ロシア反体制派ロックバンド、”ノー・ナチス・イン・ウクライナ”と訴える新曲を発表【ロシア・英国メディア】(2022/12/26)
ロシアの反体制派ロックバンドがこの程、“ナチス政権打倒”と根拠のない理由で一方的なウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)を徹底的に糾弾する目的で、“ノー・ナチス(注1後記)・イン・ウクライナ”という新曲を発表している。
12月24日付ロシア
『ザ・モスクワ・タイムズ(MT)』オンラインニュース(1992年設立の独立系メディア)は、「プッシー・ライオット、ウクライナに“ナチスはいない”と歌う新曲を発表」と題して、ロシア反体制派ロックバンドが、ウクライナ軍事侵攻10ヵ月目を契機に、ウラジーミル・プーチン大統領の根拠のない侵攻を糾弾する新曲を披露したと報じている。
反体制派フェミニスト活動家グループのプッシー・ライオット(PR、注2後記)は12月24日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻から10ヵ月が経過した日に、この行為を猛批判するミュージック・ビデオを公開した。...
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12月24日付ロシア
『ザ・モスクワ・タイムズ(MT)』オンラインニュース(1992年設立の独立系メディア)は、「プッシー・ライオット、ウクライナに“ナチスはいない”と歌う新曲を発表」と題して、ロシア反体制派ロックバンドが、ウクライナ軍事侵攻10ヵ月目を契機に、ウラジーミル・プーチン大統領の根拠のない侵攻を糾弾する新曲を披露したと報じている。
反体制派フェミニスト活動家グループのプッシー・ライオット(PR、注2後記)は12月24日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻から10ヵ月が経過した日に、この行為を猛批判するミュージック・ビデオを公開した。
PRメンバーのオルガ・ボリソワ氏は12月21日、『MT』のインタビューに答えて、“我々はこの戦争について大声を張り上げる”とし、“皆、戦争に背を向けるのではなく、戦争を止めさせなければならない”と訴えた。
今回公開されたビデオは、“ママ、ロシアのTVを見てはだめだ”という題名の新曲で、ロシアにおける軍事的検閲や弾圧に反対するとともに、ウラジーミル・プーチン大統領及び軍高官等をウクライナ人大量殺戮の罪で国際刑事組織に訴えろ、と歌っている。
PRは、同大統領が“特別軍事作戦”と勝手に呼んでウクライナに軍事侵攻し始めた2月24日以降、これを非難するコンサートを欧州各地で開催してきている。
同グループはコンサートを通じて、ウクライナ最大のオフマディト小児科病院(首都キーフ在)含めウクライナの人々の支援のための寄金を呼びかけている。
過日カタールで開催されたサッカーワールドカップの競技場でも、PRメンバーがピッチに乱入して戦争反対等を訴えようとしたが、直前に警察隊に阻止され逮捕されている。
なお、ウクライナ戦争後複数のPRメンバーがロシアを脱出していて、マリア・アリョーヒナ氏(34歳)、ルーシー・シュタイン氏はロシア当局から指名手配されている。
同日付英国『ザ・ガーディアン』(1821年設立)紙は、「PRの新曲、ウクライナ戦争反対及びプーチン告訴をアピール」と詳報している。
PRは新曲の中で、ウクライナ戦争やロシアの検閲に反対するとともに、西側諸国が依然ロシアから原油や天然ガスを購入することでこれを“支援している”と非難している。
声明の中で彼らは、プーチン政権は“テロリスト集団”だとし、プーチン政権、及びその側近や軍高官らを“戦争犯罪人”だと糾弾している。
今回の新曲は「ママ、ロシアのTVを見てはだめだ」という題名で、“我々の音楽は、恐ろしい戦争で犠牲になったウクライナ人の骨を燃やして喜ぶような、地獄にどっぷり浸かった真の人食い人種と呼ぶべきモンスターのプーチンに率いられた政権に対する怒り、憤慨、不和、そして恨めしくかつ必死の嘆きを表している”という。
PRの主要メンバーであるマリア・アリョーヒナ氏、オルガ・ボリソワ氏、ダイアナ・ブルコット氏(37歳)及びタソ・プレトナー氏は、捕縛されたロシア人徴集兵が、“ママ、ウクライナにはナチスなんていないよ、だから、(嘘をまき散らすロシアの)TVを見てはだめだ”と実母に訴えたことを基にして作詞された歌だと説明している。
彼らは声明の中で、“ロシアのプロパガンダ放送は人々の心を蝕んでいる”とした上で、“彼らが制定した外国エージェントを取り締まる法律を駆使して、反体制活動家やジャーナリストの口を塞ぎ、最後に残っていた独立系の人権擁護団体の活動まで停止させている”と訴えた。
更に彼らは、ソ連時代にラボXという毒薬研究所があり、反政府活動家らを黙らせて来ていたが、現在でも似たような場所が存在し、“プーチンに逆らう者は皆投獄されたり、軍事転用の毒を盛られたりして殺されている”と言及した。
“プーチンやロシア連邦保安庁(FSB、1995年設立の旧ソ連国家保安委員会・KGBの後身組織)の連中は、この「伝統的な」研究所を重宝していて、反政府運動の代表的人物に対して次々に危害を加えていった”とした。
その上で、“アレクサンドル・リトビネンコ(1962~2006年、元FSB職員)、セルゲイ・スクリパリ(71歳、元ロシア及び英国の二重スパイ、2018年毒殺未遂被害、現在英国に亡命中)、ウラジーミル・カラ=ムルザ(41歳、政治ジャーナリスト、2015・2017年に毒殺未遂被害、現在軍事関連”虚偽情報流布“等の容疑で裁判中)、ピョートル・ベルジロフ(35歳、PRメンバーで2018年ワールドカップロシア大会の競技場に乱入して逮捕、同年毒殺未遂被害)、アレクセイ・ナワルニー(46歳、野党勢力代表、2020年毒殺未遂被害、現在投獄中)は明らかに当局の犠牲者だ”と付言した。
(注1)ナチス:ドイツの政党、国家社会主義ドイツ労働者党の略称、また、その党員。1920年ドイツ労働者党を改称して成立。翌年以降ヒトラーを党首とし、1933年に政権を掌握。反民主・反共産・反ユダヤ主義を標榜して、全体主義的独裁政治を推進。また、ベルサイユ体制(対ドイツ制裁等を含む第一次大戦後の国際秩序)の打破をめざして再軍備を強行、第二次大戦を引き起こし、1945年に敗戦とともに崩壊。
(注2)PR:2011年活動開始のロシアのフェミニスト・パンク・ロック集団、抗議活動家グループ。ロシアにおける政治的抑圧や性差別・LGBTQ弾圧・家父長制・受刑者への人権侵害に対し、無許可でのパフォーマンスや音楽活動などを通じて抗議を続けている。メンバーは、寒さの厳しい天候のときも、演奏中も、またインタビューに応じるときも鮮やかな色のドレスとタイツの衣装に目出し帽で顔を隠しており、インタビューには常に偽名で応じている。この集団は10人ほどで演奏を行なうが、これとは別に15人ほどが技術面の裏方や、インターネットに投稿されるビデオの撮影・編集などを行なっている。
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インドネシア;2期目のウィドド大統領の下、民主化に逆行する刑法改定の動き【欧米メディア】(2022/12/04)
インドネシアでは、2期目のジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任、2024年任期期限)主導で今年11月開催の主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)を成功裏に開催するなど、内外にその実行力を示している。ただ、非同盟主義を標榜する一環からか、反民主主義の徒党である中ロとの関係も重視している。そうした中、中ロ首脳を模するかのように、大統領を侮辱した者に3年の懲役刑を科す等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしている。
12月2日付
『ロイター通信』は、「インドネシア、不倫を罰する条項等を含む刑法改定を策定」と題して、2期目のジョコ・ウィドド大統領の下、大統領侮辱罪や不倫罰則規定等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしていると詳報している。
インドネシア政府高官によれば、インドネシア国民協議会(国会に相当)は今月、不倫処罰規定等を織り込んだ刑法改定案を成立させる意向である。
同改定案には、大統領や政府機関を侮辱した罪や、国の方針に反旗を翻すこと、更には、婚姻前の同棲を禁止する条項まで含まれているという。...
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12月2日付
『ロイター通信』は、「インドネシア、不倫を罰する条項等を含む刑法改定を策定」と題して、2期目のジョコ・ウィドド大統領の下、大統領侮辱罪や不倫罰則規定等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしていると詳報している。
インドネシア政府高官によれば、インドネシア国民協議会(国会に相当)は今月、不倫処罰規定等を織り込んだ刑法改定案を成立させる意向である。
同改定案には、大統領や政府機関を侮辱した罪や、国の方針に反旗を翻すこと、更には、婚姻前の同棲を禁止する条項まで含まれているという。
エドワード・オマール・シャリフ・ヒアリエ司法省副大臣(49歳、2020年就任)が『ロイター通信』に語ったところによると、数十年もかけて準備してきた今回の刑法改定案は、12月15日に国民協議会で承認される見込みだという。
同副大臣は、“本刑法改定案は、インドネシアの現状に照らしたもので、誇りに思っている”とも付言している。
もし本刑法改定案が制定されれば、インドネシア市民に加えて現地滞在の外国人にも適用されるため、外国企業関係者からは、観光地や投資先としての同国の魅力を棄損しかねないとの懸念の声が上がっている。
また、本改定法案は、人口の大半を占める保守的なイスラム教徒から支持を得ているが、反対派は、1998年に独裁者だったスハルト大統領(1921~2008年、1968~1998年在任の第2代大統領、タレントのデビ夫人が第3夫人)から奪還した自由主義に逆行するものだと非難している。
同様の刑法改定案はかつて、2019年9月に国民協議会に提議されたが、このときは市民から一斉に反発する抗議運動が巻き起こり、廃案に追い込まれていた。
市民らは、道徳や発言の自由を制限するもので、自由が奪われるとして猛烈に反対した。
政府当局は、今回提案された改定案については2019草案からの変更点を周知し、数ヵ月にわたり広く全国で意見を聴取した上で作成されたものだと主張しているが、反対派は、些細な変更しか加えられていないと批判している。
『ロイター通信』が11月24日に入手した草案をチェックしたところ、主要点は以下のようになっている。
・死刑:投獄後10年間模範囚であれば、終身刑に減刑。
・不倫:近親者からの被害届があった場合に限って適用され、1年以下の禁固刑。
・大統領侮辱罪:大統領自身からの訴えがあった場合に限って適用され、最長3年の禁固刑。
インドネシア自身が世界最大のイスラム教徒を抱える国であり、この宗教戒律の下、女性・他宗教徒・LGBTの人々が著しく差別されている。
インドネシアは先月、G-20サミットを成功裏に執り行い、国際社会での評判を上げたばかりであるが、特に産業界からは、今回の刑法改定によって国際社会に間違ったメッセージを発信することになると懸念する声が上がっている。
インドネシア経営者協会(APINDO、1952年前身設立、全国1万4千社の会員企業を有する同国最大組織)のシンタ・ウィジャヤ・スカムダニ副会長は、“本刑法改定案は法的不確実性があり、インドネシアに投資しようとしている企業が逡巡しかねないので、産業界にとって全く良い話ではない”と表明した。
同副会長はまた、道徳に関わる規程は、特に観光や接待事業に関わる人たちにとって、“良いどころかむしろ有害となる”とも付言している。
また、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(1978年設立、本部ニューヨーク)インドネシア支部のアンドレアス・ハルソノ代表(2008年就任)も、本刑法改定案は、“インドネシアの民主主義を大きく後退させるもの”だと厳しく指摘している。
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