ロシア;反プーチン政権活動家筆頭のジャーナリストに禁固25年の有罪判決【米・ロシアメディア】(2023/04/19)
ロシアの裁判所がこの程、ウクライナ侵攻を非難する反体制派活動家筆頭のジャーナリストに対して禁固25年の有罪判決を下した。西側諸国は一斉に、ロシア国内での政権批判派を恐怖に陥れて活動を止めさせるためのスケープゴートにされた不公正裁判だと非難している。一方、ロシア政府は、裁判所の判断にコメントはしないとして、三権分立を装う体裁を取っている。
4月17日付米
『AP通信』、
『ABCニュース』等は、ロシアの裁判所が、政権批判を展開する活動家の筆頭のジャーナリストに対して、昨年2月のウクライナ軍事侵攻後に新たに制定した法律に基づき、禁固25年の有罪判決を下したと一斉に報じている。
ロシアのモスクワ地裁は4月17日、政府に批判的な活動家でジャーナリストのウラジーミル・カラムルザ氏(41歳)に対して、国家反逆罪等の罪で禁固25年の有罪判決を言い渡した。...
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4月17日付米
『AP通信』、
『ABCニュース』等は、ロシアの裁判所が、政権批判を展開する活動家の筆頭のジャーナリストに対して、昨年2月のウクライナ軍事侵攻後に新たに制定した法律に基づき、禁固25年の有罪判決を下したと一斉に報じている。
ロシアのモスクワ地裁は4月17日、政府に批判的な活動家でジャーナリストのウラジーミル・カラムルザ氏(41歳)に対して、国家反逆罪等の罪で禁固25年の有罪判決を言い渡した。
ロシアでは2022年2月のウクライナ軍事侵攻後、戦争反対の声を抑え込むべく、政権批判する活動家らを取り締まるため、新たな刑法改正(注後記)が次々に行われている。
今回のカラムルザ氏への判決は、これら改正刑法が適用されて以降最も重い量刑となっている。
同氏の弁護人のマリア・エイスモント弁護士(47歳、ロシアに踏み止まる数少ないリベラル派)は、同氏が法廷で判決を告げられた時、“自分が行ってきたこと全てが正しかったと理解した”とし、“自身の行動や、市民及び愛国者として信じてきたことが最高に評価された禁固25年だ”と落ち着いた様子でコメントしたとする。
裁判を傍聴していた駐ロシア米・英国大使は、“カラムルザ氏に対する有罪判決は、反対意見を封じ込めようとする試みだ”とした上で、“即座の解放を求める”と異口同音に訴えた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、“昨年のウクライナ軍事侵攻以来、ロシア政府が拡大解釈して取り締まりを強化している最悪のパターンだ”とし、“市民生活を脅かす冷酷な証拠だ”として非難している。
ロシア当局は、カラムルザ氏以外にも直近で、反政府活動をしたとして一般市民らを多く逮捕・拘留している。
昨年8月には、野党政治家のイルヤ・ヤシン氏(39歳)に対して、ロシア軍に関わる虚偽情報を流布した罪で8年半の有罪判決を下した。
先月には、SNS上に戦争批判の投稿をしたとして、一般市民の男性を2年の禁固刑に処している。
更に、その13歳の娘が、学校で戦争反対を表す絵を描いたとして、孤児院に送られてしまっている。
また、その数日後には、米『ウォールストリート・ジャーナル』紙のロシア特派員のエバン・ゲルシュコビッチ記者(32歳)が、スパイ活動容疑で逮捕されてしまった。
ロシアの独立系ニュースサイト『メディアゾナ』(2014年設立)は、ロシア最高裁の公表データによると、2022年に市民に対して、軍事活動の虚偽情報流布の罪で合計4,439件検挙していて、罰金額は総額180万ドル(約2億4,100万円)に上っていると報じている。
一方、4月17日付ロシア『タス通信』は、ロシア政府報道官が、カラムルザ被告に対する有罪判決について一切コメントする意向はないと表明したと報じている。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官(55歳、2012年就任)は4月17日、モスクワ地裁がジャーナリストのカラムルザ被告に対して、25年の禁固刑に処したことに対して、一切のコメントを控えるとした。
同報道官は、“これまでも裁判所判断に決してコメントしてきていないのと同様、今回も何ら物申す意向はない”と表明した。
なお、同被告に対する起訴状によると、2022年3月、同被告が米アリゾナ州議会において、ロシア軍がウクライナにおいて使用禁止の兵器で軍事活動を行った等の根拠のない演説を行ったとしている。
更に同被告は2021年10月、(ロシア国内では好ましくない国際機関とされる)NGO自由ロシア財団(2016年設立)の援助を受けて、モスクワ在のサハロフ・センター(1996年設立の美術館・文化館で人権擁護活動を展開)において、政治犯を支援する会合を開いたとしている。
これらの行動全てが、ロシア国家反逆罪に相当する、として起訴されたとしている。
(注)ロシア刑法改正:まず2022年3月、前月のウクライナ軍事侵攻(ロシア政府は特別軍事作戦と標榜)等を非難する活動家らを取り締まるため、軍事行動に関わる虚偽報告流布罪を新たに追加。同国の軍事行動に関して虚偽の情報を広げた場合に刑事罰を科すというもの。情報の戦時統制を強化し、言論の自由を大きく損なう内容で、ロシア人だけでなく外国人も対象となり、最長で15年の懲役や禁錮など自由はく奪の重い刑罰を科される。
次に同年7月、ロシアが参加する外国での紛争や軍事行動における敵への寝返りを国家反逆罪とし、最長で懲役20年を科す刑法改正を実施。更に、外国の情報機関や国際組織との間に、ロシアの安全保障に脅威を与える目的で秘密の関係を築いた場合は、最長で懲役8年を科すことも盛り込まれている。
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ロシア;ウィルス禍による感染者数ごまかしの次は死者数過少申告?【米・ロシアメディア】(2020/05/21)
ロシアは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染の初期段階で、国境を接する中国はもとより、往来が頻繁な欧州諸国に比して、異常なほどCOVID-19感染者数が低かった。当局は認めていないが、初期段階での検疫の不正確さや実検疫数が極端に低かったことが原因と言われ、目下は、欧州並みどころか、遥かに凌駕する感染者数となっている。そして今度疑われているのが死者数で、致死率(全感染者数に対する死者数の割合)が世界平均6.6%に比して、ロシアの場合は0.96%と、これも英国・イタリア(14%)、スペイン(12%)、更には、最良の医療体制が敷かれていたこと等が理由で低数値となっているドイツ(4.6%)よりも遥かに低く、かなりの過少申告となっていることは疑いの余地がない。因みに、日本(4.7%)、中国(5.5%)、韓国(2.4%)となっている。
5月20日付米
『CNBCニュース』:「ロシア政府は“ごまかしはない”とするも、感染者数30万人超に対して公表死者数が異常に少ないという事実」
ロシアにおけるCOVID-19感染者数は、5月20日現在30万8,705人(前日比+8,764人)と、米国に次ぐ世界2位の地位を不動のものにしつつある。
一方、死者数は2,972人(同+135人)と異常に少ない(世界16位)。
専門家の間では、ロシア政府の公表数値は疑念だとする声があがっているが、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は5月19日、『CNBC』への文書回答で、“ごまかしも過少申告もしていない”と強調している。...
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5月20日付米
『CNBCニュース』:「ロシア政府は“ごまかしはない”とするも、感染者数30万人超に対して公表死者数が異常に少ないという事実」
ロシアにおけるCOVID-19感染者数は、5月20日現在30万8,705人(前日比+8,764人)と、米国に次ぐ世界2位の地位を不動のものにしつつある。
一方、死者数は2,972人(同+135人)と異常に少ない(世界16位)。
専門家の間では、ロシア政府の公表数値は疑念だとする声があがっているが、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は5月19日、『CNBC』への文書回答で、“ごまかしも過少申告もしていない”と強調している。
しかし、ロシア誌『リドゥル(難問、難題の意)』の政治評論家アントン・バルバシン論説員は『CNBC』のインタビューに答えて、“第一に、COVID-19感染者でも死因が心不全や慢性疾患の場合、COVID-19死者数に含めていないこと、第二には、地方自治政府(注1後記)が中央政府に対して、過少申告していることが考えられる”とコメントした。
また、英国のベリスク・メイプルクロフト(1975年設立のグローバル・リスク分析、リサーチ企業)の欧州・ロシア分析担当部門のダラーグ・マクダウェル主任は、“ロシアの公表数値は、感染流行度合に比して明らかに過少報告されている”とした上で、“モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長が、5月7日の時点で、モスクワだけで既に30万人に到達している”と付言していると明かした。
更に同主任は、死者数の異常値にも触れて、“例えば、モスクワ以外で感染が最も深刻なダゲスタン共和国(カスピ海西岸)では、感染者3,553人のうち死者は僅か35人と報告されているが、一方で、650人以上の死者が、COVID-19ではなく”市中肺炎(慢性ではなく、通常の社会生活の中で罹患した肺炎)によって死亡と報告されている”と厳しく指摘している。
マクダウェル主任の分析にはバルバシン論説員も同意していて、“ダゲスタン共和国の例で分かるように、実際の感染流行深刻度は公表値より遥かに高い”とコメントした。
また、同主任は、地方自治政府が中央政府の印象を良くしようと、故意に“良い数値(少ない数値)”を報告している例があるとも考えられると付言した。
ロシアの死者数公表値について、欧州他国と比較してみると、多くの国の致死率がおよそ10%前後であるのに、ロシアの場合は1%以下と極端に低い。
例えば、5月19日現在の英国の数値をみてみると、感染者数24万7千人超に対して死者数が3万4,876人(致死率14%)、同様に、イタリアはそれぞれ22万6千人超・3万2,169人(同14%)、スペインは同じく23万2千人超・2万7,778人(同12%)となっている。
また、ドイツは、初期対応の緻密さや医療体制が整っていたこともあって、感染者数17万7千人超に対して、死者数が8,060人と低いが、それでも致死率は4.6%である。
いずれにしても、ロシアの感染者は依然増え続けていて、収束の見通しが立っていないことから、ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワとサンクトペテルブルグにおける厳しい都市封鎖措置を5月一杯継続することを決めている。
なお、ロシアの独立系世論調査会社レバダ・センターの4月の調査によると、同大統領の支持率は59%と、3月時点の63%より更に下がっており、大統領在任二十年間で最低レベルとなっている。
同日付ロシア『モスクワ・タイムズ』紙:「ロシアにおけるCOVID-19現状」
●5月17日
・ダゲスタン共和国保健相が、同国で既に1万3千人以上がCOVID-19あるいは市中肺炎に罹患していて、うち657人が死亡したと発表。ただ、公式の統計数値は、COVID-19感染者3,371人、死者は29人と報告。
●5月18日
・プーチン大統領、ダゲスタン共和国高官が、COVID-19による死者が数百人となっている可能性があると報告してきたことを受けて、同共和国のCOVID-19対策に集中的に当たるよう檄。
・ロシアのガマレイ・リサーチセンター(疫学・微生物学専門)のアレクサンデル・ギンズバーグ理事長は、ロシアにおけるCOVID-19死者数が他国に比して少ないのは、人口比における集団免疫(注2後記)が高いからだと説明。
●5月19日
・ミハイル・ミシュスティン首相が、COVID-19陽性反応が出て自主隔離後、ほぼ3週間振りに復帰。
・モスクワのソビャーニン市長、同市の感染状況は“理想より遥かに悪い”と報告。そこで、5月末までに、1日の検疫数を20万件体制と倍にする計画を発表。
●5月20日
・ソビャーニン市長が、このままでは、同市における5月のCOVID-19死者数が、4月比“異常に”高い数値となると警告。
・ロシアにおける医療従事者のCOVID-19死者数が、他国に比して16倍も多いと『メディアゾナ・ニュース』が報道。
(注1) 地方自治政府:ロシア連邦構成主体は85(但し、西側諸国はクリミア半島併合を承認していないので、83)。内訳は、連邦市3、共和国22、州46、地方9、自治管区4、自治州1。
(注2) 集団免疫:ある感染症に対して集団の大部分が免疫を持っている際に生じる間接的な保護効果であり、免疫を持たない人を保護する手段。多数の人々が免疫を持っている集団では感染の連鎖が断ち切られる可能性が高く、病気の拡大は収まるか、緩やかなものとなる。あるコミュニティにおいて免疫を持っている人の割合が高ければ高いほど、免疫を持たない人が感染者と接触する可能性は低くなる。
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