インド、首都圏で女性の公共交通機関利用を無料化へ(2019/06/06)
インドのデリー首都圏政府は3日、首都の治安向上の取り組みの一環として、約85万人の女性の公共交通機関利用を無料化する方針を発表した。治安や環境の改善につながるとしているが、その効果や実現性を疑問視する専門家なども多く、論議を呼んでいる。
『AFP通信』、
『BBC』や地元紙
『タイムズ・オブ・インディア』などのメディアが報じた公共交通機関無料化の措置は、約85万人の女性を対象とする。実施のためにインド中央政府の承認が必要となる可能性があり、施行は2~3カ月後の見通しだという。
デリーでは2012年、女子学生がバスの中で集団による性的暴行を受けて殺害される事件が発生し、激しい抗議デモが起きた。それ以来同市は、女性の安全について悪名高い都市となっている。...
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『AFP通信』、
『BBC』や地元紙
『タイムズ・オブ・インディア』などのメディアが報じた公共交通機関無料化の措置は、約85万人の女性を対象とする。実施のためにインド中央政府の承認が必要となる可能性があり、施行は2~3カ月後の見通しだという。
デリーでは2012年、女子学生がバスの中で集団による性的暴行を受けて殺害される事件が発生し、激しい抗議デモが起きた。それ以来同市は、女性の安全について悪名高い都市となっている。2000万人近くの人口を抱える同市は、国連によると、世界で最も環境汚染が進んだ都市の1つだ。また、デリーの公共交通機関は老朽化している上、ここ数カ月の間、一部の地下鉄の運賃が2倍に上昇し、多くの人が利用できない状況となっていた。
デリー首都圏のアルビンド・ケジリワル首相は、女性の公共交通機関の無料化を実現するためには、毎年約1億1500万ドル(約124億円)が必要となるが、これによって治安が向上し、交通機関による環境汚染の状況も改善すると説明した。
ケジリワル首相は、「安全な移動の経験をしてもらうため、女性は無料で交通機関に乗ることができる。」と記者会見で述べた。首相はまた、首都圏政府は今年、15万台の防犯カメラを市内各地に設置する計画であることも明らかにした。
ケジリワル氏は、少数政党の庶民党(アーム・アードミ党、AAP)の党首であり、今回の無料化の政策は、来年1月に実施が予定されている州議会選挙対策であると批判する評論家らもいる。ソーシャルメディア上でも、効果や実現性をめぐり賛否両論がある。
AAPは2015年の州議会選で、飲料水の無料化、電気代の補助、貧困層のための医療や教育制度の提供などを政策に掲げて大勝した。2012年の女子学生の暴行殺人事件以降は、女性の安全の向上を約束している。しかし、今年4~5月に実施されたインド総選挙では、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)がデリー地区などで圧勝し、AAPは躍進を遂げることができなかった。同党は、次の州議会選でも、BJPの攻勢に苦戦することが予想されている。
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インド下院、刑事責任を問われた当選者の割合が40%超に:市民団体調査(2019/05/28)
インドで選挙改革を推進する市民団体の民主改革協会(ADR)が25日に公表した調査結果によると、先日行われた同国下院選の当選者のうち、刑事責任を問われたことのある人の割合が43%に達し、殺人などの重大犯罪の場合もあることが判明した。
『AFP通信』や地元メディア
『タイムズ・オブ・インディア』などが、27日までにADRの調査について報じた。インドの政治に説明責任を求める同団体の取り組みの成果もあって、同国の選挙管理委員会は今年、立候補者らに対し、選挙期間中に自らの犯罪歴の詳細を公開することを義務付けた。同団体は、犯罪歴のある議員の数は増加しており、2004年に調査を開始して以来最高となったと指摘している。
ADRが23日に当選が確定した543人中539人の経歴を調査したところ、刑事手続を受けたことのある当選者は少なくとも233人に上った。...
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『AFP通信』や地元メディア
『タイムズ・オブ・インディア』などが、27日までにADRの調査について報じた。インドの政治に説明責任を求める同団体の取り組みの成果もあって、同国の選挙管理委員会は今年、立候補者らに対し、選挙期間中に自らの犯罪歴の詳細を公開することを義務付けた。同団体は、犯罪歴のある議員の数は増加しており、2004年に調査を開始して以来最高となったと指摘している。
ADRが23日に当選が確定した543人中539人の経歴を調査したところ、刑事手続を受けたことのある当選者は少なくとも233人に上った。2014年の調査時の185人から26%増加しており、ADRは「民主主義に害をもたらす不穏な傾向」があると分析した。
今回の選挙では、ナレンドラ・モディ首相率いる政権与党・人民党が大勝を果たしたが、同党の当選者303人のうち116人が刑事手続を受け、1人はテロ事件に関与した責任を問われている。最大野党・国民会議派の当選者では、52人中29人が刑事責任を追及されており、ケララ州イドゥッキ県のある議員は、殺人や強盗など204件もの罪に問われた。
ADRによると、重大な犯罪で刑事手続を受けている議員数は、過去10年で2倍以上に増加しているという。今回の調査では、重大犯罪として、殺人が11件、計画性のない殺人や過失致死が30件、強制性交等が3件あった。
インドの法律では、犯罪行為の内容によって一部例外はあるが、議員が在任中に有罪判決を受け、2年以上の禁錮刑に処せられた場合には、その後の選挙に立候補することができない。しかし、初めての立候補については、それまでの有罪判決が問題になることはない。議会の前会期中に185人の議員が刑事手続を受けていたが、最終的に有罪となった議員はなく、その多くが今回の選挙で再当選を果たしている。
人民党から立候補し、今回初当選したある議員は、2008年に発生し6人が殺害されたテロ事件で刑事手続を受けているが、容疑を否認しており、かつての国民会議派政権によって無実の罪を負わされたと主張している。インドの政党は、自党候補者の犯罪歴について、政争の犠牲者であるとして問題視しない場合も多いという。
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