ASEANは加盟国フィリピンの味方? 中比間の直近の緊張に懸念表明【欧米メディア】(2023/12/31)
12月31日付GLOBALi「
中国、自国の傍若無人ぶりを棚に上げてフィリピンによる南シナ海岩礁上への恒久施設建設は国際法違反と糾弾」で報じたとおり、中国は、フィリピンが実効支配する南シナ海南沙諸島海域のセカンド・トーマス礁(注後記)上に恒久施設を建設するのは国際法違反だとして糾弾した。この事態の他、中比間では比漁船・中国海警艦の衝突事故等、一触即発となりかねない程緊張が高まっていることから、東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)加盟国外相がこの程、地域の平和と安定を損ないかねないとして当事国の自重と対話を呼びかけている。
12月31日付
『ロイター通信』は、ASEAN加盟国外相はこの程、南シナ海における中比間の緊張事態を懸念するとの声明を発表したと報じている。
ASEAN加盟国外相は12月30日、“直近の南シナ海における緊張関係について、地域の平和と安定を脅かすことになりかねないので、関係国間の平和的対話を強く求める”との声明を発表した。
中国とフィリピンは、ここ数ヵ月間、同海域における海上衝突等の事態に関わりお互いを非難し合っている。...
全部読む
12月31日付
『ロイター通信』は、ASEAN加盟国外相はこの程、南シナ海における中比間の緊張事態を懸念するとの声明を発表したと報じている。
ASEAN加盟国外相は12月30日、“直近の南シナ海における緊張関係について、地域の平和と安定を脅かすことになりかねないので、関係国間の平和的対話を強く求める”との声明を発表した。
中国とフィリピンは、ここ数ヵ月間、同海域における海上衝突等の事態に関わりお互いを非難し合っている。
かかる背景の下、フィリピン政府から“外交努力が悪い方に転じている”との表明を受けて、この度ASEAN外相声明が出されることになった。
しかし、中国はこのような動きに対して、“かかる非難は真に誇大な虚偽宣言である”とした上で、“フィリピンの度重なる挑発と嫌がらせについて、これ以上見て見ぬ振りをすることはしない”と反発している。
ASEANと中国は、2002年に調印した「南シナ海における締約国の行動に関する宣言」に基づいて、「行動規範」を制定すべく交渉を進めるとしているが、遅々として進展していない。
これには、国際法に準拠した法的拘束力を持たせるとの考えに中国が乗り気でないことが挙げられる。
何故なら、中国は南シナ海のほとんどを自国領土とする主張を決して曲げようとしないからである。
中国が主張しているのは「九段線」と呼ばれ、本土から実に1,500キロメートル(900マイル)もの広い範囲を自国領土としており、これはブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン・ベトナム各国の排他的経済水域(EEZ)に食い込んでいることから、当該国との間で領土問題となってきている。
(注)セカンド・トーマス礁:フィリピン南端パラワン島の約194キロメートル西方にある、南沙諸島海域内の岩礁。1992年に中国が建造物を造成したが、1999年にフィリピンが派兵して、以降実効支配。中国軍が軍事拠点化しているミスチーフ礁から僅か約26キロメートルにある。なお、常設仲裁裁判所(1901年設立、オランダ・ハーグ本拠)は2016年7月、中国側が主張する九段線(南シナ海のほとんどを自国領土とする境界線)は国際法上認められないとした上で、セカンド・トーマス礁、ミスチーフ礁等はフィリピンのEEZ内であり、かつその大陸棚の一部であるとの裁定を下している。
閉じる
中国、自国の傍若無人ぶりを棚に上げてフィリピンによる南シナ海岩礁上への恒久施設建設は国際法違反と糾弾【フィリピン・中国メディア】(2023/12/31)
中国はこれまで、2016年の常設仲裁裁判所(PCA、1901年設立)裁定(注1後記)を無視して、南シナ海岩礁に勝手に人工島を建設し、軍事拠点化を進めてきている。ところが、この程フィリピンが実効支配する同海域のセカンド・トーマス礁(注2後記)上に恒久施設を建設するのは国際法違反だとして、自国の傍若無人ぶりを棚に上げて堂々と糾弾している。
12月30日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙(1900年創刊の英字紙)、中国
『チャイナデイリィ』紙(1981年創刊の英字紙)は、中国が、フィリピンによる南シナ海内のセカンド・トーマス礁に恒久施設を建設するとする計画は国際法に違反すると糾弾したと報じている。
中国外交部(省に相当)の毛寧報道官(マオ・ニン、51歳、2022年就任)は12月29日、定例記者会見の席上、フィリピンが一方的にセカンド・トーマス礁(フィリピン名:アユンジンショウル、中国名:仁愛礁レナイチャオ)上に恒久施設を建設しようとしているが、明らかに国際法違反だと非難する声明を発表した。...
全部読む
12月30日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙(1900年創刊の英字紙)、中国
『チャイナデイリィ』紙(1981年創刊の英字紙)は、中国が、フィリピンによる南シナ海内のセカンド・トーマス礁に恒久施設を建設するとする計画は国際法に違反すると糾弾したと報じている。
中国外交部(省に相当)の毛寧報道官(マオ・ニン、51歳、2022年就任)は12月29日、定例記者会見の席上、フィリピンが一方的にセカンド・トーマス礁(フィリピン名:アユンジンショウル、中国名:仁愛礁レナイチャオ)上に恒久施設を建設しようとしているが、明らかに国際法違反だと非難する声明を発表した。
伝えられている報告によると、フィリピン政府がこの程、同礁上に漁船の避難施設や灯台もしくは海洋研究所を建設する計画を実行しようとしているという。
同礁については、2016年7月のPCA裁定によって、フィリピンが主張する、同国の排他的経済水域(EEZ)内であり、かつ大陸棚の一部であることが認定されている。
しかし、同報道官は、フィリピンの主張は違法であり、また当該PCA裁定は全く理不尽だと糾弾した。
同報道官は、“仁愛礁は中国の主権内の南沙諸島海域にある”とし、“この事実は長い歴史の中で確立されたものであり、かつ国連憲章も含めての国際法に合致したものである”と強調した。
更に同報道官は、“中国と東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)間で2002年に調印された「南シナ海における締約国の行動に関する宣言」によって、無人でかつ建造物もない岩礁の扱いについて現状を維持すべきだと認められており、同礁はこの範疇に入る”とも主張した。
その上で同報道官は、“フィリピンがやろうとしていることは、中国の主権を脅かすばかりか、先に述べた国際法や締約にも違反するものだ”とした上で、“あくまで断行するというのであれば、それ相応の報復措置を取ることになる”とも脅している。
(注1)PCA裁定:フィリピン政府の訴えに応えて出した裁定で、中国側が主張する九段線(南シナ海のほとんどを自国領土とする境界線)は国際法上認められないとした上で、フィリピンが実効支配するセカンド・トーマス礁や中国が実効支配するミスチーフ礁等はフィリピンのEEZ内であり、かつその大陸棚を形成していると判断。
(注2)セカンド・トーマス礁:フィリピン南端パラワン島の約194キロメートル西方にある、南沙諸島海域の岩礁。1992年に中国が建造物を造成したが、1999年にフィリピンが派兵して、以降実効支配。中国軍が軍事拠点化しているミスチーフ礁から僅か約26キロメートルにある。
閉じる
その他の最新記事