ウラジーミル・プーチン大統領は、ドナルド・トランプ大統領が金正恩(キム・ジョンウン)委員長や米民間人とツイッターで罵り合っているのを尻目に、国際社会に対してしっかり存在感を見せ付けている。すなわち、米国が不支持のバッシャール・アル=アサド政権の後ろ盾として、トルコ・イラン首脳と3者会談を実施の上、シリア内戦終結後の統治体制についての全関係者会議を招集することで合意した旨大々的に発表した。
11月22日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「ロシア・トルコ・イラン首脳、シリア内戦終結後の対応について共同提案」
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、イランのハサン・ロウハーニー大統領の3首脳は11月22日、シリア内戦終結後の平和維持のための体制作り(政権側・反政府側も交えた会議開催)について支援していくことで一致した旨発表した。
共同声明は、3首脳がソチ(黒海沿岸のリゾート地)に集まり、7年に及ぶシリア内戦の終結が見えてきたことを受けて協議の上発信されたもの。
この声明の数日前、プーチン大統領はアサド大統領をモスクワに呼んで会談し、内戦後の体制作りについての提案への同意を取り付けていた。
ただ、反アサド政権を標榜するサウジ・アラビアなどが、国連が仲介して開催される、11月28日のシリア和平会議(国連ジュネーブ本部)までに、国連調査団報告にあるシリア政府軍による化学兵器使用等を理由に、反アサドで一致して同会議に臨むべく画策している。
一方、エルドアン大統領としては、トルコ内にクルド人武装勢力を抱えることから、内戦終結後のシリア政治体制に、米国が支援するシリアのクルド人勢力が参加することについて依然強く反対している。
同日付英
『BBCニュース』:「シリア内戦:プーチン大統領が平和維持会議招集案を明かす」
ロシア・トルコ・イラン3首脳の共同声明では、シリア政権側も反政府側も“建設的な対応”を以て平和維持会議に出席するよう求めた。ただ、同会議の開催場所はソチとされているが、具体的日程までは言及されていない。
なお、3首脳を代表してプーチン大統領は、平和維持会議開催の目的は、シリアの将来の統治体制、新たな憲法の制定について枠組みを協議するもので、その上で国連監視の下での総選挙の実施まで合意していきたいと考えていると表明した。更に、この和平プロセスは単純なものでなく、従って、“シリア政府含めた全ての関係者の歩み寄りと譲歩”が必要だとも強調した。
11月23日付ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙:「ロシア・トルコ・イラン首脳、シリアの“平和維持会議”招集で合意」
3首脳を代表してプーチン大統領は、共同声明はシリアの和平継続を目的として、“シリア全関係者による協議会”を招集し、内戦終結後の体制作りの道筋を付けるためのものであると
『CNNニュース』のインタビューに答えた。
なお、同大統領は前週にモスクワで会談したアサド大統領に対して、軍事行動はこれで“終結する”ことになるが、依然“道のりは長い”と話したという。
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』配信):「ロシア・トルコ・イラン首脳がシリア和平プロセスを前進させることで合意」
3首脳の共同声明を発表するに当って、プーチン大統領は、シリア内のテロリスト集団の放逐の目処は付いたことから、今こそシリア内戦を終結させる絶好の時期だと語った。
エルドアン大統領は、シリアにおいて、自由で公平かつ透明性のある政治プロセスが確立されるべく、共同で支援していくことに合意したと述べた。
また、ロウハーニー大統領は、シリア内戦はそもそも部外者の干渉から始まっているので、今後の和平プロセスには、如何なる部外者の干渉を許さず、シリア人だけで国家主権を確立していくこと等が重要であるとも付言した。
なお、シリア内戦は2011年に始まり、これまで33万人以上が犠牲となり、また、数百万人が避難民となっている。
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