先に掲載の「問われる“報道の自由”」で報じたとおり、国家権力による報道管制の強化、また、メディアの自主規制の昂揚等、報道の自由を脅かす事態が深刻化してきている。そして、中国本土からのプレッシャーの影響か、報道の自由度の評価について、日本と同様、2002年の18位から2016年の69位まで順位を下げてきた香港において、2014年1月及び2月のジャーナリスト更迭事件(注後記)に続いてまたしても、言論弾圧と思われる著名編集者の解雇事件が発生した。今回の解雇の直接の原因が、4月20日付【
時流:動き出す「パナマ文書」】でも取り上げられた「パナマ文書」について、香港での詳細報道を阻止しようとしたものと言われていることもあって、国際社会の注目を集めている。
4月21日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用)の報道「香港のジャーナリスト・グループ、主務編集者の突然の解雇を非難」:
「・香港記者協会は4月21日、
『明報』紙のNo.2編集主幹である姜国元(カン・クォクユアン)氏の突然の解雇に抗議を表明。
・会社側は経費節減のためのリストラと説明しているが、同紙労組は、姜氏が“パナマ文書”をめぐる特集を掲載したためだと反発。
・同紙は4月20日付の一面で、“パナマ文書”に掲載された香港の政治家や財界人の実名を報道。...
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4月21日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用)の報道「香港のジャーナリスト・グループ、主務編集者の突然の解雇を非難」:
「・香港記者協会は4月21日、
『明報』紙のNo.2編集主幹である姜国元(カン・クォクユアン)氏の突然の解雇に抗議を表明。
・会社側は経費節減のためのリストラと説明しているが、同紙労組は、姜氏が“パナマ文書”をめぐる特集を掲載したためだと反発。
・同紙は4月20日付の一面で、“パナマ文書”に掲載された香港の政治家や財界人の実名を報道。」
同日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』の報道「突然の解雇で香港の報道の自由に危機」:
「・
『明報』紙記者によると、姜副主幹は4月20日、北京政府寄りと言われるマレーシア人のチョン・ティエン・シオン編集長から解雇通告を受けたが、同編集長は2年前、中国政府を非難する記事を掲載したことで解雇されたケビン劉(ロー)元編集長の後任として就任。
・劉元編集長は2014年2月、闇の組織に雇われた2人組の暴漢に襲われ重傷。
・なお、4月20日に国境なき記者団によって発表された報道の自由度ランキングで香港は、世界180ヵ国・地域中69位の評価。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙の報道記事「香港紙の編集者、パナマ文書記事報道のため解雇」:
「・香港記者協会を含めた8つの労組は、姜氏は過去数十年にわたり、香港における大論争となった事態について先陣を切って報道してきたベテラン編集者で、
『明報』紙は姜氏の解雇について、読者や世間に対してきちんと説明すべきと要求。
・また、姜氏の報道姿勢が非難されるなら、香港における報道の自由は全く擁護されないことになると非難声明。」
同日付中国
『チャイナ・ナショナル・ニュース』(『ラジオ・フリー・アジア(米議会出資
の短波ラジオ放送局)』の報道引用)の報道記事「パナマ文書報道で香港の編集者が解雇さ
れ、香港メディアが騒然」:
「・香港記者協会のシャム・イェーラン主席(会長に相当)は、姜氏の編集方針は必ずしも経営幹部の望む方針と一致していた訳ではなく、何らかの衝突があったものと推測されると発言。
・また、近ごろのジャーナリズムを囲う環境は非常に厳しいものになっているともコメント。
・香港は1997年に英国から返還された際、一国二制度(表現や組合活動の自由、本土と異なる司法体制や入国管理等)が保証されたが、新興政治活動グループが独自の政策や香港の独立性を訴え始めて以来、香港政府当局によって、表現の自由が以前より制限されている状況。」
(注)2014年1月及び2月のジャーナリスト更迭事件:無料テレビ局の新規免許交付に当り、中国政府を批評してきた
『香港テレビ』だけが不交付となった件について、連日非難報道した大手紙
『明報』の編集長ケビン劉氏が2014年1月に突然更迭され、また、香港政府に対する辛口評論で知られるラジオ局
『商業電台』のベテラン司会者李慧玲(リー・ウェイリン)女史も同年2月突然解雇された。
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