7月28日付米
『AP通信』:「米中両国関係が軋む中、新駐米中国大使が着任」
米中両国間関係が軋む中、新たに任命された新駐米中国大使が7月28日に着任した。
秦剛氏(チン・カン、55歳)で、直前まで9人いる外交部副部長(副大臣に相当)のひとりであったが、かつて在ロンドン大使館に勤務し、また二度ほど同部の報道官も務めていた。
報道官当時は、辛らつなコメントを発することで知られていたが、今回は両国間を連携する立場に立つことになる。...
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7月28日付米
『AP通信』:「米中両国関係が軋む中、新駐米中国大使が着任」
米中両国間関係が軋む中、新たに任命された新駐米中国大使が7月28日に着任した。
秦剛氏(チン・カン、55歳)で、直前まで9人いる外交部副部長(副大臣に相当)のひとりであったが、かつて在ロンドン大使館に勤務し、また二度ほど同部の報道官も務めていた。
報道官当時は、辛らつなコメントを発することで知られていたが、今回は両国間を連携する立場に立つことになる。
同日に中国大使館からリリースされた声明文によると、秦新大使は、“中国と米国は相互に探求し、理解し、そして適応していく段階に入りつつあり、新時代において相互に協力していく道を探っていく必要がある”と表明している。
更に同新大使は、“現在の両国が厳しく対立状況下にあっては、大使が厳しい対応を取ろうとも、また、温和な姿勢を示そうとも、それが両国間に重大な影響力を及ぼすようなことはあり得ない”とも言及している。
なお、中国人民大学(前身が1937年設立の国立大学、在北京)国際関係学部の時殷弘教授(シ・ユンホン、57歳)は、“新大使の西側及び米国に対する開けっ広げで辛らつなコメントより、これまでの駐米大使より厳しく当たっていくものとみられる”と分析している。
一方、米国は依然、在中国大使を任命していないが、ジョー・バイデン大統領は、国務省報道官、北大西洋条約機構(NATO)大使、国務次官(政治担当)を歴任したニコラス・バーンズ氏(65歳)を指名する意向と言われている。
7月29日付フランス『AFP通信』:「中国、“戦狼外交”の外交官を駐米大使に任命」
タカ派として知られる秦剛氏が、駐米中国大使に任命されてこの程ワシントンDCに着任した。
同氏が外交部報道官だった時、「戦狼外交(注後記)」と言われる攻撃的な口調で公式記者会見をすることで有名であった。
同氏は2018年から直近まで外交部副部長の任にあったが、今年2月、“根拠のない中傷”や“中国への常軌を逸した攻撃”に対して、「戦狼外交」の手段を用いるのは止むを得ないことだと発言している。
ただ、着任した7月28日に中国大使館からリリースされた声明文の中で、新大使は、“対峙する関係となっている米中両国を、「元の協力関係」に戻すと誓う”と表明している。
なお、同氏はかつて在ロンドン中国大使館で勤務していたことから、英語は堪能である。
(注)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのこと。この用語は、中国のランボー風のアクション映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」(2015年制作・公開)からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、戦狼外交はより好戦的である。支持者は、ソーシャルメディアやインタビューで、中国への批判に対して声高に反論や反駁をしている。
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中国はこれまで、軍事的・経済的に大国の仲間入りをしたことを自負して、逆らう国家や反発者らに対して、恫喝や脅しの言葉をふんだんに浴びせて服従させようとしてきた。直近でも、新型コロナウィルス(COVID-19)起源調査問題を率先して提起したオーストラリアに対して、同国産物の輸入制限や文化・教育面への露骨な攻撃政策を繰り出している。しかし、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)がこの程、かかる“戦狼外交(注1後記)”の悪評を慮って、外交官らに恫喝や脅しと取られるような発言・表現を控えるように諭した模様である。
6月3日付
『ワシントン・ポスト』紙:「習国家主席、“愛すべき”中国に戦狼外交は似合わないと強調」
中国高官はここ数年来、自国への敵対や脅威と認められた国に対して、狂気じみた表現で警告、侮蔑、あるいは不合理な発言等で貶めてきた。
しかし今週、習近平国家主席が遂に立ち上がり、今後は恫喝など行わないよう諫めた。
『ブルームバーグ』報道によると、習国家主席が5月31日、中国高官は中国に対する国家イメージが、“信頼に足り、愛らしくかつ尊敬に値する”と捉えられるよう振舞うべきだとし、“そのためには、開放的で自信に満ち、かつ穏やかで謙虚”であるべきだと諭したという。...
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6月3日付
『ワシントン・ポスト』紙:「習国家主席、“愛すべき”中国に戦狼外交は似合わないと強調」
中国高官はここ数年来、自国への敵対や脅威と認められた国に対して、狂気じみた表現で警告、侮蔑、あるいは不合理な発言等で貶めてきた。
しかし今週、習近平国家主席が遂に立ち上がり、今後は恫喝など行わないよう諫めた。
『ブルームバーグ』報道によると、習国家主席が5月31日、中国高官は中国に対する国家イメージが、“信頼に足り、愛らしくかつ尊敬に値する”と捉えられるよう振舞うべきだとし、“そのためには、開放的で自信に満ち、かつ穏やかで謙虚”であるべきだと諭したという。
中国国営メディアの『新華社通信』が、同国家主席が政治局(中国共産党の上級機関)メンバーとの会議の席上で発言したと報道しているが、中国問題研究者からすれば俄かには信じがたい事態だとする。
ただ、直近数年間の中国に対する国際社会からの反発はすさまじく、例えば、新疆ウィグル自治区の少数民族ウィグル族への弾圧、台湾・インド(チベット族)・香港の民主活動家への高圧的取り締まり、更には、COVID-19起源に関して中国国内に燻る疑念等、悪いイメージが際立っている。
これに加えて、中国外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チャオ・リーチアン、48歳)、世界中に派遣されている大使や外交官らは、“戦狼外交”の騎手として煙たがられている。
そして、いくつもの事例が示すとおり、彼らの過度に攻撃的な外交スタイルでは、どことも誰とも友好関係は築けないことは明白である。
実際問題、昨年10月にリリースされたピュー研究所(2004年設立の世界の世論調査を行うシンクタンク)による14ヵ国の調査の結果、ほとんどの国が中国に対して否定的に捉えていた。
中国に対する国際的なイメージの悪化は、世界からは余り評価されなかった前トランプ政権の“米国第一主義”がはびこっていた時期に起きている。
そして更に、バイデン新政権が、前政権より表現はソフトとは言え、COVID-19起源問題等で中国への非難攻勢に出ていることから、対中イメージは益々悪化するとみられる。
例えば、直近で米国から発信された、人権問題等を非難するために2022年北京冬季オリンピックへのボイコットの呼びかけについて、直ぐに立ち消えになるようにみえない。
また、中国が盛んに注力しているワクチン外交戦略も、中国製ワクチンの有効性が低いことや、新たな変異株の出現・蔓延もあって、然程世界から評価されない状況となっている。
一方、習国家主席は2016年に、中華思想(注2後記)を世界に広げていくためには、“戦争も辞さじ”と公に発言していたことから、同主席の今回の自重を促すとの発言に懐疑的な見方がされている。
香港大学(1911年設立)のジャーナリズム・メディア研究センターによって創設された中国メディア研究所(2003年設立)のデビッド・バンダースキ共同代表は、同国家主席の政治局における発言は二面性があるとみるべきで、同主席の態度豹変は非常に疑わしいと主張した。
何故なら、ウィグル族や香港への圧政や、COVID-19起源調査への妨害行為は、正に習国家主席が主導して行ってきているからである、という。
従って、中国政府の大幅な政策変更がなされない限り、中国外交官の恫喝等の行為はなくなることはあるまい、と付言している。
そこで同代表は、“西側諸国は、今後中国がどういう政策を取って行こうとするのか、注意深く見守る必要がある”と強調している。
(注1)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイル。この用語は、中国のランボー風のアクション映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」(中国軍元特殊部隊兵のアフリカ某国での反政府軍との戦い、2017年公開で中国の興行収入第1位)からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、より好戦的な対外政策を指す。
(注2)中華思想:中華の天子(皇帝)が天下 (世界) の中心であり、その文化・思想が神聖なものであると自負する考え方。漢民族が古くから持った、自民族中心主義の思想 。
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