【時流】、GLOBLiそれぞれで報じられているとおり、ドナルド・トランプ大統領は12月18日、中ロ両国を敵視(力によって国境などの現状変更を試みる“修正主義勢力”)する内容の「国家安全保障戦略」を発表した。当然のことながら、名指しされた中ロ両国は、これまで双方努力してきた相互信頼関係を壊す等として猛反発している。一方、米議会主導の中国関連行政府委員会(CECC、注1後記)の公聴会では、中国政府が欧米各国に影響力を駆使しようと、教育・スパイ活動・政治的圧力等あの手この手の手段を講じていると憂慮していることが明かされた。
12月19日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「中国、米大統領が中国に競争国とのレッテルを貼ったことに対して、協調が必須と抗議」
在米中国大使館は12月19日、ドナルド・トランプ大統領が「国家安全保障戦略」の中で中国を“競争国”と決め付けたことに対して、両国間の協調関係を壊し、双方に大きな損失をもたらすだけだと厳しく批判した。
更に、同大統領及び側近の米高官が、中ロ両国は、クリミア半島・ジョージア及び南シナ海それぞれに軍事力で侵攻する“修正主義勢力”と見做したことに対して、中国側は、北朝鮮問題において習近平(シー・チンピン)国家主席とトランプ大統領間の相互協力を蔑ろにするものとし、また、南シナ海の開発については平和維持の目的しかないと強調した。...
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12月19日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「中国、米大統領が中国に競争国とのレッテルを貼ったことに対して、協調が必須と抗議」
在米中国大使館は12月19日、ドナルド・トランプ大統領が「国家安全保障戦略」の中で中国を“競争国”と決め付けたことに対して、両国間の協調関係を壊し、双方に大きな損失をもたらすだけだと厳しく批判した。
更に、同大統領及び側近の米高官が、中ロ両国は、クリミア半島・ジョージア及び南シナ海それぞれに軍事力で侵攻する“修正主義勢力”と見做したことに対して、中国側は、北朝鮮問題において習近平(シー・チンピン)国家主席とトランプ大統領間の相互協力を蔑ろにするものとし、また、南シナ海の開発については平和維持の目的しかないと強調した。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「トランプ大統領の“国家安全保障戦略”内での敵視は中ロ両国にとって脅威」
元教授で政治評論家のジョン・ウォルシュ氏は12月18日、トランプ大統領の「国家安全保障戦略」内での中ロ両国に関わる決め付けは、これまでの中ロ首脳との会談で話した内容と異なり、ただ政治的対立を助長するだけだと非難した。
そして同氏は、両国に対するかかる批評は、米国が中ロ両国と協力して、世界的な緊張関係の緩和や、その他国際問題解決に当ろうとする姿勢を全く示していないことが明白となっているとした。
なお、同氏はまた、「国家安全保障戦略」の内容は、中ロ両国には厳しく対応すべしとの共和党主流派の主張と、中ロと協調したいと願うトランプ大統領の思惑との折衷案として出されたものとみられ、実際に米中間での軍事衝突等を惹起するものではないとみている。
同日付中国『新華社通信』:「米専門家、習・トランプ両首脳の密接な関係作りが両国の違いを克服できるとコメント」
米シンクタンクのブルッキングス研究所(注2後記)の著名主任研究員であるマイケル・オハンロン氏は12月18日、『新華社通信』のインタビューに答えて、トランプ大統領と習国家主席の私的及び公的に良好な関係が構築されないと、両国間の意見の喰い違いは中々克服できないとコメントした。
同氏は、例えば経済問題の解決や、その他の問題で具体的成果を見出すためには、場合によって両首脳の密接な関係が有効にはたらくと述べた。
更に同氏は、「国家安全保障戦略」の中で中国を“競争国”と決め付けるのは好ましいことではないが、同戦略自身は、現実的な外交問題上言及された意味合いと、トランプ・習両氏間に築き上げられつつある信頼関係と、両面で見ていく必要があろうとも付言した。
一方、同日付米『CNBCニュース』:「中国は諸外国への政治的影響力を高めようとしているが、西側諸国はこれを嫌う」
CECCは12月13日、中国に関する公聴会を開いた。その結果、中国が直接投資している米国、豪州、ニュージーランド、ドイツの高官・有識者は、中国が様々な手段を使って、各々の国に対する影響力を強化しようとしていることを憂慮していることが判明した。
例えば、先週の『フィナンシャル・タイムズ』紙報道によると、ニュージーランドでは、中国が同国の公的・私的機関の機密情報にアクセスしようとしているという。
また、『ロイター通信』は、ドイツにおいて、LinkedIn(世界最大級のビジネス特化型ソーシャルネットワーク)を駆使して、中国のスパイが同国政治家の周りを嗅ぎまわっていると報じている。
更に、豪州においても、同国情報機関によると、中国政府は中国人留学生や領事館職員の活動・言動を監視し、同政府を批判するようなことを言わせないよう圧力をかけているという。
なお、CECCの公聴会が開かれたのと同じ週に、中国政府は在中国豪州大使を呼び出し、豪州のマルコム・ターンブル首相が“中国の影響力に関わる憂慮すべき報告”を引用していることを問題視している旨通告した。
また、直近の中国国営メディア『環球時報』は社説で、西側諸国の中国への反発は、“マッカーシズム(注3後記)症候群”に違いないとして、政治的影響力に関する西側の主張を全否定している。
(注1)CECC:2000年10月に設立された、常設の“中国に関する議会行政府委員会”。委員会は行政府と上下両院から選出され、現在は上院議員が委員長を含む9名、行政府から選出された3名で構成。CECCの目的は、中国の人権状況が「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(1966)や「世界人権宣言」(1948)などに含まれた基準を満たしているかを監視することである。
(注2)ブルッキングス研究所:1916年に前身の政府活動研究所として発足。中道・リベラル系のシンクタンクで、国防・外交が専門。
(注3)マッカーシズム:1950年代に米国で発生した反共産主義に基づく社会運動、政治的運動。米上院(共和党)議員のジョセフ・マッカーシーによる告発をきっかけとして、「共産主義者である」との批判を受けた米国連邦政府職員、マスメディアや米映画の関係者などが攻撃された。
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