ロシアのウクライナ軍事侵攻以来、中国との関係は表面的には特に深まってきているとみられる。しかし、中国としては、ロシアが敗戦によって衰退し、中国のみが西側民主主義諸国連合と対峙することになるのは避けたいと願うものの、だからと言ってロシアが強大になって中国を脅かすことになることも全く望んでいないとし、言わば「ゴルディロックスの原理(注1後記)」の如く、“強すぎず弱すぎない国”として存続するよう策謀している、と政治評論家は分析している。
8月14日付
『CNBCニュース』は、中国としては、ロシアが“強すぎず弱すぎない国”として存続するよう策謀している、との政治評論家分析について報道している。
中国の対ロシア政策について、『CNBCニュース』が複数の政治評論家に取材したところ、ロシアが“強すぎず弱すぎない国”として今後も存続できるよう裏で画策しているとの分析であった。
彼らの分析は以下のとおりである。
●ロシアがウクライナ戦争に敗れることによって、国際社会に民主主義連合の勝利と喧伝されるのは最も厭忌することである。
●しかも、敗戦によってロシアが衰退することによって、西側民主主義諸国連合と中国一国で対峙することになる事態は避けたい。
●そして、ロシアの衰退に伴って、政治・経済が混乱することによって、例えば隣接する中国に大量避難民の流入や政情不安等をもたらすことを懸念する。
●更に、欧州諸国と同様、中国が恐れることは、ロシア敗北によって保有核兵器が流出し、新たな核の脅威が起こることである。
●そのため、西側諸国による制裁によって苦難に陥っているロシアを援助すべく、表向きには、エネルギー政策だとして堂々とロシア産原油・天然ガスを買い増しし、裏では、半導体製品やその他軍事転用可能な部品等を提供している。
●また、国際社会における中国の名声を高めるために、中ロ首脳会談後にも拘らず、ウクライナに政府代表を派遣して“停戦提案”をすることで、“平和の仲介者”を演じようとしている。
●一方、ロシアがウクライナ戦争を契機に、強大になることは全く望んでいない。
●何故なら、過去に三十有余年もの間続いた、“中ソ対立(注2後記)”という苦い歴史があることから、4,200キロメートル余りも国境を接する中国としては、1969年に勃発した中ソ国境紛争のような、新たな軍事対立という事態となることは避けたいからである。
なお、『CNBCニュース』が取材した政治評論家は以下である。
・公共政策専門シンクタンク「米ジャーマン・マーシャル財団(1972年設立、本部ワシントンDC)」民主主義擁護部門のエティエンヌ・ソーラ研究員
・「新地政学研究ネットワーク(本部ウクライナ・キーフ)」アジア部門のユーリ・ポイタ主任
・米シンクタンク「戦略国際問題研究所(1962年設立、本部ワシントンDC)」中国研究部門のジュード・ブランチェット議長
(注1)ゴルディロックスの原理:「ゴルディロックスと3匹のくま」の童話の喩えを借りて名付けられた経済学用語。物語の中にゴルディロックスという名前の少女が登場し、三種のお粥を味見したところ、熱すぎるのも冷たすぎるのも嫌で、ちょうどよい温度のものを選ぶ。この童話が世界中でよく知られていることから、この名前を使うことで「丁度良い程度」という概念の理解が容易になり、発達心理学や生物学、経済学、工学等、他の幅広い領域にも適応されるようになった。
(注2)中ソ対立:1950年代後半から表面化した中国とソ連の対立状態。始めは政党間の理論、路線対立だったが、次第にイデオロギー、軍事、政治に至るまで広がった。中国はソ連指導部を「修正主義」、ソ連は中国指導部を「極左冒険主義」と非難し、両国の対立は世界の社会主義運動やベトナムなど第三世界での民族紛争に多大な衝撃を与えた。中国は、1968年夏のソ連のチェコスロバキアへの軍事介入、1969年3月の珍宝島事件により対ソ脅威感が募ったことより、1971年からは対米接近でソ連の軍事的脅威に対抗する戦略的配置を敷き、「社会帝国主義」ソ連を米国に代わる主要敵に設定。ソ連もアジア集団安全保障体制など対中包囲の軍事網を構築したことから、1970年代末まで中ソの緊張と敵対が続いた。
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米ウォール街(金融・証券業界)富豪は、2020年大統領選時、ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)の政策等を嫌気して、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)を支援すべく巨額献金をした。そして2024年選挙に臨み、バイデン政権に失望したため共和党支援に鞍替えするも、反トランプの姿勢は変えず、反トランプ立候補者への支援を打ち出している。
7月16日付
『NBCニュース』は、米ウォール街の富豪らが、2024年大統領選に臨むに当たって、早くも反トランプの姿勢をみせてトランプ以外の共和党予備選候補者支援を表明していると報じた。
米ウォール街の富豪らは、2024年大統領選に臨むに当たって、反トランプの姿勢を示し、トランプ以外の共和党予備選候補者への献金を挙って行っている。
『NBCニュース』(1940年開局)と『CNBCニュース』(1989年開局)が共同で、直近の連邦選挙委員会(FEC、注1後記)報告データを分析したところ、十数名のウォール街富豪がドナルド・トランプ前大統領以外の共和党予備選候補者に献金していることが分かった。
FECの規制で、1人当りの個人候補者宛の献金は3,300ドル(約46万円)、また、候補者支援の政治行動委員会(PAC、注2後記)を通じての献金は6,600ドル(約92万円)が上限とされている。
ウォール街富豪やその他財界人は2020年大統領選時、トランプ前大統領の政策等を批判して、民主党・バイデン候補に計7,400万ドル(約103億6千万円)もの献金を行っていた。
その時、トランプが得ていた献金は1,800万ドル(約25億2千万円)に止まっていた。
なお、共和党予備選候補者のうち、今年4~6月期にウォール街富豪らから多くの献金を集めたのは以下の候補者で、いずれも支持率でトランプを下回っているものの、支援の勢いが増している。
●ロン・デサンティス現フロリダ州知事(44歳、2019年初当選)
・同四半期で、少なくとも15人の富豪らから計2千万ドル(約28億円)の献金を獲得。
・主な献金者は、大型ヘッジファンド創設者のポール・チューダー・ジョーンズ氏(68歳)で、同四半期に同候補者PAC宛に上限の6,600ドルを献金。
なお、同氏は2012年選挙時、ミット・ロムニー共和党候補(現76歳、2019年ユタ州選出上院議員就任)支援のスーパーPAC(注3後記)宛に20万ドル(約2,800万円)を献金していたが、同候補はバラク・オバマ民主党候補(現61歳、2009~2017年大統領就任)に敗退。
また、2016年時には、ジェブ・ブッシュ共和党予備選候補(現70歳、1999~2007年フロリダ州知事在任)及びクリス・クリスティ候補(現60歳、2010~2018年ニュージャージー州知事在任)に献金したが、いずれもトランプ候補に敗退。
・ベンチャーキャピタル実業家のジョー・ローンズデール氏(40歳)、そして米金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立、本社ニューヨーク)のジャスティン・シーゲル副社長も、同四半期に少なくとも各々3,300ドルを寄付。
●実業家ビベック・ラマスワミィ氏(37歳)
・同四半期で7百万ドル(約9億8千万円)余りの献金獲得。
・彼の事業方針が、ウォール街が標榜する環境・社会・ガバナンス投資(ESG投資、注4後記)に反対するものだが、今回少なくとも10人余りの富豪からの献金を受領。
・ヘッジファンド、パーシング・スクエア・キャピタル(2004年設立)のビル・アックマン最高経営責任者(57歳)が同四半期初めに3,300ドルを献金。ただ、同氏は同時に民主党予備選候補者のロバート・F.・ケネディJr.弁護士(69歳)にも献金。
・投資家のグレン&エバ・ダビン夫妻(66歳、62歳)は6,600ドルを献金。
・投資コンサルタント会社、エバコアISI(1995年設立)のエド・ハイマン会長は3,300ドル献金。
●ニッキー・ヘイリィ元国連大使(51歳、2017~2018年在任)
・同四半期に500万ドル(約7億円)余りの献金を獲得。
・ヘッジファンド、AQRキャピタル・マネジメント(1998年設立)共同創設者のクリフ・アスネス氏(56歳)、ベンチャーキャピタル投資家ティム・ドレイパー氏(65歳)他十数名の富豪より献金受領。
(注1)FEC:連邦選挙に関わる献金・運動資金の適法性を監視する独立行政機関。1974年設立。本部ワシントンDC。
(注2)PAC:当該候補者の当選や立法議案の成立を援助するため組織された、政治資金団体。
(注3)スーパーPAC:「ある候補者やその選挙運動から独立した団体」で、選挙運動に直接資金援助をしたり、候補者と連携して行動することは許されないが、集めた資金は広告宣伝を中心とする、特定の候補者への支援活動に投じられることが容認されている団体。企業・個人からの献金上限はない。
(注4)ESG投資:地球温暖化などの環境的な課題、労働や人権などの社会的課題、コンプライアンスなどの企業統治の課題といった、企業が果たすべき社会的責任を重視し、その取組みや成果に着目して企業を評価し、投資の意思決定を行う手法。
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