インド首都圏、今冬も大気汚染深刻化で健康の人にも深刻な健康被害の恐れ【欧米・インドメディア】(2022/11/04)
インドは、2023年には総人口が14億3千万人台となり、中国を抜いて世界最多となる見込みである。同国では、経済成長に合わせて大気汚染も中国を上回る程深刻化していて、昨年11月には首都圏の学校・公共施設等が1週間閉鎖される事態となっていた。そしてこの程、昨年を上回る程再び大気汚染が深刻化となり、健康な人でも深刻な健康被害を被る恐れが出てきている。
11月3日付欧米
『ロイター通信』は、「デリー首都圏、“人道に対する罪”となる程大気汚染深刻化で、学校閉鎖を求める声が拡大」と題して、インド首都圏の大気汚染が今年も深刻化しており、健康な人も深刻な健康被害を被る恐れがあり、学校閉鎖等至急対策を取るべきだとの声が高まっていると報じた。
2千万人超の人口を抱えるデリー首都圏では、大気汚染が深刻化しており、11月3日の大気質指標(AQI、注後記)はほとんど全ての観測地点で“深刻”かつ“危険”レベルに達しており、学校閉鎖等緊急対応を求める声が高まっている。...
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11月3日付欧米
『ロイター通信』は、「デリー首都圏、“人道に対する罪”となる程大気汚染深刻化で、学校閉鎖を求める声が拡大」と題して、インド首都圏の大気汚染が今年も深刻化しており、健康な人も深刻な健康被害を被る恐れがあり、学校閉鎖等至急対策を取るべきだとの声が高まっていると報じた。
2千万人超の人口を抱えるデリー首都圏では、大気汚染が深刻化しており、11月3日の大気質指標(AQI、注後記)はほとんど全ての観測地点で“深刻”かつ“危険”レベルに達しており、学校閉鎖等緊急対応を求める声が高まっている。
中央公害防止委員会(CPCB、1974年設立)発表によると、当日のAQIは450超となったという。
当局によれば、AQIが400超となると、健康な人も深刻な健康被害を被る恐れがあるとする。
また、デリー首都圏公害防止局発表によると、首都圏の窪みとなっている地区のAQIが800超となったという。
(編注;世界保健機関の基準では、AQI 201~300は「極めて健康に有害」、301~500は「危険」とされている。)
実業家・著者でありコラムニストのスヘル・セス氏(59歳)は、“デリー首都圏で起こっている大気汚染は、もはや「人道に対する罪」以外の何ものでもない”とした上で、“政策の大失敗だ”とツイートしている。
世界で最も大気汚染が深刻なデリー首都圏では、毎冬、工場のばい煙、車の排気ガス、また、来年の収穫のために行われる焼き畑で生じる煙のため、AQIが深刻化レベルとなっている。
そこで、保護者や環境保護活動家らは一斉に、学校閉鎖が必須だとSNS上で声を上げている。
環境活動家のビムレンデユ・ジャー氏は、“特に子供たちにAQI 500超の空気を吸わせることは全く異常なことだ”とし、“デリー首都特別区政府の全閣僚は、可及的速やかに学校閉鎖措置を講ずるべきだ”とツイッター上で訴えた。
デリー首都圏のアルビンド・ケジリワル首相(52歳、2013年就任)が率いるアーム・アードミ党(2012年設立、普通の人々の意味のヒンディー語)が治める首都圏北部のパンジャーブ州で焼き畑耕作が特にまん延しているが、同首相は、“デリー首都圏もパンジャーブ州も、大気汚染対策に懸命に取り組んでいる”とツイートしている。
首都圏では今週、ほとんどの建設工事等が休止となり、また、住民に対しては、通勤に使う車をシェアしたり、各家庭での石炭や薪の使用を減らすよう訴えている。
11月4日付インド『ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年創刊の英字紙)は、「デリー首都圏環境相、大気汚染対策のため緊急会議招集」として、首都圏政府の対応について詳報している。
デリー首都圏のゴパル・ライ環境相(47歳、2015年就任)は11月4日、大気汚染が緊急非常事態ステージⅣとなっていることから、緊急対策会議を招集して討議する旨表明した。
前日にはCPCBが緊急声明を出し、首都圏へのディーゼル・トラックや旧型ディーゼル車の進入を禁止する等、抜本的対策を取るよう訴えていた。
そこで首都圏政府としては、学校の閉鎖や、民間企業のリモートワーク実施等の対策を検討している。
当該会議招集前、ケジリワル首相は既に、小学校を暫く休校とする旨発令しており、また、首都圏に進入する車について、ナンバープレートの奇数偶数による隔日制限措置とすることも検討している。
なお、当局発表のデータによると、11月3日の24時間平均のAQIは450で、11月4日午前7時のAQIが453と依然非常に高い数値となっている。
また、首都圏の大気汚染対策委員会(CAQM、2021年設立)は、パンジャーブ州での焼き畑耕作が週末に広がるので、AQIが更に悪化する恐れがあると警告している。
(注)AQI:いくつかの国や地域で採用されている大気汚染の程度を示す指標。空気中の粒子状物質(PM2.5)や二酸化硫黄などの汚染物質の濃度を測定し、空気の汚染度を指数化したもの。環境を担当する行政機関が市民に対して発表する。観測値だけではなく予測値も発表される地域がある。
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インド;独自の全方位外交よろしく、訪印する英国外相、ロシア外相と立て続けに会談【米・インドメディア】(2022/04/01)
インドは、冷戦時代から「非同盟主義」を標榜し、テーマ毎に組む相手を変える独自の全方位外交を推進してきている。そして、今回のウクライナ戦争に伴う対ロシア制裁にも加わらず、西側諸国、ロシアそれぞれと等距離の関係を保つ、独自の全方位外交を貫いており、今週も、訪印する英国外相及びロシア外相と立て続けに会談を行っている。
4月1日付米
『AP通信』は、「インド、ウクライナ危機の最中、英国外相及びロシア外相と立て続けに会談」と題して、インド独自の全方位外交を展開していると報じている。
インドのナレンドラ・モディ首相(71歳、2014年就任)は、ウクライナ戦争及びそれに伴う人道危機が悪化する状況にも拘らず、西側諸国及びロシアと等距離外交を貫こうとしている。
実際に、インドは今週、訪印する英国外相とロシア外相と立て続けに会談する。...
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4月1日付米
『AP通信』は、「インド、ウクライナ危機の最中、英国外相及びロシア外相と立て続けに会談」と題して、インド独自の全方位外交を展開していると報じている。
インドのナレンドラ・モディ首相(71歳、2014年就任)は、ウクライナ戦争及びそれに伴う人道危機が悪化する状況にも拘らず、西側諸国及びロシアと等距離外交を貫こうとしている。
実際に、インドは今週、訪印する英国外相とロシア外相と立て続けに会談する。
まず、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相(67歳、2019年就任)は3月31日、英国のリズ・トラス外相(46歳、2021年就任)と会談した。
トラス外相はインド側に対して、英印両国間の国防協力体制強化について協議する一方、インドによる対ロシア戦略的依存態勢の見直しを迫った。
何故なら西側諸国は、インドが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻についての非難決議に消極的であることに失望しているからである。
ただ、インドとしては、長く中国側と国境問題で揉めており、ロシア製軍事装備品の確保に大いに依存してきているという背景がある。
しかし、トラス外相は、もしウラジーミル・プーチン大統領(69歳、2012年就任)のウクライナ侵攻を見逃せば、“今後、似たような行動を取る侵略者に対して、世界は何も対応することができなくなる恐れがある”と訴えた。
更に同外相は、ロシアによる制裁逃れのために金や石油・天然ガス取引が使われないよう、厳しくチェックしていく必要があることと、来週開催される主要7ヵ国会議(G-7)において、ロシアへのエネルギー依存率削減のための具体的段取りが協議されることについてインド側に伝えた。
これに先立つ3月30日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官(59歳、2021年就任)がジャイシャンカル外相と電話会談を行い、ウクライナにおける人道危機の悪化について状況説明を行っている。
一方、ジャイシャンカル外相は4月1日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(72歳、2004年就任)と会談する予定である。
ラブロフ外相は、ウクライナ問題に伴って、露印間の軍事及び商取引関係に悪影響が及ばないよう、インド側を説得する意向とみられる。
なお、インドの全方位外交は顕著で、上記の立て続け会談の他にも、モディ首相が3月19日に訪印した岸田文雄首相(64歳、2021年就任)と会談したのみならず、3月25日に訪印した中国の王毅外交部長(ワン・イー、68歳、2013年就任)とも会談し、それぞれ日印、中印関係強化について協議している。
一方、同日付インド『ヒンダスタン・タイムズ』紙(1924年発刊の英字紙)は、「ジャイシャンカル外相、インドによるロシア産原油購入批判に対して即刻反論」と題して、英国外相が対ロシア制裁強化を訴えたのに対して、ロシア産原油・天然ガスの最大の買い手は欧州であり、インドのロシア産原油依存度は僅か1%弱だと即座に反論したと報じている。
訪印中のトラス英国外相は3月31日、ジャイシャンカル外相に対して、ウクライナ軍事侵攻を続けるロシアに対して、制裁強化への協力を訴えた。
しかし、ジャイシャンカル外相は、直近の貿易資料を踏まえて、ロシア産原油・天然ガスの最大の買い手は欧州であり、3月の実績に至っては、2月よりも15%も購入量を増やしていると指摘した。
同外相は更に、インドの原油依存率は概ね中東であり、米国産も8%、一方、ロシア産は僅か1%にも満たないとも強調した。
その上で同外相は、“原油価格高騰で、各国はより安価な供給先を求めるのは必然であり、インドとしても、安価なロシア産を増やす可能性はあり得る”とし、“ただ、今後2、3ヵ月後の状況がどうなっているか結果を待ちたいが、依然インドはロシア産原油購入国リストのトップ10にも入らないはずだ”とも言及した。
なお、ジャイシャンカル外相がこのような厳しい反論を行う直前、米国のダリープ・シング国家安全保障問題副顧問(世界経済担当、46歳、2021年就任)が今週初めに訪印して、インドがロシア産原油購入量を急激に増量させないように望む、と表明していた。
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