ベルリンの壁崩壊から30年、しかしポピュリズム台頭で欧州連合に新たな亀裂【米・ドイツメディア】
1989年11月のベルリンの壁崩壊以降、雪崩を打ったように東欧共産主義国が転覆し、その余波で1991年には大国旧ソビエト連邦まで解体されてしまった。そして、1993年には、東欧諸国が西欧と自由主義連合を形成することとなり、欧州連合(EU)が設立された。しかし、ベルリンの壁崩壊から30年を経て、ポピュリズム(注1後記)の台頭とともに、それまで一枚岩であったEU内に軋みが生じている。そして、東欧諸国の中にはロシアとの連携を図る国も現れ、時代に逆行する事態が起こりつつある。
8月16日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「ベルリンの壁崩壊から30年が経ち、民主主義の本質を問う討論が活発化」
30年前の1989年11月、東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊した。
それ以降、1960年代から旧ソ連の支配下にあった東欧の共産主義政権が次々に倒れたことから、ベルリンの壁崩壊は新しい時代の幕開けの取っ掛かりと位置付けられた。
しかし、あれから30年経ち、東西欧州が形成したEUにとって、新たな時代に移り変わりつつある。...
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8月16日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「ベルリンの壁崩壊から30年が経ち、民主主義の本質を問う討論が活発化」
30年前の1989年11月、東西ドイツを分断していたベルリンの壁が崩壊した。
それ以降、1960年代から旧ソ連の支配下にあった東欧の共産主義政権が次々に倒れたことから、ベルリンの壁崩壊は新しい時代の幕開けの取っ掛かりと位置付けられた。
しかし、あれから30年経ち、東西欧州が形成したEUにとって、新たな時代に移り変わりつつある。
すなわち、8月19日にショプロン(ハンガリー北西部の、オーストリアと国境を接する都市)のルーテル・プロテスタント教会で、“汎ヨーロッパ・ピクニック(注2後記)”30周年の式典が開かれるが、そこにEUを牽引するドイツのアンゲラ・メルケル首相と、その主流派に対抗するハンガリーの権威主義者であるビクトル・オルバーン首相も出席する。
30年前の8月、当時のハンガリー政府が、国交があった旧東ドイツに対してショプロンにおいて一時的に中立国オーストリアへの国境を解放したところ、旧東ドイツ市民600人余りが殺到したことを皮切りに、ベルリンの壁崩壊へと繋がっていった。
その記念となる場所で開かれる式典に出席するオルバーン首相は、数々の西側の制度・法令を解体し、ベルリンの壁崩壊以前の体制作りを標榜している人物であるからである。
同首相は、ドイツ等が推す移民・難民受け入れに強硬に反対しており、ポーランド、スロバキア、チェコとともに、ポピュリズム政策で連携している。
これら4ヵ国は元々、1991年に設立されたビシェグラード・グループ(中央欧州4ヵ国で形成した地域協力機構)を組織しているが、かねてより人権擁護団体からは、“欠陥のある”民主主義国とのレッテルを貼られていた。
そして現在では、ポピュリズム政策で中央欧州を席巻し、EU制度の管理下から離脱した上で、元の独立した国家への回帰を望んでいる。
一方、8月17日付ドイツ『DW(ドイツ通信)』:「メルケル首相、ベルリンの壁崩壊のきっかけを作ったハンガリーに謝意」
メルケル首相は8月17日、訪問先のハンガリーでオルバーン首相と面談し、30年前のベルリンの壁崩壊のきっかけを作ったハンガリーの功績に対して謝意を述べた。
メルケル首相は、東ベルリンから90キロメーター(56マイル)北の旧東ドイツの町で育ったが、同首相のポッドキャスト(インターネットテレビ)上の直近報告で、ベルリンの壁崩壊に繋がった“汎ヨーロッパ・ピクニック”を記念する式典に参加する直前にオルバーン首相と握手する映像を公開した。
同首相のハンガリー訪問は2014年以来であるが、8月19日には同式典が開催されるショプロンを訪れる。
なお、今回の式典にはドイツ、ハンガリー両首脳が揃って出席するが、近年では両国の関係は対立的である。
すなわち、2010年に就任したオルバーン首相は、メルケル首相の移民・難民政策について公けの席で非難してきている。
一方、ドイツ側からすると、同首相がハンガリーにおける“非自由主義的民主主義(注3後記)”を推進し、かつ、親ロシア政策を取っていることが大きな懸念事項となっている。
(注1)ポピュリズム:一般大衆の利益や権利を守り、大衆の支持のもとに、既存のエリート主義である体制側や知識人などに批判的な政治思想、または政治姿勢のこと。大衆主義や人民主義などのほか、否定的な意味を込めて衆愚政治や大衆迎合主義などとも言われる。
(注2)汎ヨーロッパ・ピクニック:1989年8月19日、ハンガリー人民共和国・ショプロンで開かれた政治集会。西ドイツへの亡命を求める1000人ほどの東ドイツ市民が参加し、オーストリア国境を越えて亡命を果たした。後にベルリンの壁崩壊へと繋がる歴史的事件で、ピクニック事件、ヨーロッパ・ピクニック計画とも呼ばれる。
(注3)非自由主義的民主主義:擬似民主主義、部分的民主主義、低度民主主義、空の民主主義、組み合わせ体制、権限委譲民主主義などとも呼ばれ、制度的には民主制だが、実質的には自由が制限されている政治体制である。そこでは選挙は実施され、制度上は政治権力を制限しているが、言論の自由や集会の自由、知る権利など市民の政府への自由は無視されており、自由主義の適切な法的な構築された枠組みはほぼ存在せず、法治主義はあっても法の支配がない状況となっている。
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中国;習近平指導部が推進する“一帯一路経済圏構想”を批判する大学教授を幽閉(2)【米・ドイツメディア】
8月4日付Globali
「中国;習近平指導部が推進する“一帯一路経済圏構想”を批判する大学教授を幽閉」で報じたとおり、多くの国民が貧困に喘いでいるのに、一帯一路経済圏構想(OBOR)政策推進のために多額の資金をバラ撒いていると批判した老大学教授が、米メディアの生放送インタビュー中に中国当局によって連行されてしまった。以降、2週間近く経過しても同氏と連絡が取れないことから、同氏の同僚など150人余りが公開質問状を当局にぶつけて、同氏の解放を要求している。一方、ドイツ人留学生が、人権問題を扱ったドキュメンタリー・フィルムを制作した理由で国外追放されている。
8月12日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国当局に連行された大学教授の安否への懸念が増大」
約2週間前に中国当局によって連行された孫文広(ソン・ウェンカン、84歳)老教授について、同氏が元所属していた山東(シャントン)大学の同僚ら150人余りが、公開書簡でもって同大学に対して、同氏の安全確保と早期解放を図るよう訴えた。
公開書簡に署名した王淑君(ワン・シューチュン)氏は8月12日のVOAの取材に対して、かかる当局のやり方は無法、野蛮で、かつ憲法違反の行為であると非難した。...
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8月12日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「中国当局に連行された大学教授の安否への懸念が増大」
約2週間前に中国当局によって連行された孫文広(ソン・ウェンカン、84歳)老教授について、同氏が元所属していた山東(シャントン)大学の同僚ら150人余りが、公開書簡でもって同大学に対して、同氏の安全確保と早期解放を図るよう訴えた。
公開書簡に署名した王淑君(ワン・シューチュン)氏は8月12日のVOAの取材に対して、かかる当局のやり方は無法、野蛮で、かつ憲法違反の行為であると非難した。
また、同氏は、習近平(シー・チンピン)国家主席もこの事態を知れば、快く思わないだろうとも語った。
VOA含めた国際メディアの度重なる照会に対して、中国当局はもとより、山東大学の幹部も無言を貫いている。
一方、米国務省報道官は先週、孫氏の安否について懸念を抱いているとした上で、中国に対して、表現・集会の自由を禁ずるという人権侵害を続け、また、人権擁護を求める活動家・弁護士・ジャーナリスト等を違法に拘束することを厳しく非難すると表明している。
孫氏は、長い間中国政府の政策に批判的な行動をしてきており、1960年代の文化大革命の時代に逮捕されている。また、毛沢東(マオ・ツォートン)を批判した罪で、1978年には禁固7年の有罪判決を下され服役していた。
なお、今回の孫氏の連行は、習国家主席宛の公開書簡で、貧困で喘ぐ多くの国民を顧みず、同国家主席がOBOR構想の下、アフリカにバラ撒き外交をしていると批判したことが背景にあるとみられている。
一方、同日付ドイツ『DW(ドイツ通信)』:「ドイツ人留学生、人権問題の映像制作で中国から国外退去措置」
中国の名門の清華大学(1911年創立の北京在の国立大学)に留学していたドイツ人留学生のデイビッド・ミサール氏(24歳)は8月12日、中国当局から滞在ビザの延長を拒否され、国外退去処分に遭った。
ジャーナリズム専攻の同氏は今年初め、人権問題で拘束・投獄されている中国人弁護士らに関わるミニ・ドキュメンタリー・フィルムを制作していた。
同氏は当局から、これ以上政治問題に関わらないよう2度警告を受けていたが、中国の社会や政治状況をもっと知りたいとして、その活動を止めなかった。
それが直接の理由となったのか、同氏が所属するゼミの教授から許可を得ていたものの、中国当局から突然、冒頭の措置命令が下されたもの。
中国では、2015年に強化された取り締りによって、300人以上の人権活動家、弁護士などが逮捕され、多くが国家転覆罪等の名目で長期刑を受けている。
国境なき記者団による「2018年世界報道の自由度ランキング」では、中国は対象全180ヵ国中176位にランクされる程評価が最低である。
*参考:1~5位 北欧、45位 米国、67位 日本、180位 北朝鮮
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