米中両国による外交・安全保障や経済についての対話が、6月22日から3日間の日程でワシントンで始まった。初日の次官級による“米中戦略対話”では、早速米側から、中国が南シナ海の岩礁埋め立てによって軍事拠点化する動きについて懸念が伝えられた。そうした中、緊張が高まっている南シナ海では、フィリピン軍が日本の海上自衛隊の哨戒機を使った初めての共同訓練を行ったこと、一方、米軍側にとって脅威となる、中国の弾道ミサイル搭載の潜水艦の基地化が進められる懸念があるとの見方があると、米メディアが伝えている。
6月22日付
『ロイター通信』は、「フィリピン軍、南シナ海で米国・日本との軍事訓練強化」との見出しで、「アジアの中では最弱な海軍を持つフィリピン軍は、中国と領有権を争う南沙諸島の近海で今週、米軍と日本の自衛隊とそれぞれ共同軍事訓練を実施する予定である。中国が一方的に埋め立て工事を展開した岩礁から160キロメーター西にある、パラワン島プエルトプリンセサ空軍基地に、6月21日夕方には既に2機のP3C哨戒機が待機していた。1機は米軍のものであり、もう1機は日本の海上自衛隊のものである。フィリピン軍高官によれば、米軍との共同訓練は先週末から2週間の予定で始められており、一方、海上自衛隊とは6月23日から2日間実施するという。」と報じた。
一方、同日付
『マイアミ・ヘラルド』紙は、「南シナ海は、中国軍の潜水艦の秘密基地化のおそれ」との見出しで、「米軍事評論家のカール・セイヤー氏によると、南シナ海には数千メーターの深海域(注後記)がいくつかあるため、弾道ミサイル搭載の潜水艦を隠すのに適しており、中国はその秘密基地化を進めようとしているおそれがあるという。昨年の米国防総省の調査レポートには、中国は弾道ミサイル搭載の潜水艦フリートを増強しており、56隻のうち5隻は原子力潜水艦で、しかも少なくとも3隻には弾道ミサイル搭載が可能と記されている。セイヤー氏は、中国南部の海南島南端の三亜(サンヤ)に海軍基地が建設されていて、そこで密かに潜水艦の修理や待機が可能となっているという。従って、南シナ海にも同様の軍事拠点を築き上げ、そこに弾道ミサイル搭載の潜水艦を潜ませれば、米軍は容易に探知できなくなる。」と伝えた。
中国は、経済、金融、そして軍事面で、頑ななまでに米国との超大国競争に挑んでいる。特に、空母や戦闘機などの性能で米軍にはるかに後れを取っている人民解放軍にとって、南シナ海に軍事拠点を設けることは、米本国に届く長距離ミサイルを搭載した原子力潜水艦を待機させられるだけでなく、同軍空母を守る戦闘機も(中国本土だけでなく)同海域に配備できることとなり、米軍のアジア戦略に真っ向から対抗できるとみているはずである。
(注)南シナ海の深海域:水深が3,000~4,000メーターの海域がいくつかあり、最深部はマニラ海溝(台湾南西沖~ルソン島西側まで南北に伸びる海溝)の約5,000メーター、平均で約1,500メーターと言われる。東シナ海や黄海は大陸棚で浅過ぎるため、潜水艦にとって潜むには危険だが、南シナ海なら十分な深さがあるというもの。
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