英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載された調査によると、英国人の半数は新型コロナウイルスの主な症状を認識しておらず、コロナの症状が出てもほとんどの人は検査を受けず、自主隔離もしていないことが明らかになった。
英
『ITV』や
『Sky News』によると、キングスカレッジロンドン、ユニバーシティカレッジロンドン、英国公衆衛生局の研究者らが、英国に住む約54,000人の16歳以上の人を対象に75,000ほどの回答を集めた複数のオンライン調査の集計データを調べた。
その結果、「英国民に積極的に宣伝されている」はずの新型コロナウイルスの一般的な症状(咳、高熱、発熱、嗅覚・味覚の喪失など)を正しく認識できているのは、調査対象者の51.5%に過ぎなかったことが判明した。オンライン調査は、昨年3月から今年の1月までの間に実施されたが、この数値は一貫して半数にとどまっているという。
また、症状が出た人のうち、検査を受けたと答えた人はわずか18%、過去7日間に症状があった人のうち、完全な自主隔離を守った人は43%にとどまった。
男性、若年層、幼い子供がいる人は自主隔離する傾向が低く、労働者階級、経済的困難にある人、経済の主要セクターで働いている人も同様だった。
完全な自主隔離をしなかった理由としては、買い物や仕事、新型コロナウイルス以外の医療上の必要性があるため、介護、運動や人と会うため、症状が軽いまたは良くなったから、などが挙げられた。
感染した場合、濃厚接触者の情報を共有すると回答した人は79%にのぼったが、濃厚接触者追跡システムのデータのセキュリティや機密性が確保されているかどうか、システムが正確で信頼できるかどうかについては、若干の不安が確認された。
調査を実施した専門家らは、「症状の認識、検査、完全な自主隔離の割合がこのように低いため、英国の検査・追跡・隔離プログラムの現在の在り方の有効性は限定的である。」と結論付けている。そして、「実践的サポートや検査費の還付で、検査や自主隔離を向上させることができる可能性がある。」と指摘している。また、「男性、若年層、主要セクターで働く人々に絞った広報活動を展開する必要性がある」と述べている。
『ロシアトゥデイ』によると、英国の国民保険サービスが展開している「検査&追跡」プログラムは、コロナウイルスに感染した人を特定し、検査を受けてもらうことを目的としており、2年間で370億ポンド(約5兆6658億円)という巨額の予算が割り当てられている。
閉じる
既報どおり、懸案となっていた2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が来年に延期されることが漸く決まった。しかし、3千億円とも更に巨額とも言われる、延期にかかる追加費用は誰が負担するのかについて、欧米メディアも報じているが、一義的には日本の納税者だとけんもほろろの論調である。マラソン・競歩の札幌移転は、国際オリンピック委員会(IOC)の意向で決定されたため、IOCが負担する話になっていたが、果たして今回の場合、せめてIOCと折半負担交渉が可能であろうか?
3月25日付米
『AP通信』:「来年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの追加費用は誰が負担?」
世界的流行を続ける新型コロナウィルス感染の収束見通しが立たないことから、主催国日本とIOCとの協議の結果、この程漸く、東京オリンピック・パラリンピックを来年に延期することが決定された。
主催国側として、次に対応しなければならないのは、延期に伴い発生する追加費用がどれ程で、また、誰が負担するのかという問題を解決することである。
一義的には、主催国である日本の公的資金、すなわち納税者が負担することになろう。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務局長は3月24日、大会の延期について発表した際、“追加費用がいくらかかり、誰が負担することになるのかは未定で、これから検討すべき事項”とコメントしている。
『日本経済新聞』報道では、関係者の推計を引用し、27億ドル(約2,970億円)かかるだろうと報じた。
まず、再交渉を含めて対応しなければならないのが競技会場の賃貸契約である。
現行賃貸契約を破棄することになる場合の違約金、また、来年に新たに契約する場合の賃貸料がいくらになるのか。
また、選手団・コーチ含めて東京オリンピックの場合1万1千人、東京パラリンピックの場合4,400人のために確保した選手村の扱いもある。
東京湾の広大な土地に建てられたマンション群(全5,632室)は、大会終了後に民間に売却される予定であるが、1ユニットが100万ドル(約1億1千万円)余りもする物件含めて、約4分の1が売却済みであるため、引き渡し時期延期に伴う違約金や補償金などの交渉が必要となろう。
関係不動産ディベロッパーの1社である三井不動産は、所有する23棟含めた全ての物件の販売を一時停止している。
更に、大会組織委員会の人件費の問題もある。
同組織委は現在、約3,500人のスタッフを抱えているが、規模縮小に伴う失職手当、また、来年までの追加人件費をどうするか詰める必要がある。
また、同組織委が確保した大会ボランティア8万人及び東京都の3万人について、来年改めて募集する場合等の追加費用も捻出する必要がある。
一方、大会スポンサー企業群との見直し交渉も必須である。
今回の東京大会では、広告大手の電通の主導によって、日本企業との交渉で、33億ドル(約3,630億円)とこれまでのオリンピックでの実績値の倍以上の協賛金を獲得している。
かかる協賛企業は、契約見直しに関わる返金、あるいは、新たな契約締結等を求めることになろう。
なお、大会組織委及び政府はこれまで、同大会にかかる総費用は126億ドル(約1兆3,500億円)と発表しているが、昨年12月に会計検査院がまとめた検査報告では、総額280億ドル(約3兆円)に上るとされている。
このうち、公的資金以外の拠出金は56億ドル(約6,160億円)で、上述企業協賛金、観戦チケット売り上げ10億ドル(約1,100億円)、そしてIOCからの支援金13億ドル(約1,430億円)である。
従って、大会組織委の公表ベースでいくと、70億ドル(約7,700億円)が公的資金、すなわち税金で賄われることになるが、今回の延期に伴う追加費用発生で、その負担額は更に増える可能性がある。
これに関して、英オックスフォード大学大型プロジェクト・マネジメント研究部門のベント・クライフヨルグ教授(67歳、デンマーク出身の経済学者)は『AP通信』のインタビューに答えて、“IOCは大会主導権を握っている以上、もっと費用負担に関わるべき”だとコメントした。
同教授は、著書「2016年オリンピックに関わる費用及び予算超過の調査研究」の中で、“IOCが大会を独占していること”及び“同大会は他のどの大型プロジェクトより予算超過が大きい”と述べている。
同日付英国『ITV』(1955年設立の英国最古の民間テレビ放送局):「追加費用が20億ポンドかかる予想から、2021春のオリンピック開催も選択肢」
新型コロナウィルス感染問題に伴い、東京オリンピック・パラリンピックが2021年に延期された。
IOCのトーマス・バッハ会長は3月25日朝、2021年春季の開催も検討対象になると言及した。
来年夏季には、世界陸上競技選手権大会が米オレゴン州で、また、欧州女子サッカー選手権大会が英国で開催される予定であるため、延期された東京大会との日程調整が必要となろう。
更に、東京大会延期に関わる追加費用の問題もある。
東京大会では、総費用として100億ポンド(約1兆3千億円)が公表されているが、これに延期に関わる追加費用20億ポンド(約2,600億円)も必要と見込まれ、延びれば延びる程更に嵩む可能性がある。
また、最も大きい問題として、選手村がどうなるのかという点もある。
すなわち、選手村として建設された施設は、早ければ今年末から約4千戸が民間住宅として販売されることになっているからである。
もし、この手続きが変更できないとなったら、選手団はどこに滞在すればよいのかという問題が生じることになる。
閉じる