現地時間17時(19H00 GMT)頃にリトアニアのパスバリス地域のアンバーグリッド・パイプライン、2条のうち1条で爆発が起きた。損傷を受けたパイプライン部分は1978年に建設されたもので、幸いにもパスバリス居住地域から5km離れた場所に位置していた。消火に当たった消防局の責任者によると、火災の炎の高さは最高、50m高さに達したが、その後、火の勢いは弱まったという。
パイプライン運用会社アンバーグリッドのビクニウス社長は、コミュニケで事故の原因調査を即刻に開始し、ガス消費者たちへのガス供給の確保に万全をつくしていると言明した。さらに、現状では、今回のパイプライン爆発に関する意図的な犯罪行為は見つかっていないが、全ての可能なシナリオを想定しての原因調査を行っていくと追記している。
アンバーグリッド・グループによると、爆発の発生したガスパイプラインは,専らリトアニア北部とリトアニアの隣国ポーランドへのガス供給に使用されていたと説明している。
なお、リトアニアは、2022年6月からロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置としてロシアからのガス輸入を禁止している。リトアニアは、1990年に旧ソ連から独立を果たしたが、その後2014年にバルト海沿岸のクライペダの液化天然ガス基地が稼働するまではロシアの天然ガスに依存してきた。
その後、2022年には新たなガスパイプラインが完成し、バルト三国からポーランドを経由して欧州ガスネットワークにつながることとなり、ロシアの天然ガス依存体質から完全に脱却することができた。
ところで、今回のパイプライン爆破事故が、単なる老朽化によるものか、もしくはロシア側の工作活動によるものか、調査結果を見守りたい。
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ロシアの反体制派ロックバンドがこの程、“ナチス政権打倒”と根拠のない理由で一方的なウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)を徹底的に糾弾する目的で、“ノー・ナチス(注1後記)・イン・ウクライナ”という新曲を発表している。
12月24日付ロシア
『ザ・モスクワ・タイムズ(MT)』オンラインニュース(1992年設立の独立系メディア)は、「プッシー・ライオット、ウクライナに“ナチスはいない”と歌う新曲を発表」と題して、ロシア反体制派ロックバンドが、ウクライナ軍事侵攻10ヵ月目を契機に、ウラジーミル・プーチン大統領の根拠のない侵攻を糾弾する新曲を披露したと報じている。
反体制派フェミニスト活動家グループのプッシー・ライオット(PR、注2後記)は12月24日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻から10ヵ月が経過した日に、この行為を猛批判するミュージック・ビデオを公開した。
PRメンバーのオルガ・ボリソワ氏は12月21日、『MT』のインタビューに答えて、“我々はこの戦争について大声を張り上げる”とし、“皆、戦争に背を向けるのではなく、戦争を止めさせなければならない”と訴えた。
今回公開されたビデオは、“ママ、ロシアのTVを見てはだめだ”という題名の新曲で、ロシアにおける軍事的検閲や弾圧に反対するとともに、ウラジーミル・プーチン大統領及び軍高官等をウクライナ人大量殺戮の罪で国際刑事組織に訴えろ、と歌っている。
PRは、同大統領が“特別軍事作戦”と勝手に呼んでウクライナに軍事侵攻し始めた2月24日以降、これを非難するコンサートを欧州各地で開催してきている。
同グループはコンサートを通じて、ウクライナ最大のオフマディト小児科病院(首都キーフ在)含めウクライナの人々の支援のための寄金を呼びかけている。
過日カタールで開催されたサッカーワールドカップの競技場でも、PRメンバーがピッチに乱入して戦争反対等を訴えようとしたが、直前に警察隊に阻止され逮捕されている。
なお、ウクライナ戦争後複数のPRメンバーがロシアを脱出していて、マリア・アリョーヒナ氏(34歳)、ルーシー・シュタイン氏はロシア当局から指名手配されている。
同日付英国『ザ・ガーディアン』(1821年設立)紙は、「PRの新曲、ウクライナ戦争反対及びプーチン告訴をアピール」と詳報している。
PRは新曲の中で、ウクライナ戦争やロシアの検閲に反対するとともに、西側諸国が依然ロシアから原油や天然ガスを購入することでこれを“支援している”と非難している。
声明の中で彼らは、プーチン政権は“テロリスト集団”だとし、プーチン政権、及びその側近や軍高官らを“戦争犯罪人”だと糾弾している。
今回の新曲は「ママ、ロシアのTVを見てはだめだ」という題名で、“我々の音楽は、恐ろしい戦争で犠牲になったウクライナ人の骨を燃やして喜ぶような、地獄にどっぷり浸かった真の人食い人種と呼ぶべきモンスターのプーチンに率いられた政権に対する怒り、憤慨、不和、そして恨めしくかつ必死の嘆きを表している”という。
PRの主要メンバーであるマリア・アリョーヒナ氏、オルガ・ボリソワ氏、ダイアナ・ブルコット氏(37歳)及びタソ・プレトナー氏は、捕縛されたロシア人徴集兵が、“ママ、ウクライナにはナチスなんていないよ、だから、(嘘をまき散らすロシアの)TVを見てはだめだ”と実母に訴えたことを基にして作詞された歌だと説明している。
彼らは声明の中で、“ロシアのプロパガンダ放送は人々の心を蝕んでいる”とした上で、“彼らが制定した外国エージェントを取り締まる法律を駆使して、反体制活動家やジャーナリストの口を塞ぎ、最後に残っていた独立系の人権擁護団体の活動まで停止させている”と訴えた。
更に彼らは、ソ連時代にラボXという毒薬研究所があり、反政府活動家らを黙らせて来ていたが、現在でも似たような場所が存在し、“プーチンに逆らう者は皆投獄されたり、軍事転用の毒を盛られたりして殺されている”と言及した。
“プーチンやロシア連邦保安庁(FSB、1995年設立の旧ソ連国家保安委員会・KGBの後身組織)の連中は、この「伝統的な」研究所を重宝していて、反政府運動の代表的人物に対して次々に危害を加えていった”とした。
その上で、“アレクサンドル・リトビネンコ(1962~2006年、元FSB職員)、セルゲイ・スクリパリ(71歳、元ロシア及び英国の二重スパイ、2018年毒殺未遂被害、現在英国に亡命中)、ウラジーミル・カラ=ムルザ(41歳、政治ジャーナリスト、2015・2017年に毒殺未遂被害、現在軍事関連”虚偽情報流布“等の容疑で裁判中)、ピョートル・ベルジロフ(35歳、PRメンバーで2018年ワールドカップロシア大会の競技場に乱入して逮捕、同年毒殺未遂被害)、アレクセイ・ナワルニー(46歳、野党勢力代表、2020年毒殺未遂被害、現在投獄中)は明らかに当局の犠牲者だ”と付言した。
(注1)ナチス:ドイツの政党、国家社会主義ドイツ労働者党の略称、また、その党員。1920年ドイツ労働者党を改称して成立。翌年以降ヒトラーを党首とし、1933年に政権を掌握。反民主・反共産・反ユダヤ主義を標榜して、全体主義的独裁政治を推進。また、ベルサイユ体制(対ドイツ制裁等を含む第一次大戦後の国際秩序)の打破をめざして再軍備を強行、第二次大戦を引き起こし、1945年に敗戦とともに崩壊。
(注2)PR:2011年活動開始のロシアのフェミニスト・パンク・ロック集団、抗議活動家グループ。ロシアにおける政治的抑圧や性差別・LGBTQ弾圧・家父長制・受刑者への人権侵害に対し、無許可でのパフォーマンスや音楽活動などを通じて抗議を続けている。メンバーは、寒さの厳しい天候のときも、演奏中も、またインタビューに応じるときも鮮やかな色のドレスとタイツの衣装に目出し帽で顔を隠しており、インタビューには常に偽名で応じている。この集団は10人ほどで演奏を行なうが、これとは別に15人ほどが技術面の裏方や、インターネットに投稿されるビデオの撮影・編集などを行なっている。
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