トルコのエルドアン政権に批判的だった最大手新聞社「ザマン(Zaman)」が4日、デモ隊との衝突の末、政府の治安部隊に占拠され政府管理下に置かれることとなった。政府は当新聞社がイスラム説指導者フェトフッラー・ギュレン氏との関わりがあるとし度々取締を行ってきた。占拠後の日曜の第一紙では、当紙は政府批判から政府支持に一転。報道の自由が脅かされるとしてアメリカ等各国が批判している。EUは難民問題を協議するサミットを控え、トルコの協力を仰ぐため強い批判は出来ないでいる。
3月6日付
『ロイター通信』は「トルコ反政権紙が政府管理下に入り政府支持に転換」との見出しで次のように報道している。
・国内最大手ザマン紙が政府管理下に置かれた翌日の日曜、政権批判は消え、単調な論調に転換。エルドアン大統領と米国のイスラム説教師フェトフッラー・ギュレン氏間の長期に渡る対立の記事を単調につづるもので表紙には大統領の国際女性デーの開幕式に関する記事が掲載。
・ホームページはオフライン状態で「読者の皆さんには一刻も早くより高品質で客観的なサービスを提供します」と掲載されている。
・警察は同社のギュレン氏への資金供与を調査中である。
・ザマンの編集者らは概ね長期政権のエルドアン大統領を支持してきたが、外交政策や政府のギュレン氏支持者経営の学校閉鎖計画をめぐり反対勢力が拡大した。土曜、編集長は解雇処分となった。
同日付米
『VOA』は「占拠されたトルコ反政権紙は路線変更」との見出しで次のように報道している。
・政府管理下におかれた新聞社は最新紙で明らかに政府支持に傾いた記事を掲載。表紙には笑っているエルドアン大統領の写真が目立つ。「メディアの自由を封じるな」と叫んだ数百人のデモ隊への催涙ガスやゴム弾発砲による当社の動揺に関する記事は殆ど見られなかった。
・米ジャーナリスト保護委員会はトルコ政府の決定に抗議。政府がスパイ行為、陰謀、名誉棄損の嫌疑でジャーナリストを拘束できるとする法の解釈を悪用しているとし、世界でジャーナリストの拘束数が最多の国の一つにトルコを指定。
・人権団体は「トルコ政府は憲法に従い報道の自由を擁護するべき」と声明。
・トルコはNATOの一員として地理的に東洋と西洋の架け橋であり、シリア内戦や難民問題等において米国と欧州の重要な同盟国であるため、各国はトルコの人権問題に強く批判を出来ない、とトルコ政府批評家は言う。
同日付仏
『France 24』は「EUはトルコの反エルドアン紙占拠に逼迫」以下のように報道している。
・ザマン紙は政府管理下に入った後の第一紙で政府支持路線を採用。トルコのメディアの自由が歪められる恐れを浮き彫りにした。当紙の表紙ではエルドアン大統領への痛烈な批判が常となっていたのだが、政権支持の記事で埋まっていた。
・EUはトルコとの難民危機対策についての緊急サミットを控えトルコ情勢への批判は弱腰に。当問題でのトルコの協力を得るため報道の自由を当国に迫るには大きなプレッシャーに直面。
・アフメト・ダウトオール首相は政府の新聞社の掌握関与を否定し「合法な手続き」だとしている。
同日付トルコ
『Turkish Weekly』は以下のように報道している。
・米国務省をはじめ報道の自由や人権団体が、撤回を求めてトルコ政府を強く批判している。EU当局は声明を出していない。」
同日付ロシア
『スプートニック』は「トルコ首相はメディアグループの占拠への政府の関与を否定」との見出しで次のように報道している。
・トルコのアフメト・ダウトオール首相はフェザ・メディアグループの占拠を否定、TVの取材で、「政府はこの問題に関与していない。これは司法機関の決定により施行されたものだ。トルコの報道の自由を疑う必要はない。(新聞社は)マネーロンダリング容疑で起訴されたとした。」と述べた。
・トルコの動きは米国、ロシア等多くの国やEU、国境なき記者団などの国際機関で批判されている。トルコは昨年の「国境なき記者団」による報道の自由度指数で180か国中149位であった。
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4日、太平洋経済連携協定(TPP)の署名式がニュージーランド、オークランドで行われ、日本からは前TPP相甘利氏に代わり高鳥内閣府副大臣が主席。参加はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの12カ国。
世界の経済の約半分を担うこの12か国により税を撤廃し貿易障害を撤廃する自由貿易交渉に署名がされた。発行されれば世界のGDP4割弱、人口で約8億人の巨大経済圏となる。雇用創出、持続可能な経済発展をめざし相互の繁栄が共通の目標だ。発効には日米の批准が不可欠だが、米国では承認手続きが難航する恐れが指摘されている。式典会場のオークランド周辺では千人のデモ隊により交通がマヒし警察による警備体制が敷かれた。
2月4日付
『ロイター』は、「TPP署名も交渉は続く」との見出しで次のように報道している。
・5年を費やした合意は重要なステップであるが、紙面(1万6千枚分)上の合意であり、発効
は先のこととのNZのジョン・キー首相は署名式で述べた。
・12か国のうち最低6か国(加盟国の85%のGDP)の批准を推進する交渉に移る。施行までには2年間の交渉が必要となる。
・経済的重要度により米国と日本の批准は必須。労働者の権利、知的財産権保護等における基準作りを行う。
・日本のTPP交渉の表に立っていた甘利前経済担当大臣の辞任により日本の合意を得るのが更に難しくなるであろう。
・多くの国でTPPへの草の根の反対勢力はTPP交渉の不透明さを指摘する。医薬品の入手困難さ、原産国の法規制により利益を損うと想定される場合には海外投資家が訴訟を起こす権利を認めるとする条項が付く等が懸念材料。
・チリのエラルド・ムニョス外務大臣は、南米各国と「健全で民主的な議論」を交わすとした。
・オーストラリアの貿易大臣はTPP合意は次の議会で議論される予定で反対の声が高まるが合意に自信をのぞかせた。
・この日カナダの新政府は署名したが、貿易大臣は署名は批准を意味しないとした。
・メキシコの経済省の書記官はTPPは今年末までに投票が行わるとし、マレーシアは法改正が必要だがTPPは国内で承認されているとした。
同日付米
『VOA』は、「12か国が自由貿易合意に署名」との見出しで次のように報じた。
・TPP合意はオバマ大統領の7年任期での成果の一つであり、大統領はこの合意は米国のリーダー性を高め国内の雇用を促すもので、議会で早急に批准を促したいと述べている。
・TPPの反対派の主張は国内の雇用を縮小し外国製品であふれ、安全でない輸入食品により人体、環境へのダメージにある。
・政府は1万8千の輸出品への税撤廃は米国産製品の海外へ販売拡大に繋がると主張。
・世界第二の経済大国、中国は独自の経済目標を掲げるとしTPPに不参加。しかし米政府当局は中国が参加の意思を示せば何時でも参加を歓迎するとしている。
同日付
『ヤフーニュース』は「米が中国へ対抗し世紀の貿易合意に署名」との見出しで、以下のように報道している。
・「TPPは中国の様な国でなく米国に21世紀の規範を描く事を可能とした」と署名が行われた後オバマ大統領は述べた。米国や日本等他国内の反対意見を制して成された合意は中国という脅威に対する「アジアの軸足(ピボット)」(オバマ氏)となる。
・米は選挙年は民主、共和両党の選挙区に自由貿易に反対する有権者がいるため、11月の大統領選までは国内批准は難しい。
・TPP圏で第二の経済大国日本は、農産業への影響に懸念があるものの、政治家と経済学者は輸出拡大による経済成長を期待しTPPを概ね支持している。
・韓国は6千ページの文書を精査しているとし今回の署名式を静観している。
・カナダ政府は批准には至っていない。
・米経済学者とノーベル賞受賞者ジョゼフ・スティグリッツ氏はTPPが数十年で最悪の貿易合意となる可能性を示唆している。
同日付中
『新華社』は「NZ首相は抗議デモのさなか署名式でTPP交渉団を称賛」との見出しで、労働党の抗議グループが政府はTPPの交渉合意を秘密裏に行ったと主張している等とデモの様子を報道している。
同日付ニュージーランド
『Scoop』は「牛肉生産者TPP署名を歓迎」との見出しで次の様に伝えた。
・TPP合意はアジア太平洋の長期自由貿易圏構想へ向けた動き。牛肉輸出の機会を実現、参加国が増えると利益増が見込める。
・TPP批准により、市場へのアクセスが改善、輸入コストやレッドテープ(繁文縟礼)が減り、牛肉産業全体の供給チェーンを確保。生産者、消費者共にTPPの恩恵を享受できる。
同日付マレーシア
『The Straits Times』は「マレーシアを含む12か国が画期的TPP交渉合意」との見出しで次の様に伝えた。
・殆どの署名国は貿易主要国。TPPの経済的恩恵の9割以上は関税撤廃政策によるものであり、雇用の創出、8億人の生活水準の向上、貧困を減らし持続的成長を促す。
・2018年~2027年で1兆~2.1兆米ドル規模のGDPの拡大、主に繊維業、建設業、販売業への1,3兆~2,3兆米ドル投資増を見込む。
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