英国地球科学専門誌、エベレスト標高が年々上昇している地質学上の理由を解明したとする研究論文掲載【英国メディア】(2024/10/03)
ヒマラヤ山脈にある世界最高峰のエベレストは、僅かながら年間数ミリずつ標高が高くなっている。これまではプレートテクトニクス(注後記)によるものとされてきたが、英国地球科学専門誌がこの程、地下の高温の液体マントルからの強い圧力によるものだとする新設を唱える研究論文を掲載している。
10月1日付
『BBCニュース』、
『ジ・インディペンデント』紙は、直近の地球科学専門誌が、エベレストの標高が年々上昇している地質学上の新たな理由を解明したとする研究論文を掲載していると報じた。
9月30日発行の英国査読科学月刊誌『ネイチャー・ジオサイエンス』(2008年創刊)は、エベレストの標高が年々高くなる理由の新説を唱える研究論文を掲載した。
エベレストは2020年、正式な標高が8,848.86mと認定されているが、年々2mm程度標高が高くなっていて、それはプレートテクトニクスによるものだと説明されてきていた。...
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10月1日付
『BBCニュース』、
『ジ・インディペンデント』紙は、直近の地球科学専門誌が、エベレストの標高が年々上昇している地質学上の新たな理由を解明したとする研究論文を掲載していると報じた。
9月30日発行の英国査読科学月刊誌『ネイチャー・ジオサイエンス』(2008年創刊)は、エベレストの標高が年々高くなる理由の新説を唱える研究論文を掲載した。
エベレストは2020年、正式な標高が8,848.86mと認定されているが、年々2mm程度標高が高くなっていて、それはプレートテクトニクスによるものだと説明されてきていた。
しかし、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL、1826年創立の国立大学)の地球科学研究グループが同月刊誌に投稿した研究論文によると、従来のプレートテクトニクスだけでなく、エベレストの東側を流れる川が長い間に渓谷を大きく削った浸食による力も加わったためだとしている。
すなわち、この浸食によって地殻の一部が質量を失い、地下の高温の液体マントルからの強い圧力によってエベレストを押し上げた隆起によるものだとする、地殻均衡リバウンド説を唱えている。
同論文によると、当該浸食が8万9千年の間に特に激しくなり、エベレストはその間に15~50m隆起したと推定されるという。
研究に関わった科学者の説明は以下のとおり。
●アダム・スミス博士
・エベレストの75km東側を流れるアルン川が、8万9千年前に他の川と合流して大きな落差のある南方に流れを変えて、高水量とともに浸食力を増大したために多くの土砂・堆積物が削り取られて流失。
・長期にわたって流された土砂・堆積物は何十億トンと推定され、その質量喪失によって地下の液体マントルによる上方への圧力が増して地殻均衡リバウンドが発生。
●マシュー・フォックス博士
・当該浸食が激しくなった8万9千年の間の隆起は15~50mと推定されるが、現在では全地球無線測位システム(GPS)によって、年間約2mm隆起していることが確認可能。
(注)プレートテクトニクス:1960年代後半以降に発展した地球科学の学説。地球の表面を覆う何枚かのプレートが、互いに動くことで大陸移動等が引き起こされるとするもので、この理論の下、エベレストは年間数ミリずつ標高が高くなっていると説明。
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気候変動によるアルプスの氷河融解でスイス・イタリアの国境引き直し【欧米メディア】(2024/10/02)
スイス行政機関の直近の発表によると、アルプス氷河の半分以上を占めるスイスにおける氷河融解が直近3年間で12%余りに達したという。そうした中、アルプス氷河の稜線や永久雪の領域によって国境を決めているスイスとイタリアが、氷河の融解により自然の境界が移動してしまったことから、両国が国境を引き直すことになった。
10月1日付
『ロイター通信』、
『BBCニュース』は、気候変動に伴ってアルプス氷河の融解が激しく進んだことから、同氷河の稜線に基づいて国境を決めていたスイスとイタリアが国境を引き直すことになったと報じている。
スイス科学アカデミー(1815年設立)傘下のスイス氷河モニタリングネットワーク(GLAMOS、スイス国内の20の氷河を数百地点で計測)は10月1日、今年の氷河融解が2.5%進み、最悪だった2022年の6%、次に深刻だった2023年の4%と合わせて、直近3年間で12%超の融解となっていると発表した。...
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10月1日付
『ロイター通信』、
『BBCニュース』は、気候変動に伴ってアルプス氷河の融解が激しく進んだことから、同氷河の稜線に基づいて国境を決めていたスイスとイタリアが国境を引き直すことになったと報じている。
スイス科学アカデミー(1815年設立)傘下のスイス氷河モニタリングネットワーク(GLAMOS、スイス国内の20の氷河を数百地点で計測)は10月1日、今年の氷河融解が2.5%進み、最悪だった2022年の6%、次に深刻だった2023年の4%と合わせて、直近3年間で12%超の融解となっていると発表した。
今年の冬にアルプスに大雪が降ったものの、特に8月の平均気温が高く、積雪の多くが融けると同時に氷河の融解も促進してしまったという。
GLAMOSのマティアス・フス代表は、“今年は冬に大量の降雪があったことと、春に雨の多い涼しい気候が続いたため、氷河の融解が食い止められるかと期待したが、今夏の気温が異常に高かったため、融解が進んでしまった”と嘆いた。
そして、“ここ数年の事態が今後も続くとなると、スイスの氷河にとって大惨事となってしまう”と警鐘を鳴らした。
スイス政府は、標高の高いアルプス地方の気温は10年間で+0.3℃も上昇していて、これは世界平均の2倍以上となるとした上で、このまま温室効果ガスの排出量が増え続けると、アルプスの氷河は2100年までに80%も失われる恐れがあると予測している。
なお、氷河の融解が進んで、アルプス山脈で行方知れずとなった人たちの発見が相次いでいる。
・2014年、マッターホルン(標高4,478m)の山頂近くの氷河の先端で、1970年に遭難したとされる日本人2人の登山者(当時21歳と23歳)の遺骨と遺品を、また、1979年に行方不明となっていた英国人登山家ジョナサン・コンビル(当時27歳)の遺体を発見。
・2022年、アルプス山脈最大のアレッチ氷河で、1968年に墜落した飛行機の残骸を発見。
・2023年、マッターホルンで、1986年に行方不明になっていたドイツ人登山者(当時38歳)の遺体を発見。
一方、アルプス氷河の融解が進んでいることから、氷河の稜線や永久雪の領域によって国境を決めているスイスとイタリアは昨年5月、自然の境界が移動したとして国境の引き直しを行うことで両国の合同委員会で合意した。
スイスは9月27日、上記合意書草案に基づく国境の引き直しについて正式に承認したが、イタリアはまだ承認手続きに入っていない。
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