1人はパキスタン生まれの27歳の英国人クラム・バット容疑者で、もう1人はモロッコ、リビア国籍を持つ30歳のラシド・レドゥアン容疑者である。レドゥアン容疑者は別の名前も持っており、25歳とも称していた。バット容疑者はMI5(情報局保安部)と警察に要注意人物として把握されており、テレビでその活動が紹介されて、近隣の住民にも過激派の危険人物として知られていたが、今回のテロに関する計画の情報は事前に得られていなかった。レドゥアン容疑者は当局に把握されていなかった。
5日にはIS(イスラム国)が犯行声明を出している。同日警察は、両容疑者が住んでいたロンドン東部から数名の容疑者を確保しており、実行犯3人の関係や他に協力した人物がいなかったか等につき、捜査を急ピッチで進めている。
英国では8日に総選挙を控えており、テロ対策が最大の争点になりつつある。今回のテロを受けて、英国の最大野党である労働党のジェレミー・コービン党首は5日、テロにつながる警察官の削減を実行したテリーザ・メイ首相は辞任すべきだと述べた。安上がりな方法で市民を守ることはできないとして、警察官の増員等治安対策を重視する姿勢を示している。
メイ氏は昨年7月に首相になる前に6年間、警察や情報機関を統括する内相を務めており、その際に警察官2万人の削減を決定した。マンチェスターで5月に発生したテロでは、MI5(情報局保安部)に犯人が過激化しているとの通報がありながら、監視対象から外れていたことが判明して批判が集まっていた。コービン党首の批判に対しては、武装する警官の数は増やしており、警察に関する予算額は維持しているなどと反論している。
5日に公表されたITVテレビの直近の世論調査によると、メイ首相率いる保守党の労働党に対するリードは僅か1パーセントポイントにまで詰まっていることが分かった。本調査は、ロンドン橋でのテロが発生する前の金曜と土曜に実施されたものである。調査を実施したSurvation社によれば、前週には保守党のリードは6ポイントあったが、今回保守党の支持率が41.5%であるのに対し、労働党は40.4%と僅差に迫られている。この結果が選挙に反映されれば、議会における保守党の過半数獲得は危うくなるが、他の主要な世論調査会社によれば、保守党のリードはまだ11-12ポイントとまだ差がある。他の数社の世論調査結果が投票前に明らかになる予定であり、注目される。
3週間前までは、保守党が大勝し、EU離脱交渉に向けての足場を順調に固めるものと見られていた。しかし選挙戦が進むにつれて、福祉を充実させるために、高齢者の負担増を求める政策を提案したこと等により、保守党の支持率は下がっている。土曜日のテロの影響がこの後どのように表れるかはまだ明らかでない。
保守党のリードは、5月22日のマンチェスターのテロの後に減り続けているが、世論調査会社はテロよりも、野党の政策が受け入れられていることの方が大きいとしている。5日のITVテレビの世論調査ではまた、50%の回答者がメイ氏は労働党のコービン党首より首相にふさわしいと見ているものの、コービン氏のリーダーとしての可能性を信用する人が5月初めの15%から36%に上昇しており、興味深い結果となっている。
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6月7日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本企業、英国向け投資590億ドルに悪影響とEU離脱に反対」
「・日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本企業の英国投資金は590億ドル(約6兆3,700億円)。
・日本政府関係者から日本企業トップにいたるまで、英国のEU残留を望むとの声を上げているのは、EU離脱となった場合の英国投資の意義が薄れたり毀損したりするリスクに曝されると判断するため。...
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6月7日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本企業、英国向け投資590億ドルに悪影響とEU離脱に反対」
「・日本貿易振興機構(JETRO)によると、日本企業の英国投資金は590億ドル(約6兆3,700億円)。
・日本政府関係者から日本企業トップにいたるまで、英国のEU残留を望むとの声を上げているのは、EU離脱となった場合の英国投資の意義が薄れたり毀損したりするリスクに曝されると判断するため。
・デビッド・キャメロン首相は先月、トヨタ、日立、日産等含めて1,300社余りが英国に支社、工場を有し、14万人が雇用されているとコメント。
・直近の世論調査の結果は以下のとおり;
-ITV(英国最古の民間放送局):離脱45%、残留41%
-TNS(市場調査会社):離脱43%、残留41%
-デイリィ・テレグラフ紙:離脱47%、残留48%
・英国中央銀行は、EU離脱か残留かで混迷し、英国の経済が減退傾向と発表。」
同日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「何故英国はEU離脱に向かっているのか?」
「・これまでEU残留派が大勢だったが、直近の世論調査ではEU離脱派に勢い。
・但し、1年前の総選挙では、与党保守党大勝との直前世論調査に対して、同党の僅差の勝利との結果。
・今回の世論調査も、離脱か残留かとの単一質問に対して、回答者はそのときの雰囲気、直前のニュース等から即答してしまう傾向があるが、一方、英国の賭け屋のオッズでは残留が72%と高い数理。
・これは、世論調査の結果の他、双方のキャンペーンの勢いや将来の経済状況などの要因も加味して予想するための結果。
・キャンペーンと言えば、移民問題をどう扱うかによって、世論に与える影響は変化。
・すなわち、2015年のEUからの移民は33万3千人と高い数値だが、EU離脱派は残留派のキャメロン首相に、英国医療保険や雇用に与える影響大と攻撃。
・また、EUによって英国が様々な規制を強いられているともアピール。
・しかし、経済的背景をみると、移民が支払う税金は、彼らが受ける福祉サービスよりかなり多く、また、雇用状況も、16~64歳の就業者数の割合は74.2%と、1971年に統計を取り始めて以来最高値。」
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』記事引用):「若者が有
権者登録に殺到し、キャメロン首相は歓喜」
「・キャメロン首相はテレビ出演し、世論調査の結果、EU残留派が危うくなっていると懸命の訴え。
・しかし、残留派が多いとされる若者らが、6月7日の有権者登録期限内に登録を済ませようと押しかけているとのニュースに歓喜。
・6月6日に登録した約22万6千人のうち、34歳以下が14万8,200人だが、そのほとんどが残留支持。
・WhatUKThinks(非党派)の6月6日の世論調査では、初めて離脱51%:残留49%となったが、6月7日の結果は、離脱49%:残留51%と再逆転。
・ドミニク・ラーブ閣外相(司法担当)が、50人の重罪犯が、EU移民であるため国外追放できないとし、これは英市民にとって脅威とアピール。
・一方、ジェームズ・ブロークンシャイア閣外相(移民担当)は、欧州逮捕・引き渡し約款(EAW)に基づき、2010年以降既に6,500人の犯罪移民を国外退去処分にしていると反論。」
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