先週報じたとおり、国際仲裁裁判所(PCA)裁定直後に開かれるアジア欧州会合(ASEM)において、中国は、南シナ海問題を同会議での議題にしないよう参加各国に釘を刺しているが、勝訴したフィリピンはもとより、米国とともに強くPCA支持を打ち出していた安倍首相も、ASEMサミットにおいて、当事者がPCA裁定を尊重するよう訴えた。そして、成果としての同サミット共同声明については、“南シナ海”という固有名詞は言及されず、一方、“国連海洋法条約(UNCLOS)に従った紛争解決”との表現は盛り込まれることとなり、双方痛み分けという結果となっている(日本側及び中国側とも、自国の言い分の方が評価されたと、それぞれ好いとこ取りをしているが)。
7月16日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用):「南シナ海問題の不一致でASEMサミットに影」
「・7月16日に閉幕したASEMサミット(モンゴルのウランバートルで開催)の共同声明に関し、アジア・欧州参加国間で外交上の問題から意見が食い違ったため、南シナ海問題という直接的表現挿入は見送り。
・アジア側においては、中国がPCA裁定を不受諾と公表している上、同サミットで議題としないよう強く求めた経緯。...
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7月16日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用):「南シナ海問題の不一致でASEMサミットに影」
「・7月16日に閉幕したASEMサミット(モンゴルのウランバートルで開催)の共同声明に関し、アジア・欧州参加国間で外交上の問題から意見が食い違ったため、南シナ海問題という直接的表現挿入は見送り。
・アジア側においては、中国がPCA裁定を不受諾と公表している上、同サミットで議題としないよう強く求めた経緯。
・一方、欧州側においても、英国・フランス・ドイツは、大国として国際法を遵守するよう中国に強く求めたのに対して、中国からの経済支援頼みのハンガリーやギリシャが、中国を名指しで批判することに抵抗。
・ロシアも中国支持。
・最終的には、同サミット参加国は、海洋の安全保障、協調、航行・飛行の自由、及び威圧のための武力不行使という基本理念を促進し、かつ、紛争は国連憲章及びUNCLOSに基づいて解決することに同意するとの表現。」
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「直近の痛ま
しい事件続発の最中、ASEMサミットは協力体制強化を宣言」
「・7月14日のニースでのテロ事件、また、7月15日のトルコでのクーデター発生を受けて、ASEMサミットでは7月16日、世界の安全保障確保のため協力体制を強化することで合意と共同声明。
・南シナ海問題については、中国の強い抵抗に遭って、声明に織り込まれなくなったが、海洋紛争は国際法に準拠して解決することを再確認したとの表現を挿入。
・ただ、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長は記者会見で、ASEMサミットを契機に、南シナ海問題が解決の方向に進むことを望むとコメント。」
7月17日付フィリピン
『ザ・デイリィ・トリビューン』:「日本とEU、中国へのプレッ
シャーを強める」
「・ASEMサミットの最終段階で、日本及びEUは、中国がPCA裁定を遵守するよう強く要求。
・しかし、中国側の強い抵抗、更には、EU内で同じく海洋紛争を抱えるスロベニアとクロアチアの反対もあって、共同声明では南シナ海問題に言及することはせず、ただ、海洋紛争はUNCLOSに準拠して解決することを再確認するとの表現に留まる。」
一方、同日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『新華社通信』記事引用):「ASEMサミット
で、李首相の南シナ海問題戦略が奏功」
「・ASEMサミットを終えた李克強(リー・コーチアン)首相は7月16日、南シナ海問題に関わる中国の立場につき理解を得られたとコメント。
・中国は当初、南シナ海問題はASEMサミットの議題にそぐわないと主張していたが、数ヵ国が緊張を高める目的で無理にテーブルに乗せてきたため、李首相が中国の正当性をるる説明。
・その結果、同サミットの共同声明には、南シナ海問題について何ら言及されず。」
自国のメディア含めて、中国の都合を最優先して事を運ぶ態度には、本当に辟易させら
れる。この調子で、9月4~5日に杭州市(浙江省)で開催される主要20ヵ国首脳会議
(G20サミット)も押し通そうというのであろうか。札束で頬を打たれ、武力で威圧さ
れている中小国が、どこまで中国に付いていくのか見ものである。
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