大阪地裁は6月20日、国が同性婚を認めないのは違憲だとして提訴していた3組の同性カップルの請願について、違憲ではないとの判断を下した。札幌地裁は昨年3月、一部違憲との判断を示していたが、保守系与党・自民党が牛耳る国会では、同性婚を支援するような法律整備等を行う考えは一切ないとされている。このニュースを受けて、世界でLGBTQ(注1後記)擁護の活動が活発化している中、主要国のうちで日本だけが性的マイノリティ擁護の法整備がなされていないとして、グローバル企業が日本への投資意欲を喪失しかねないと欧米メディアが報じている。
6月20日付
『ロイター通信』は、「日本の裁判所、同性婚禁止は違憲に非ずとの判断」と題して、大阪地裁が下した、同性カップルの請願棄却の判断について懸念を持って報じている。
日本において、同性のカップルが、国に対して同性婚を認めるよう複数の請願を提出している。
この程、大阪地裁が6月20日に下した判決では、国が同性婚を認めていないのは憲法解釈上違憲ではないとした上で、同性カップルが求めた100万円(7,400ドル)の損害賠償請求を棄却した。...
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6月20日付
『ロイター通信』は、「日本の裁判所、同性婚禁止は違憲に非ずとの判断」と題して、大阪地裁が下した、同性カップルの請願棄却の判断について懸念を持って報じている。
日本において、同性のカップルが、国に対して同性婚を認めるよう複数の請願を提出している。
この程、大阪地裁が6月20日に下した判決では、国が同性婚を認めていないのは憲法解釈上違憲ではないとした上で、同性カップルが求めた100万円(7,400ドル)の損害賠償請求を棄却した。
昨年3月、札幌地裁では、同性婚を認めないのは違憲とする判断がくだされていたが、今回の判決で、日本における性的マイノリティを擁護する活動が後退する可能性がある。
日本は、主要7ヵ国(G-7)の中で唯一、同性婚を認めていない国である。
今回原告となった一人の日本人女性は、米国人女性との婚姻が米国で認められていて、今年8月に出産することとなり、日本に住居を構えることから、他の原告と共に提訴していた。
彼女は、“日本の法的制度は果たして有効に機能しているのか疑問に思う”とした上で、“今回の判決で、私たちは窮地に追い込まれてしまう”と嘆いた。
日本の憲法では、婚姻とは“両性の合意のみに基づく”と定義されていて(憲法第24条)、大阪地裁も、これに基づいて、婚姻とは異性間の結婚と見做されるとの判断を下したものである。
日本の法律は、アジア諸国の中にあって比較的自由な権利が認められているが、同性婚の禁止については他国と同様である(唯一、台湾が同性婚を法的に認知している)。
この結果、日本の同性カップルは、異性婚カップルのように相手の遺産相続はできず、また、相手方の子供の親権を持つことも認められない。
大阪地裁に提訴した原告代理人の三輪晃義弁護士は、“同性カップルにも、異性婚カップルと同様の権利が認められるよう求めたのに、誠に残念な判断だ”とし、控訴するとコメントしている。
ただ、最近ではいくつかの地方自治体が、同性カップルの一部権利を擁護する動きを見せ始めてきている。
例えば、パートナーシップ証明書を発行して、住居を共同名義で賃貸すること、相手が入院した場合の家族としての見舞いを認めること等の措置を講じている。
そして東京都は先週(6月15日)、パートナーシップ条例(注2後記)を制定して、同性カップルが都営住宅等への共同名義での入居を認めることとしている。
岸田文雄首相(64歳)は、本件については慎重に考える必要があると発言していたが、与党・自民党は、今のところ同性カップルに関わる法整備を検討することはしていない、と言明している。
ただ、東京都が昨年実施した世論調査によると、回答者の約70%が同性婚を認めるとの結果となっていた。
同性カップルを支援している活動家は、日本では社会的にも経済的にも同性婚の法整備に話を進めることは容易ではない、と表明している。
この点に関し、米ゴールドマンサックス(1869年設立の世界的金融グループ)日本支社の柳沢正和常務は、“世界に展開するグローバル企業は、LGBTQ事情含めて、目下アジア市場の見直しを行っている”とし、“世界的に、性的マイノリティ擁護が当然のこととなっている現状から、グローバル企業にとって、性的マイノリティ擁護が法的に整備されていない日本は、果たして魅力ある市場か疑念を持ちかねない”と強調している。
なお、同常務は、ゴールドマンサックスがLGBTQの人たちにとって働きやすい会社だと認識して2019年に転職してきており、自身がゲイであることを公表する一方、2019年設立の公益社団法人Marriage For All Japan(結婚の自由を全ての人に)の役員としてもはたらいている。
(注1)LGBTQ:性的マイノリティの総称。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー及びクエスチョニング(またはクィア;性自認が決まっていない状態の人)の頭文字。主要国での生産年齢人口におけるLGBTQ比率は、米国約4%(約908万人)、英国約2%(約84万人)、フランス約7%(約293万人)、豪州約3%(約53万人)、ドイツ約11%(約660万人)、スペイン約14%(約470万人)、日本約8%(約520万人)。
(注2)パートナーシップ条例:同性カップルなど、性的マイノリティの人たちをパートナーシップ関係にあることを公的に認める「東京都パートナーシップ宣誓制度」を盛り込んだ改正人権尊重条例。都は、10月から届け出の受付けを始め、11月からパートナーシップ証明書を発行する。
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3日に行われたハンガリーの議会選挙で、現職のオルバーン首相は、フィデス=ハンガリー市民同盟党の圧倒的な勝利により、4期連続、通算5期目の政権を獲得した。野党6党は、オルバーン首相の失脚を目指した活動を展開していた。しかし、投票日当日には支持率が低下し、議会の3分の2の多数を確保したフィデスに敵わないことが明らかになった。
仏の
『ユーロニュース』は、ハンガリーでは、ウクライナでの戦争はフィデスへの支持を強めたと伝えている。そして、オルバーン政権はLGBTQなどに対する政策をめぐって欧州と争っている政府を国民が強く支持しているとして捉えるだろうと指摘している。一方で今回の選挙結果は、ハンガリーが政治的に分裂していることを示しており、6つの統一野党が最大の投票率を獲得した首都ブダペストと、与党が勝利した国の残りの部分に分かれたと伝えている。
豪『abc.net.au』は、集計がまだ終了していない中、オルバーンのフィデス党が選挙に勝つかどうかではなく、どの程度の勝利になるかが焦点だと伝えている。国政選挙事務局によると、約91%の票が集計され、フィデス党が53%を獲得し、親欧州の野党連合であるユナイテッド・フォー・ハンガリーは34%強を獲得しているという。
オルバーン首相は「全世界は今夜ブダペストで、キリスト教民主主義政治、保守的市民政治、愛国主義政治が勝利したことを見た。我々はヨーロッパに、これは過去ではなく未来であると伝えているのだ」と語った。
ハンガリーの6つの主要野党がイデオロギーの違いを乗り越えてフィデスに対抗する統一戦線を形成したため、今回の選挙はオルバーン首相が2010年に政権を取って以来最も接戦になると予想されていた。有権者は199議席の国会議員を選出する。
今回の選挙では、急進的な右派政党「わが祖国運動」が6%以上の得票率を獲得し、議席獲得に必要な5%の基準値を上回るというサプライズもあった。
オルバーン首相は、当初、社会的・文化的な対立軸で選挙戦を展開していたが、2月のロシアのウクライナ侵攻を機に選挙戦のトーンを劇的に変え、選挙を「平和と安定か、戦争と混乱か」の選択だという選挙キャンペーンを展開した。
野党が紛争状態にある隣国を支援し、EUやNATOのパートナーと歩調を合わせるよう求めたのに対し、オルバーン首相は、ハンガリーは中立を保ち、ロシアのガスや石油を有利な条件で輸入し続けるなど、モスクワとの緊密な経済関係を維持すると主張した。
移民、LGBTQの権利、「EU官僚」を激しく批判するオルバーン首相は、欧州と北米の右派ナショナリストからの支持を集めており、自らをイスラム系移民、進歩主義者、「LGBTQロビー」に対する欧州キリスト教の擁護者として位置づけている。
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