米・英・豪州・アラブ首長国連邦・中国メディア;VW、初世界販売トップ奪取も米当局への重い罰金支払い(2017/01/12)
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)グループが、2016年の世界販売台数で1,031万台を達成し、2015年まで4年連続首位だったトヨタ自動車を抜いて初めてトップに躍り出た。しかし、同時に、2015年売り上げを大幅に下げる原因となった排ガス不正問題について、米当局との協議の結果、43億ドル(約5,000億円)の罰金及び民事制裁金を支払うことがほぼ確定したことから、2016年12月期の決算は惨憺たるものになるとみられる。
1月11日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』配信):「VW、排ガス不正問題に関わる罰金等で従業員に重い足かせ」
「●VWは1月10日、2015年9月に米国で発覚した排ガス不正に関わり、米当局から訴追されていた問題で、このほど43億ドルの罰金及び民事制裁金を支払うことでほぼ合意したと発表。
●この他VWは、米国内ユーザーの50万台までの車買い戻し含め、150億ドル(約1兆7,400億円)の賠償金支払いで環境当局及びユーザーと合意済み。...
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1月11日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』配信):「VW、排ガス不正問題に関わる罰金等で従業員に重い足かせ」
「●VWは1月10日、2015年9月に米国で発覚した排ガス不正に関わり、米当局から訴追されていた問題で、このほど43億ドルの罰金及び民事制裁金を支払うことでほぼ合意したと発表。
●この他VWは、米国内ユーザーの50万台までの車買い戻し含め、150億ドル(約1兆7,400億円)の賠償金支払いで環境当局及びユーザーと合意済み。
●上記罰金支払いが確定すると、トヨタがアクセル・ペダル問題の責任で支払わされた12億ドル(約1,390億円)及びGMに科せられたイグニッション・キー不正問題に関わる9億ドル(約1,040億円)の罰金を大きく上回る。
●なお、米当局は先日、不正問題で当局に虚偽の報告をしていた容疑で、米VW幹部で環境法令遵守担当だったオリバー・シュミット容疑者を逮捕しているが、VW経営陣の関与までも視野に入れて捜査を継続中。」
同日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「米当局との和解進展でVW株価が上昇」
「●VWが80年の歴史上最大のスキャンダルとなった排ガス不正問題で、米当局との和解が成立する見込みとのニュースを歓迎して、欧州市場の同社株式が4%上昇。
●ただ、米国他世界の1,100万台に及ぶ排ガス不正機器のリコール・買い戻しや、追加の損害賠償請求訴訟の問題が残っており、VWのいばらの道は続く。
●VWは当初、不正問題解決に関わる対策費用として182億ユーロ(192億ドル、約2兆2,000億円)積み立てたが、上記罰金等支払いを含めると不足する見通しとなったため、2016年決算に影響が出る恐れ。」
同日付豪州
『SBSテレビニュース』:「VW、米当局に58億豪州ドルの罰金支払いで合意と発表」
「●VWは、43億ドル(58億豪州ドル)の罰金支払いに加えて、今後3年間の第3者による監督を受ける義務。
●またVWは更に今後2年間、米国の約20州に及ぶユーザーの車のリコール・買い戻しや、投資家からの損害賠償請求訴訟に対応する必要。」
同日付アラブ首長国連邦
『ガルフ・ニュース』(
『AFP通信』配信):「VW、米当局と罰金43億ドル支払いでほぼ合意」
「●VWは米当局への罰金支払い協議に先立ち、2016年に米ユーザーの車のリコール・買い戻し及びディーラーへの補償等で、175億ドル(約2兆300億円)の拠出に合意。
●VWは排ガス不正問題で、米国の販売が7.6%落ち込んだものの、世界販売で躍進(*)し、2015年比+4%販売を伸ばして初めて1,000万台超を達成。」
(*)VW販売の約8割を占める欧州・中国で好成績。
同日付中国
『新華社通信』:「VW、米当局と43億ドルの罰金支払いでほぼ合意」
「●VWの罰金支払い額については、同社取締役会の承認を経て米当局と最終合意が必要。」
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アラブ諸国の若者が見るIS(2016/04/13)
イスラミック・ステイト(IS)によるテロ活動がヨーロッパ各地を襲う中、ISの基盤ともいえるイスラム教徒が多く存在するアラブ諸国では、ISに対する支持が低下の一途を辿っていることが明らかになった。調査はドバイに事務所を構えるアズダ・バーソンマーステラ社によりサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなどアラブ地域の16か国、3500人の18歳以上24歳以下の若者を対象に行われたものである。調査の内容は、アラブ諸国の今後の政治・経済を担う若者が自分たちの住む地域や世界をどうとらえているかが浮き彫りにしており、これからの世界とアラブ諸国の関係を予測するうえでも興味深いといえる。各メディアは以下のように報じている。
4月12日付
『ザ・ガーディアン』(英)によれば、今回の調査によりアラブ諸国の若者のうち実に50%以上がISを「中東が抱える最大の問題」ととらえている。これは昨年行われた調査の37%から13ポイント上昇している。また、ISを支持しないと答えた人のうち、「たとえISが過激な暴力的手段に訴える方向性をかえれば支持できる」と答えたのは13%のみであり、前回の調査時点より6%減少している。
ただ、アラブ諸国の若者がISを支持しないからといって、ISへの参加者が減少するかといえばそうではない。...
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4月12日付
『ザ・ガーディアン』(英)によれば、今回の調査によりアラブ諸国の若者のうち実に50%以上がISを「中東が抱える最大の問題」ととらえている。これは昨年行われた調査の37%から13ポイント上昇している。また、ISを支持しないと答えた人のうち、「たとえISが過激な暴力的手段に訴える方向性をかえれば支持できる」と答えたのは13%のみであり、前回の調査時点より6%減少している。
ただ、アラブ諸国の若者がISを支持しないからといって、ISへの参加者が減少するかといえばそうではない。高い失業率と経済の不安定な社会が、若者のISへの参加につながるという見方もある。世界銀行のデータによれば、アラブ諸国内の15歳から24歳の若者のうち4人に1人が失業中であるという。また、国際労働機関(ILO)は、アラブ諸国では約7500万人の若者が失業中であると発表している。
このような失業率の高さも手伝って、「アラブの春」はアラブ諸国に好影響をもたらしたとみる若者は少ない。2012年の調査では72%が「アラブの春」によって社会が進歩したと答えているのに対し、今回の調査では半分の36%のみが進歩したと答えている。さらに、2011年の調査では92%が「民主主義が重要」と答えているのに対し、今回の調査では28%に下落し、多くの若者が民主主義よりも政治的、経済的安定の方が重要と考えていることがうかがえる。
また、アラブ諸国の若者は、スンニ派とシーア派の対立がサウジアラビアとイランの関係に、過大な影響を与えていると考えており(52%)、若者の間では宗教を冷静、客観的にとらえる傾向が出てきている。
同日付
『ワシントンポスト』(米)はアラブ諸国の若者の4人のうち3人がISはイランやイラクでの主導的地位を握ることはできないと考えていると報じる。そして、同記事は若者のISへの志願理由を「宗教的理由によるものではなく、金銭的理由による」とする。今回の調査でも、ISへの参加理由として「宗教的な理由」を挙げた若者は18%にとどまり、多くの若者が参加理由は「経済的理由」だとする。ここでもアラブ諸国の若者は宗教をより冷静かつ客観的に見ていることがわかる。アメリカのタハリール中東政策研究所のハッサン氏は「ISへの参加理由として勧誘する側もされる側も経済的理由を挙げることは少なく、多くが宗教的理由を挙げる。これは意識的か無意識的かはわからないが、経済的理由を隠しているともいえ、言い換えれば経済的要因と社会的要因は深く絡み合い、影響しあっているともいえる」と分析している。
同日付
『ガルフ・ニュース』(アラブ首長国連邦)も今回の調査により、ISに対する若者の支持は年々下落傾向にあるとする。前出のハッサン氏は同紙のインタビューに対し、より深い分析を語っている。同氏はISを退治しても、アラブ諸国の若者を救うことにはつながらないと指摘する。ISが消滅しても、高い失業率の問題が改善されることにはつながらないからだ。「アラブ諸国民の多くは、ISの過激な思想に反発しているが、ISのような集団は現代の社会問題を巧妙に利用するのが得意だ。ISが撲滅すべき諸悪の根源だと思わない方がいい。ISのような集団をはびこらせている社会的な要因から目を反らしてはいけない。ISは何もない所から突然発生したわけではなく、発生する要因があって現在に至っているのだから」。
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