現在米国では、アジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立の非公式協議体)首脳会議が開催されている。この機会を捉えて、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)・習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)がほぼ1年振りに会談したが、APEC台湾代表として出席した特使が、米中首脳会談を契機として台湾問題沈静化に期待できると発言している。
11月17日付
『AP通信』、台湾
『フォーカス台湾』は、APEC首脳会議に出席した台湾特使が、米中首脳会談開催で台湾問題沈静化に期待できると表明したと報じている。
米国が議長国となって、11月15~17日にAPEC首脳会議が開催された。
この機会を捉えて、ジョー・バイデン大統領と習近平国家主席がほぼ1年振りに首脳会談を持った。
この首脳会談で、偶発的な軍事衝突を避けるため、米中両軍高官の対話再開が合意された。
APEC首脳会議に台湾代表として出席していたモリス・チャン氏(張忠謀、チャン・チョンモウ、92歳)は、“米中首脳が両軍高官の対話再開に合意したことは良いことだ”とし、“これによって米中間緊張が緩和されるだけでなく、台湾海峡をめぐる問題も沈静化されることが期待できる”と歓迎する旨表明した。
チャン氏は、世界最大の半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC、1987年設立)の創業者で、台湾を代表してこれまで7回同首脳会議に出席している。
これは、APECという非公式協議体であっても、中国が台湾の蔡英文総統(ツァイ・インウェン、67歳、2016年就任)の出席を認めないことから、今回も議長国の米国が代理特使の出席を求めていたものである。
チャン氏は今回、同首脳会議出席に当たって、蔡総統から、“台湾が地域の平和と繁栄に尽くすこと、また、気候変動問題、より強靭なサプライチェーンの構築、情報格差の改善に貢献していくことをAPEC首脳らにしっかり伝えること”を求められたが、“その使命は果たせたと思う”と語っている。
なお、チャン氏は今回、バイデン大統領に加えてカマラ・ハリス副大統領(59歳、2021年就任)、アントニー・ブリンケン国務長官(61歳、2021年就任)他と会談したとする。
更に同氏は、APEC参加21ヵ国・地域のほぼ半数の首脳と会談したとし、岸田文雄首相(66歳、2021年就任)と会談した際には、地域の平和、経済協力、また、サプライチェーンについて協議したという。
一方、同氏は今回、習国家主席と会談することはなかったとする。
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8月3日付欧米
『ロイター通信』:「台湾チームのメダル獲得で、“チャイニーズタイペイ”の名の下でのオリンピック参加に物議」
東京大会のバドミントン男子ダブルス競技において、台湾チームが決勝で中国チームを破って金メダルを初めて獲得した。
そして王斉麟選手(ワン・チーリン、26歳)が試合当日の7月31日の晩、フェイスブック上で、優勝の喜びと共に“自分は台湾出身だ”と書き込んだ。
しかし、この書き込みによって、長く燻っている“ひとつの中国”問題論争が勃発している。
台湾チームは目下、金メダル2個の他8つの銀・銅メダルを獲得する程大躍進していることから、台湾の政治家から有名人まで、“チーム台湾”、“台湾は台湾”との大合唱が起こっている。
そして、王選手のフェイスブックの書き込みを100万人以上が称賛していて、SNS著名人の林佳瑩氏(リン・チアユン)も、“もう「チャイニーズタイペイ」の呼称は使わず、「台湾」名でオリンピックに参加し、かつ、世界にも訴えていこう”と言及している。
しかし、中国政府の台湾政策は不動で、あくまでも“ひとつの中国”と見做しており、必要に応じて将来的に武力で統一する可能性も示唆する程である。
現実問題、中国は国際機関や民間事業会社に対して、台湾が中国の一部であると宣言しており、これに抗って台湾を独立国として認めているのは、世界で僅か15ヵ国、それも小国ばかりである。
中国の国務院台湾事務弁公室(1988年設立)は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“「チャイニーズタイペイ」名でのオリンピック参加は、「ひとつの中国」原則の下での取り扱いであり、国際スポーツ機関・連盟も了解してのことだ”とし、“スポーツイベント上の扱いで以て、「台湾独立」を求めることなど全くあり得ない話だ”と一蹴している。
そもそも「チャイニーズタイペイ」という呼称は、1970年代後半に台湾オリンピック委員会とIOC間の妥協で決められた。
IOCは条件として、参加に当たって台湾国旗や国歌は使用しないこととしたが、同様の措置が他の国際スポーツイベントでも踏襲されている。
しかし、今回の東京オリンピックに当たり、開会式で『NHK』が、「チャイニーズタイペイ」というプラカードを掲げて入場した同チームを“台湾”と呼んだことで改めて注目を集めた。
これには、台湾の政治家もまた多くの著名人も称賛した。
ただ、肝心の台湾民衆は少々異なるようで、2018年に実施された住民投票では、「チャイニーズタイペイ」ではなく「台湾」名での参加を認めるようIOCと協議するとの提案が否決されている。
当時の市民は、悪戯に中国を刺激して、台湾をオリンピックから締め出す行動を起こされることを懸念したとみられる。
しかし、与党・民主進歩党の羅致政書記長(ロー・チーチェン、56歳)は、チャイニーズタイペイという呼称の使用は、“力づくで吞まされた受け入れがたい措置だ”と非難の声を上げている。
同日付台湾『フォーカス台湾』(1924年設立の国営台湾中央通信社):「バドミントン決勝で使用された“ホークアイ・チャレンジ(ビデオ判定)”画像ネタに注目」
7月31日に行われた、バドミントン男子ダブルス競技の決勝戦で、台湾チームの打った羽根が中国チームのエリア内に落ちて、台湾チームが勝利した。
しかし、中国チームが“ホークアイ(注後記)・チャレンジ”を要求したため、ホークアイ画像で確認されることになったが、結果は“イン”であって、台湾チームの勝利に変更はなかった。
オリンピックの当該競技で、台湾チームが金メダルを獲得するのは史上初であり、当日夜から、“台湾”、“台湾イン”、“T-aiwan”、更には、“Tに羽根”という画像がSNS上で拡散した。
台湾の人たちにとって、中国側の“チャレンジ”にも拘らず、結果として“台湾が勝利”したことが、現在の台湾の置かれた状況についての不満及び反発を表す格好の材料となったとみられる。
バドミントンチームのスポンサーでもある台湾土地銀行(1946年設立)も8月2日、“T”や “T-aiwan”をイメージしたクレジットカードを作成・発行すべく準備していると発表する程である。
ただ、現実は、台湾チームの表彰式において、掲揚されたのは台湾国旗ではなくオリンピック旗であり、また、国歌演奏は許されず、旗を掲揚する際に使われる台湾の古い歌が使用されている。
この背景は、1981年に台湾オリンピック委員会とIOCが合意した、台湾のオリンピック参加を認めるための条件に基づくものある。
すなわち、中国が当時、台湾が“中華民国”の名の下でオリンピックに参加することを強硬に反対したため、台湾側として止む無く妥協した産物である。
(注)ホークアイ:ソニーが2011年3月に買収した、ホーク・アイ・イノベーションズが開発を進める審判補助システム(ゴールライン・テクノロジー)。球技において、試合中にボールの位置や軌道を分析し、それらをコンピューターグラフィックスで再現することにより、審判が下す判定の補助を行うコンピューター映像処理システム。またボールの位置や軌道の統計を作成し画面に表示する。クリケットの試合やテニスのウィンブルドン選手権等の国際大会で採用されており、他の球技にも応用可能とされる。
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