イランとの核合意で遠のくパレスチナ和平(2015/09/10)
イランとの核交渉合意により、オバマ大統領とイスラエルのナターニャフ首相との関係が悪化した結果、EUが呼びかけるパレスチナ和平交渉の再開はより困難が予想され、イスラエルとパレスチナ双方の戦闘が激化する可能性がある。
9月9日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、イランの宗教的最高指導者ハメネイ師が「イスラエルは25年後には存在しないだろう」と述べたと報じている。核合意に強硬に反対するイスラエルのナターニャフ首相は、これに対し「ハメネイは核合意の支持者にさえ何の希望も与えない。イランの専制君主の発言からも分かるとおり、各国はイランによるテロと侵略を結束して阻止しなければならない」と語っている。
9月4日付
『ロイター通信』は、EUの呼びかけによって、米国、ロシア、EU及び国連のいわゆる中東カルテットが9月末ニューヨークでイスラエルとパレスチナの和平について会合する予定であり、これにエジプト、ヨルダン、サウジアラビア及びアラブ連盟の議長が参加すると報じた。...
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9月9日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、イランの宗教的最高指導者ハメネイ師が「イスラエルは25年後には存在しないだろう」と述べたと報じている。核合意に強硬に反対するイスラエルのナターニャフ首相は、これに対し「ハメネイは核合意の支持者にさえ何の希望も与えない。イランの専制君主の発言からも分かるとおり、各国はイランによるテロと侵略を結束して阻止しなければならない」と語っている。
9月4日付
『ロイター通信』は、EUの呼びかけによって、米国、ロシア、EU及び国連のいわゆる中東カルテットが9月末ニューヨークでイスラエルとパレスチナの和平について会合する予定であり、これにエジプト、ヨルダン、サウジアラビア及びアラブ連盟の議長が参加すると報じた。
米国が橋渡しをした和平が崩壊して1年以上が経過し、パレスチナとイスラエル双方の憎しみがエスカレートする中で、EUは両者の共存を推進するためにはより多くの国の協力が必要であると考えている。モゲリーニEU外交委員長は「この和平プロセスの再出発が、現地での状況の改善と話し合いの道筋を付けることを期待している」と述べている。
一方で、9月8日付
『VOAニュース』はAP電として、中東諸国では、イランとの核合意が成立すれば、米国はイスラエルとパレスチナの和平を再度押し進めるだろうと予想しているが、実際はその逆になりそうであると報じている。
米政府は、イランとの核交渉を巡りイスラエルのナターニャフ首相との対立が拗れた状況で、パレスチナ国家の範囲などイスラエルとの新たな緊張を招く問題について、積極的に取り組む気はなさそうである。和平工作が成功する確率は僅かであり、大統領選挙が迫っている中、オバマ大統領はイスラエルとの関係修復に関心があり、パレスチナ問題は後任者に任せようとしている。
ナターニャフ首相は3月の総選挙において、パレスチナ国家の設立を認めないと言明しており、その後話し合いには応じても良いと一歩引いたが、譲歩する姿勢は全く見られない。パレスチナは、1967年の中東戦争でイスラエルに占領された西岸全部、東エルサレムとガザ地区を独立国家として要求している。イスラエル人の多くは、その殆どの土地をパレスチナに組み入れることを認めているが、西岸の一部を安全保障や宗教上の理由で支配を継続することには強く拘っている。聖地エルサレムを両国共有とする案は、特に難題である。また、イスラエルは1948年の建国時に難民となったパレスチナ人やその子孫が自分の土地に“戻る権利”を一切認めない。
パレスチナのアッバス大統領は、最近退任するか又は1990年代に合意した協定を破棄することを匂わせている。現行合意によれば、アッバス大統領が自治政府を率いて西岸の一部を統治し、イスラエルの安全確保に協力することになっており、これは米国や国際社会への脅しである。ケリー米国務長官は、アッバス大統領に対し9月末の国連総会の前後に会談することを約したが、新たな提案を出すことはまず期待できない。
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中国が「抗日戦勝70年」軍事パレードを誇示(2015/09/04)
9月3日の
『VOAニュース』は、中国が第二次世界大戦抗日戦勝70周年を記念する、大軍事パレードを北京の天安門広場で開催したと報じた。習近平国家首席は、中国は平和的発展を誓約し、如何に強大になろうとも覇権や拡大主義を求めないと述べるとともに、人民解放軍を30万人削減すると宣言した。人民解放軍は現在230万人であり、兵力削減は1980年代に実施して以来4回目である。軍事パレードは、中国の株式市場が暴落し、一連の経済指標が示すとおり実態経済の悪化が懸念される中で実施された。...
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9月3日の
『VOAニュース』は、中国が第二次世界大戦抗日戦勝70周年を記念する、大軍事パレードを北京の天安門広場で開催したと報じた。習近平国家首席は、中国は平和的発展を誓約し、如何に強大になろうとも覇権や拡大主義を求めないと述べるとともに、人民解放軍を30万人削減すると宣言した。人民解放軍は現在230万人であり、兵力削減は1980年代に実施して以来4回目である。軍事パレードは、中国の株式市場が暴落し、一連の経済指標が示すとおり実態経済の悪化が懸念される中で実施された。
同ニュースは、軍事パレードは、中国が経済や国際的影響力について各国の信頼を得るよりも、日本やインドなどの近隣諸国の不安を増幅させるであろうと論評する。「中国の第1の狙いは日本に脅威を与えることであり、また、軍事力の近代化プログラムの成果を誇示したいのだ」と、あるインド軍退役少将は語っている。一方、中国の識者は、「日本はこの軍事パレードを自国の軍事力強化の口実にするかもしれないが、安倍政権は日本国内での軍備増強への怒りを考慮しなければならないだろう」と評している。
9月1日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、「習近平国家主席は、軍事パレードは第二次世界大戦の戦勝を記念するものと宣伝しているが、ライバル―日本とその同盟国である米国―に立ち向かう軍事大国に成長し、“再生した”中国を演出しようとしたものである」と報じている。一方、過去を持ち出したことで、中国共産党が日本の14年にわたる中国占領を終わらせたと誇張し、歴史を歪曲しているとの批判がある。軍事パレードへ列席する賓客への招待を、ロシアのプーチン大統領と韓国の朴槿恵大統領を除き、日本と戦い日本の侵略で被害を被った殆どの国が見送っている。
中国国内では、習首席は中華人民共和国の建国を祝う軍事パレードは10年に1回に限るとする伝統を無視した、との声が出ている。2019年に、毛沢東が激しい内戦の末に国民党を倒して70周年を迎えるが、政府は4年後のパレードをどうするのか態度を明らかにしていない。
日本を敵視する方針は1989年、天安門広場事件で共産党が学生主導のデモを暴力的に鎮圧したことにより、高等教育を受けたエリート層の党への忠誠が大きく揺らいだことが原因で決められたものである。事件後、中国指導部は愛国教育を導入し、日本の戦時の残虐行為や外国による侵略行為の屈辱を強調してきた。習近平首席は、国家の再生と軍事大国をめざす「中国の夢」を推進するため、その論理を更に強調していると評している。
9月2日付
『ABCニュース』 はAP電として、 中国の強力な軍事力の誇示は国内の観衆を喜ばせるかもしれないが、米国や日本及び他の民主主義国家からは嫌われると報じている。ビル・アーバン米国務省スポークスマンは、「軍事パレードは、かつての敵との和解をテーマとしているようには受け止められない」と述べている。すでに、中国のミサイルの性能は日本を拠点とする米空母艦隊の防衛力を上回りつつある。目の当たりにする中国の軍事力は、米国がアジアで防衛条約を遂行する能力と、南シナ海のシーレーンへの各国の自由なアクセスを維持することに対し、重大な意味を持つものである。
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