ロシア/サハリン1石油・天然ガスプロジェクト、対ロシア制裁一環で欧州海上保険会社が付保拒否で立ち往生【欧米・ロシアメディア】(2022/10/19)
ロシア政府は10月14日、欧米による対ロシア制裁への報復の一環で、サハリン1プロジェクト(注後記)の新たな運営会社を立ち上げ、既存パートナーに同社事業への出資を要求した。日本・インド側とも、これに呼応する意向の模様であるが、石油メジャーのエクソンモービルは、これを拒否しただけでなく、欧州連合(EU)による欧州海上保険会社の付保の禁止措置を支持し、同プロジェクトのロシア地元タンカー輸送会社の付保も拒絶した。この結果、同プロジェクト産原油の輸送タンカーが運送業務に当たれず、今年5月以来全く輸出できない状態となっている。
10月17日付欧米
『ロイター通信』は、「エクソンモービル、サハリン1産原油のロシア保険会社の付保拒絶で輸出ストップ」と題して、ロシア政府が欧米による対ロシア制裁報復のためにサハリン1プロジェクトの権益を一方的に新運営会社に移転してしまったが、肝心の産出原油を輸送するタンカーに関わる海上保険付保について、エクソンモービルが拒絶しているため、全く輸出できない状態となっていると報じた。
エクソンモービルが主体となって運営されていたサハリン1プロジェクトが、今年5月以降、原油輸送が滞り、生産が激減した状態になっている。...
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10月17日付欧米
『ロイター通信』は、「エクソンモービル、サハリン1産原油のロシア保険会社の付保拒絶で輸出ストップ」と題して、ロシア政府が欧米による対ロシア制裁報復のためにサハリン1プロジェクトの権益を一方的に新運営会社に移転してしまったが、肝心の産出原油を輸送するタンカーに関わる海上保険付保について、エクソンモービルが拒絶しているため、全く輸出できない状態となっていると報じた。
エクソンモービルが主体となって運営されていたサハリン1プロジェクトが、今年5月以降、原油輸送が滞り、生産が激減した状態になっている。
理由は、EUが対ロシア制裁の一環で、欧州海上保険会社に付保行為を禁止したことを受けて、エクソンモービル自身が、ロシア側による地元タンカー輸送会社ソブコムフロット(1995年設立のロシア最大船社)への海上保険付保を拒絶したため、原油のタンカー輸送ができなくなっているからである。
同プロジェクト関係者によると、“エクソンモービルがソブコムフロットのタンカー輸送を拒んでいる”とし、“同社が、ソブコムフロットによるロシア地元保険会社への海上保険付保を認めていないことから、インド石油精製所向けのタンカーが出航できない状況になっている”という。
同プロジェクト参画のロスネフチ(1993年設立のロシア最大国営石油会社)は、エクソンモービルの非協力によって、今年5月以降原油生産が全くできないとして同社を非難している。
ロシアの独立系メディア『コメルサント』紙(1990年発刊)が10月17日、エクソンモービルがソブコムフロット社タンカー使用を拒絶しているため、サハリン1プロジェクトの原油生産がほとんど停止に追い込まれていると最初に報じている。
同プロジェクトは、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まった2月24日以前には、日産22万バレル(約3万5千キロリットル)であったが、現在は1万バレル(約1,600キロリットル)まで急減している。
なお、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)は今月初め、サハリン1プロジェクトを新運営会社(ロスネフチ子会社)に委ねる旨の大統領令を出し、現権益保有の外国企業に対して新会社の株式を取得するかどうか1ヵ月以内に回答するよう求めている。
一方、エクソンモービルは今年3月に同プロジェクトからの撤退を発表しているが、8月時点では、保有権益30%を“別の第三者”に移管する手続きを進めていると言及するのみで、具体的な譲渡先等は明らかにしていなかった。
同日付ロシア『タス通信』は、「エクソンモービル、サハリン1の新会社移管を受けてロシアから完全撤退」と報じている。
エクソンモービルの広報担当は10月17日、『タス通信』のインタビューに答えて、サハリン1の運営が新たに設立されたロシア企業に移管されたことを受けて、同プロジェクトから完全撤退したとコメントした。
同広報担当は、“ロシア側は2つの大統領令によって、当社のサハリン1プロジェクトにおける権益を一方的に取り消した”とした上で、“かかることから、当社は同プロジェクトから完全撤退した”と言及している。
(注)サハリン1:サハリン州北東岸の石油・天然ガス開発プロジェクト。2006年に輸送パイプライン等が完工し操業開始。権益は、エクソンモービル30%、ロスネフチ20%、サハリン石油開発協力会社(石油資源開発・伊藤忠・丸紅の合弁)30%、インド石油公社20%。2022年3月、エクソンモービルが撤退発表。
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ロシア、モスクワ市が地下鉄での顔認証決済を開始(2021/10/18)
モスクワの地下鉄では15日から、240以上の駅で顔認識技術を使った決済システムを開始した。この種のシステムは世界で初めてだという。新しい決済方法は、コロナ対策という観点から政府に支持されているが、悪用されるのではないかという懸念の声も上がっている。
米
『USニューズ&ワールド・レポート』誌によると、人口1270万人のロシアの首都モスクワには、世界最大級のビデオ監視システムを持っている。顔認識技術を使って新型コロナの自己隔離を監視するほか、政治集会に参加したデモ参加者からは、警察がこの技術を使って予防的に逮捕や拘留を行っているとの声も聞かれている。
モスクワ市では、カメラ付きの改札口で顔認証システム「Face Pay」を利用して、通勤者に料金を支払うことができるようになった。...
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米
『USニューズ&ワールド・レポート』誌によると、人口1270万人のロシアの首都モスクワには、世界最大級のビデオ監視システムを持っている。顔認識技術を使って新型コロナの自己隔離を監視するほか、政治集会に参加したデモ参加者からは、警察がこの技術を使って予防的に逮捕や拘留を行っているとの声も聞かれている。
モスクワ市では、カメラ付きの改札口で顔認証システム「Face Pay」を利用して、通勤者に料金を支払うことができるようになった。モスクワ市の交通部門の責任者であるマキシム・リクストフ氏は「モスクワは、このような支払方法がこの規模で運用されている世界で最初の都市である」と声明で述べている。リクストフ氏によると、Face Payの利用は任意であり、他の支払い方法も引き続き利用できるという。
Face Payを利用する前に、通勤者はモスクワ地下鉄のアプリを通じて顔写真を提出し、交通カードや銀行カードとリンクさせる必要がある。登録した利用者は、指定された改札口に設置されたカメラを見るだけで地下鉄を利用することができる。
デジタルの権利と情報の自由を守ることを目的とした団体「Roskomsvoboda」は、Face Payが監視目的で使用される可能性があると警告している。モスクワ市長室は、ロシアでサッカーワールドカップが開催された2018年に、指名手配犯を発見するための顔認証システムを地下鉄で展開すると発表していた。
ロシアの『モスクワタイムズ』紙によると、交通部門の責任者リクストフ氏は、Face Payを利用すれば、「地下鉄に入る際に、カードやスマートフォンは必要なく、スマートフォンやその他の表面に触れる必要もない」と述べている。同氏はまた、ロシアでは1日の感染者数と死亡者数が記録的に多いこと、ワクチン接種率が低いこと、マスク着用規則の施行が緩いことなどから、首都でのコロナウイルスの蔓延に対する懸念が高まっていることを指摘した。
乗客のデータは「安全に暗号化される」が、活動家からはプライバシーに関する懸念が寄せられている。リクストフ氏は、「改札口のカメラは、顔画像やその他の個人情報ではなく、生体認証キーを読み取る」のみだと反論している。同氏は、今後3年間で地下鉄の乗客の最大15%が定期的にFace Payを利用するようになると予測している。
ロシアの首都では、すでに顔認識技術が首都全体に広く普及しており、約20万台の監視カメラのネットワークを使って犯罪容疑者を特定している。ロシアの経済紙「コメルサント」が、モスクワ市民向けの公共サービスを提供するウェブサイトにアップロードされたユーザーの写真が、自動的に法執行機関と共有されると報じたことで、今また議論が再燃している。
モスクワ市長室はこの報道を否定している。しかし、ロシア政府は、ロシアの公共サービスのウェブサイトに保存されている個人データに、すでに治安当局が合法的にアクセスしていると述べている。
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