しかし、同総裁が掲げた物価上昇率2%の達成は未だ叶えられておらず、デフレの悪循環から脱したと評価するのは危険である。更に、同総裁の2期目においても、2%上昇率達成のために、大規模金融緩和政策を継続させるのは問題なしとしない。
また、同総裁が推進するマイナス金利政策についても、民間銀行の収益性を損ない、高いリターン率を求める投資家の過剰なリスクテイクを誘発するため、国内金融を不安定にさせる要因にもなりうるため、長期的に続けられるものではない。
なお、安倍首相は、同総裁に従来方針の安定的継続を期待している模様であるが、今のところ同総裁は沈黙を守ったままである。
(注)リフレ派:日本は長らくデフレ状況にあり、それから脱却する為にインフレ誘導を行おうとすることを“リフレーション政策”と呼ぶが、これに賛同する立場の経済学者らを俗にリフレ派と呼称。
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