ロシア残留西側企業、時が経つほど撤退が困難に【米メディア】(2023/09/12)
8月27日付GLOBALi「
オランダのビール醸造会社、漸くロシア撤退完了も損失額は3億ユーロ」で報じたとおり、世界2位のハイネケン(1863年設立)がロシア事業売却によってロシア撤退を完了させたが、損失額は3億ユーロ(約470億円)に上っている。そうした中、多国籍企業2社もロシア撤退を図ったが、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)によって事業没収と同様のペナルティが科せられたことから、時が経つほどロシア撤退が困難になりつつあると専門家が分析している。
9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。...
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9月11日付
『CNBCニュース』は、ウクライナ戦争勃発後1年半余りも経過した現在、これからロシア撤退を果たそうとする西側企業にとって、ロシアに留まる以上に困難が待ち受けていると報じた。
オランダのビール醸造大手のハイネケンは8月25日、ロシア撤退意向を表明後1年余り経過後、漸く事業撤退を完了した。
しかし、撤退計画進行に当たって、ロシア人従業員1,800人の雇用確保交渉に難航したこともあって、実際には事業継承先のロシア複合企業アーネスト・グループ(1971年設立、化粧品・日用雑貨・製缶業大手)に1ユーロ(約157円)の名目上の価格で売却せざるを得なかった。
この結果、同社は3億ユーロもの損失を計上することになっている。
また、今年の7月に撤退を完了させた、デンマークのビール醸造会社カールスバーグ(1799年設立)とフランスの食品大手ダノン(1919年設立、スペイン発祥)の場合は、事業売却を画策していたにも拘らず、結果的にはウラジーミル・プーチン大統領の側近に強制的に接収されてしまっている。
かかる動きから、英国の経営コンサルタント会社コントロール・リスクス(1975年設立)幹部であり元『モスクワ・タイムズ』編集長だったナビ・アブダラーエフ氏は先月、“西側企業は、対ロシア制裁や金融危機の中、ロシア撤退を希望しているが、時が経つに連れてロシアに居残るより厳しい局面に曝されるようになっている”と『CNBCニュース』のインタビューに答えた。
同氏は更に、“その結果、幾つかの西側企業がロシア残留を決めている”とした上で、“何故なら、ロシア政府が次々に法律を変更して、残った資産の略奪等、撤退企業に無理難題を押し付けようとしているだけでなく、雇用されていたロシア人を犯罪者として訴追するリスクも高まっているからである”とも言及している。
また、英国の国際関係シンクタンク、国際戦略研究所(1958年設立)経済制裁問題上級研究員のマリア・シャギーナ氏は、“ロシア政府によるカールスバーグ・ダノンへの仕打ちは、今後ロシア撤退をしようとしている西側企業に対する強烈な警告になっているはずだ”と分析している。
かかる背景もあってか、依然ロシアには、英国の一般消費財メーカー大手のユニリーバ(1930年設立)、スイスの世界最大食品・飲料メーカーのネスレ(1866年設立)、米国の世界最大煙草メーカーのフィリップモリス(1900年設立)、イタリアの銀行ウニクレディト(1998年設立)、スイス金融グループのライファイゼン(1899年設立)、米食品・スナック・飲料メーカーのペプシコ(1965年設立)等が居残っている。
シャギーナ氏によれば、まだ500社余りの西側企業がロシアに留まっているという。
ただ、止むを得ずロシアに残留している企業は、ロシア政府から追加納税を強いられるだけでなく、西側諸国からの非難に曝されることになる。
例えばウクライナ政府は、“ユニリーバやその他ロシア残留企業は、ロシアによるウクライナ戦争の支持者だ”と酷評している。
なお、シャギーナ氏は『CNBCニュース』の取材に対して、“対イラン、対北朝鮮制裁と違って、対ロシア制裁は抜け穴があり、一般のロシア市民向けやその他人道支援関連ビジネスの制裁は除外されているため、ロシア残留西側企業はこの分野での事業継続は可能である”とコメントしている。
一方、米コンサルティング会社テネオ(2011年設立)中央・東欧州地域担当のアンドリアス・ターサ顧問は、“国際的対ロシア制裁及び数百社の西側企業のロシア撤退に伴い、ロシア経済は段々疲弊することになろう”とし、“時が経てば経つ程、ロシア経済は先細りとなり、益々中国頼みとなろう”と分析している。
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BRICSサミット、新興6ヵ国の追加メンバー受け入れ合意も、その他は同床異夢で何ら未決定【米メディア】(2023/08/29)
BRICS新興5ヵ国(2011年発足)はこの程、南アフリカにおいて首脳会議(サミット)を開催し、新たに新興6ヵ国の追加メンバー国の受け入れで合意した。しかし、その他、西側支配への挑戦や国際通貨基金(IMF、1945年創設)・世界銀行(1945年創設)等の欧米主導の国際機関への対抗を謳っていたものの、共通通貨の採用はもとより、基軸通貨の脱米ドル政策でも合意に至らず、むしろ加盟国間の思惑の不一致を露呈してしまっている。
8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。...
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8月28日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年開設のビジネス・技術専門メディア)は、直近開催のBRICSサミットにおいて、新興6ヵ国の追加参加が決まって規模は大きくなるものの、本来の主眼である西側対抗軸構築の構想では全く纏まりを欠いたと報じている。
BRICSサミットが、8月24日までの3日間、南アフリカで開催され、新たに新興6ヵ国(イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア)の加盟が決定された。
しかし、当初から標榜していた、西側支配への挑戦や欧米主導の国際機関への対抗を推進するための構想では何ら結論を見出せなかった。
すなわち、昨年来、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)等が打ち出していた、BRICS共通通貨の創設や、国際基軸通貨での脱米ドル政策について、具体的進捗をみせることはできなかった。
まず、オンライン形式で参加したプーチン大統領が、“グループ内での金融・商取引をより強固なものにするため、決済通貨を脱米ドルとし、各々の通貨で決済することが重要だ”と訴えた。
西側諸国の対ロシア制裁で、米ドル決済を禁じられて以来、ロシアとしては脱米ドルに向かわざるを得ない状況になっている。
次に、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(77歳、2023年就任)が、“グループ国間の商取引決済上の脆弱性を克服するためには、新たな共通通貨の創設が必要だ”と訴えた。
英国『フィナンシャル・タイムズ』紙報道によれば、同大統領が4月に訪中した際、“金本位制でなくなった後、誰が米ドルを基軸通貨と決めたのか”とした上で、“今こそBRICS共通通貨の採用について真剣に討議すべきだ”と発言したという。
一方、インドのハーディープ・シン・プーリ石油・天然ガス担当大臣(71歳、2021年就任)は8月25日、インドで開催された主要20ヵ国経済相会議後に米『CNBCニュース』のインタビューに答えて、“脱米ドルを進める一環で、インド通貨のルピーを国際通貨に押し上げたいと考えているが、現実的には容易な話ではないと思っている”と表明している。
また、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)は、“国際金融システムの見直しが必要だ”とし、BRICS共通通貨については何らコメントしなかったが、“人民元が国際基軸通貨になることを望んでいる”と言及した。
ただ、同国家主席は、人民元が米ドルに取って代わることまでは明言しなかった。
更に、今回のBRICSサミット議長国の南アフリカのエノック・ゴドンワナ財務大臣(66歳、2021年就任)は8月24日、米『ブルームバーグ』オンラインニュースのインタビューに答えて、“(BRICSサミットでは)どの国からもBRICS共通通貨の話は出なかった”とし、“何故なら、共通通貨採用を準備するということは、これまでの国際基軸通貨の使用を止めることを意味し、それは余りにもリスクが大きく、どの国もそのような態勢が取れる状況にないからだ”とコメントした。
なお、南アフリカのポール・マシャティル副大統領(61歳、2022年就任)が今年4月、BRICSは米ドル依存度を減少させようと試みていると語っていた。
一方、金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立)の元エコノミストだったジム・オニール氏(66歳、2001年にBRICsと命名)は今年8月、『フィナンシャル・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“BRICS共通通貨の構想があるそうだが、愚かな話だ”と一刀両断した。
更に同氏は、“中国とインドが何ら合意できないということは、西側諸国にとっては好ましい”とし、“何故なら、もし両国が国際通貨で何らかの合意をすれば、それは国際基軸通貨の米ドルにとって大きな障害となるからだ”と付言している。
なお、国際銀行間通信協会(SWIFT、注後記)の今年7月のデータによると、SWIFT利用の国際金融取引の約46%が米ドルで行われていて、これはこれまでの最高値となっている。
(注)SWIFT:銀行間の国際金融取引を仲介するベルギーの協同組合。1973年発足。約4千の国際金融機関で採用されていて、支払いの40%近くが30分以内に、90%余りが24時間以内に完了している。
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