中国とインド;ヒマラヤ山脈西部の国境紛争はひとまず一時停戦に合意【米・インドメディア】(2020/09/11)
9月4日付GLOBALi「
中国の帝王;インドとの国境紛争で期待に沿えない中国軍部隊に大ナタ」で報じたとおり、中国の帝王と言われる習近平(シー・チンピン)国家主席は、国境紛争でインド軍より優位に立てない中国軍部隊に失望している模様で、この程大ナタを振るうことになった。ただ、米国による中国包囲網構築を恐れる中国も、国境問題で譲れなくとも中国との経済関係破綻までは望んでいないインドとも、これ以上軍事衝突が継続・拡大することは望んでいない模様で、この程両国外相が一時停戦に合意して共同声明を発表した。
9月10日付米
『CNBCニュース』:「中国とインド、国境紛争での一時停戦に合意」
中国とインドは、6月中旬にヒマラヤ山脈西部の国境付近で武力衝突して以来、両軍による睨み合いや小競り合いが続いている。
両国外相が9月10日、モスクワで開催された上海協力機構(SCO、注1後記)に出席した機会を捉えて協議し、国境問題について双方が対話を通じて解決に向けて努力することで合意した。
インド外務省によれば、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相(65歳)及び王毅(ワン・イー、66歳)外交部長(外相に相当)は、“率直”かつ“建設的”に協議したという。...
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9月10日付米
『CNBCニュース』:「中国とインド、国境紛争での一時停戦に合意」
中国とインドは、6月中旬にヒマラヤ山脈西部の国境付近で武力衝突して以来、両軍による睨み合いや小競り合いが続いている。
両国外相が9月10日、モスクワで開催された上海協力機構(SCO、注1後記)に出席した機会を捉えて協議し、国境問題について双方が対話を通じて解決に向けて努力することで合意した。
インド外務省によれば、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相(65歳)及び王毅(ワン・イー、66歳)外交部長(外相に相当)は、“率直”かつ“建設的”に協議したという。
同省によれば、“両外相は、目下の国境付近での武力衝突・睨み合いは双方の利益とならないことを確認した”とし、“中印両国がこれまで合意している実効支配線(注2後記)を尊重し、対話を通じて緊張緩和に向けて努力する”ことを再確認したとする。
中国・インド両軍は、ヒマラヤ山脈西部の国境付近で5月から小競り合いを繰り返し、6月中旬には、45年振りとなる犠牲者を出す武力衝突(棍棒による殴り合い)に発展した。
その後の両軍による小競り合い・睨み合いが続き、9月初めにも、これまでの合意に反して、45年振りの威嚇射撃の事態まで発生していた。
なお、世界最大の政治リスク専門コンサルタント会社のユーラシア・グループ(1998年設立、ニューヨーク本拠)によれば、両国は“1インチたりとも領土が減らされることに全く同意できない”ことから、今後とも両軍による小競り合いや、場合によって局地的な軍事衝突は起こり得るとし、その可能性は60%としている。
何故なら、インドのナレンドラ・モディ首相としては、“インドを守る最強の首相”という評判を落とすことはできず、中国によって実効支配地域からじりじりと後退させられてきていることから、領土問題で如何なる妥協も許されない。
一方、習国家主席も、世界最強の軍事大国となると標榜していることから、中国としても一歩も引きさがることは全く考えられない。
なおまた、ユーラシア・グループの評価によると、外交交渉努力によって両国の領土問題が解決に向かう可能性は25%であるとし、深刻な武力衝突に発展してしまう可能性は15%だとする。
9月11日付インド『ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年、ガンジーによって創刊):「中印両国、更なる信頼度拡充に向けて努力するとの共同声明を発表」
両国外相が合意した共同声明によると、“両国は、目下続いている国境付近での緊張を緩和するため、これまでの両国間の様々な合意事項に則って、双方の信頼度を更に向上させていくことで合意した”とする。
信頼度向上の手段や具体的内容について言及はないが、これまで両国は国境問題に関し、1993年、1996年、2013年にそれぞれ覚書を締結して、紛争鎮静化を図ってきている。
ただ、インド側としては、6月中旬にヒマラヤ山脈西部のガラワン渓谷で発生した武力衝突は、中国軍が上記覚書に反した行動を取ったことに起因すると主張している。
一方で、両国間の国境紛争がくすぶり続けることによって、両国間の貿易や人の交流に支障を来すことは双方の利益にはならない。
特に、今年がインド・中国国交樹立70周年に当たることから、両国間のパートナーシップ強化は、両国それぞれの発展のためにも必要不可欠と考えられる。
(注1)SCO:中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8ヵ国による多国間協力組織、国家連合。「テロリズム、分離主義、過激主義」に対する共同対処の他、経済や文化など幅広い分野での協力強化を図ることを目的として2001年発足(前身の組織は1996年設立)。中国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京。
(注2)実効支配線:1962年の中印国境紛争の後に設定された、インドと中国との支配地域を分ける境界線。
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反中国運動;領有権・人権問題で対峙するアジア諸国のみならず、南米数ヵ国も中国漁船の傍若無人振りに非難の声【米・インドメディア】(2020/08/12)
中国の横暴な香港政策に、多くの国から非難の声が上がっている。そして、以前から領有権争いや民族迫害で対峙しているアジアの複数の国に留まらず、今では中国からの遠洋漁業船の傍若無人振りに辟易している南米数ヵ国も、中国に対する怒りの声を上げ始めている。
8月10日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「インド、ベトナム、チベット等混成グループが首都ワシントンで反中国デモを展開」
中国は、習近平(シー・チンピン)国家主席が、古代から脈々と続いてきた“中華思想”(注後記)を、大国の仲間入りが見えてきた今こそ成就すべきと改めて訴えている。
その大望に基づき、中国が目下諸外国に対して大胆に進めているのは、経済力で従わせるか、武力で脅すか、もしくはその両方を駆使するやり方である。...
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8月10日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「インド、ベトナム、チベット等混成グループが首都ワシントンで反中国デモを展開」
中国は、習近平(シー・チンピン)国家主席が、古代から脈々と続いてきた“中華思想”(注後記)を、大国の仲間入りが見えてきた今こそ成就すべきと改めて訴えている。
その大望に基づき、中国が目下諸外国に対して大胆に進めているのは、経済力で従わせるか、武力で脅すか、もしくはその両方を駆使するやり方である。
顕著な例が、インドとの国境紛争であり、南シナ海における領有権問題、東シナ海における尖閣諸島帰属問題等に現れている領土拡張政策であり、また、チベット族、ウィグル族等少数民族への弾圧政策である。
これらの傍若無人な政策に不満に感じているのは、当該国のみならず、米国に永住する各国出身のコミュニティも同様で、この程、これらの混成グループが首都ワシントンで、反中国を訴えてデモ行進を行った。
このデモを主導したインド人活動家のアダパ・プラサド氏は、中国政府幹部は近隣国への圧力を益々強めているとして、インド国境での一方的軍事行動に留まらず、“ブータンを脅かし、タジキスタン山岳部の領有を主張し、更には、友好関係にあるロシアに対しても、ウラジオストックは元々中国に帰属するとまで言い出す程である”と非難した。
ベトナム人活動家のマット・トゥルオン氏はインドメディア『ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年創刊)のインタビューに答えて、“中国はベトナムと同じ共産主義とされているが、実態は異なり、南シナ海のパラセル(西沙)諸島におけるベトナム主権を脅かし、ベトナム漁船を何隻も沈める乱暴を働いている”と糾弾した。
また、インド系米国人活動家のプニート・アールワリア氏は『プレストラスト・オブ・インディア』(PTI、1949年設立、インド唯一の全国通信社)に対して、“中国共産党はウィグル族からイスラム教を力づくで奪い、更に、香港の自由をも剥奪しようとしている”と訴えた。
東トルキスタン(清朝下のトルキスタン、現新疆ウィグル自治区)における中国政府の宗教弾圧に伴う人権蹂躙はすさまじく、米政府の推測では100~300万人のウィグル族が強制収容所において、改宗教育を受けさせられているとする。
同収容所から逃げ出した生存者の証言によると、所内での拷問、強姦は容赦なく行われ、ひどいときには生きたままで臓器摘出される被害者もいるという。
また、同収容所を脱走して、後に再拘束された女性は、自身の意思に関わりなく強制避妊手術を施されたという。
一方、アジア以外の地域における中国の一方的活動は遠慮のないもので、南米のエクアドル、チリ、アルゼンチンは、自国領海内に違法に侵入して操業を行う中国漁船に対して、一斉に反発している。
例えば、エクアドル領で国連教育科学文化機関(UNESCO、1946年設立)から1978年に世界遺産(自然遺産)として認定されているガラパゴス諸島近海に、数百隻もの中国船が押し寄せて勝手に漁を行っており、同遺産の維持活動の脅威になっているとする。
今回の反中国運動デモでも、この点もやり玉に挙げられている。
同日付インド『PTI』:「インド系米国人グループ、中国によるインド領土への侵入やウィグル族の人権蹂躙に抗議」
米国在住のインド系米国人らのグループが首都ワシントンに集結し、中国によるインド領土への侵入やウィグル族ら少数民族の人権蹂躙に抗議する集会を開いた。
8月9日に実施された抗議集会には、マスクを着用しソーシャルディスタンシングを保った参加者が、中国共産党及び同国主導者による傍若無人な振る舞いを糾弾する横断幕を掲げて抗議した。
抗議集会に参加した、インド系米国人活動家のアールワリア氏(ロビー活動企業リビングストン・グループ所属のコンサルタント)は、“中国によるウィグル族への宗教弾圧や、香港の民主主義剥奪は許されない”と訴えた。
同氏は、今秋の選挙でバージニア州副知事に立候補している共和党員で、ドナルド・トランプ大統領による対中国強硬政策を支持している。
(注)中華思想:中華の天子が天下の中心であり、その文化・思想が神聖なものであると自負する考え方で、漢民族が古くから持った自民族中心主義の思想。自らを夏、華夏、中国と美称し、王朝の庇護下とは異なる辺境の異民族を文化程度の低い夷狄であるとして卑しむことから華夷思想(かいしそう)とも称す。中国語では「華夷秩序、また中国中心主義」とも呼ばれる。
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