ロシアのウクライナ侵攻が続く中、大規模軍事演習をすすめるNATO(2022/05/30)
地中海に浮かぶイタリアのサルデーニャ島では、5月5日から27日の間、北大西洋条約機構(NATO)が監修する大規模な軍事演習が行われた。NATO事務次長は29日、東欧へのNATO軍の展開はもはやロシアとの基本文書には制限されないと発言した。
仏メディア
『フランス・ソワール』 によると、フランス内外のマスコミが沈黙する中、イタリアの日刊紙「L’Unione Sarda」が、5月5日から27日までイタリアのサルデーニャ島でこれまでにない規模のNATOの軍事演習が行われたことを報じた。
今回の軍事演習は、7カ国から4千人から5千人が参加するという前例のないものであった。これまでのNATO軍とイタリア軍の合同演習は2千人から3千人を超えることはなく、このような規模は初めてだったという。...
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仏メディア
『フランス・ソワール』 によると、フランス内外のマスコミが沈黙する中、イタリアの日刊紙「L’Unione Sarda」が、5月5日から27日までイタリアのサルデーニャ島でこれまでにない規模のNATOの軍事演習が行われたことを報じた。
今回の軍事演習は、7カ国から4千人から5千人が参加するという前例のないものであった。これまでのNATO軍とイタリア軍の合同演習は2千人から3千人を超えることはなく、このような規模は初めてだったという。
なお、5月の1カ月間は、イタリア以外でも、東ヨーロッパ全域で軍事演習が行われた。ロシアと1340kmに渡る国境を持つフィンランドでは、英軍の部隊と合同演習が行われた。同じパターンで、エストニアとラトビアの国境では、1万5千人のNATO軍兵士が参加する「ハリネズミ演習」、戦乱のウクライナに接するポーランドでは、12カ国の兵士が参加した「防御作戦」、北マケドニアでは2500人の英国人を含む4500人が参加した「迅速対応演習」が実施された。
仏日刊紙『リベラシオン』 は、英国は、これらの作戦はロシアとの直接的な衝突の可能性を見越して行われているとしているが、NATOはより慎重な姿勢をとっていると伝えている。NATOのホームページによると、こうした演習は「同盟軍の即応性と相互運用性を向上させるために」以前から計画されていたものだと書かれている。3月から4月にかけてノルウェーで行われた演習の際にも、NATOは「ロシアのウクライナ侵攻とは関係ない」と述べている。ただし、4月22日のツイートで、NATOは「ロシアのウクライナ侵攻により、有能で戦闘力のある軍隊の必要性を再認識させた」と述べていた。
ベルギー日刊紙『ラ・リーブル』 は、5月17日から31日にかけて、米海軍の航空母艦USS Harry S. Trumanを主役としたNATOの共同演習「ネプチューンシールド2022」が東地中海で行われていると伝えている。参加国は、イギリス、スペイン、フランス、トルコ、ドイツ、ポーランド、ルーマニア、イタリアなど、大西洋同盟のほとんどのメンバーが含まれている。今回の演習は、ロシアのウクライナ侵攻の「かなり前から計画されていた」ものだが、「今回の警戒活動の強化の本質は、新たな文脈に置かれたものだ」と、米艦に出向している英海軍のパイロット、ローリー・チェイン氏は認めている。
こうした中、『BFMTV』 は、NATOのミルチャ・ジョアナ事務次長が29日、ロシアのウクライナ侵攻を受け、大西洋同盟はもはや、東欧に軍を展開しないというモスクワとの間で締結された基本文書に縛られないと述べたと伝えている。NATOとロシアが1997年に締結した基本文書は、中・東欧などへの「兵力の集中を防ぐ」ための措置が盛り込まれていた。しかし、ウクライナを攻撃し、NATOとの対話をすべて打ち切ったことで、ロシアは自ら「この基本文書を無効にした」と強調した。そして、NATOは現在、「東側で強固な態勢」を構築する上で「何の制約もない」と述べた。
なお、バルト諸国は現在、NATO軍の存在感をさらに高めることを望んでおり、小規模な戦闘部隊ではなく、旅団の駐屯を求めている。NATOは6月中旬に国防相会議を開いてこの問題について協議し、同月下旬に首脳会議で決定を承認する予定となっている。
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ウクライナ戦争、4カ月目に突入(2022/05/25)
ロシアのウクライナ侵攻が4カ月目に入った。ウクライナ軍の激しい抵抗にもかかわらず、ロシア軍は数週間前から主な戦闘が集中しているドンバス地方東部のルハーンシク州全体を征服しようとしている。
仏
『BFMTV』 によると、3月末から4月初めにかけて首都キーウ、5月には北東部のハリコフからロシア軍を排除したウクライナ側は、ルハーンシク州とドネツィク州で形成される石炭の宝庫であるドネツ盆地で「苦戦」していることを明らかにした。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日の夜、「今後数週間の戦いは厳しいものになるだろう」と警告した。ロシアは、ルハーンシク州のウクライナ人部隊に火力を集中し、セヴェロドネツィク市とリシチャンシク市を包囲しようとしている。...
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仏
『BFMTV』 によると、3月末から4月初めにかけて首都キーウ、5月には北東部のハリコフからロシア軍を排除したウクライナ側は、ルハーンシク州とドネツィク州で形成される石炭の宝庫であるドネツ盆地で「苦戦」していることを明らかにした。
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日の夜、「今後数週間の戦いは厳しいものになるだろう」と警告した。ロシアは、ルハーンシク州のウクライナ人部隊に火力を集中し、セヴェロドネツィク市とリシチャンシク市を包囲しようとしている。
ウクライナ国防省は、ルハーンシク州東部ポパスナとドネツィク州北東部のバーフムトの町付近での激しい戦闘が繰り広げられていることに言及した。この町が陥落すれば、ロシア軍は現在ウクライナ侵攻のための即席の司令部として機能している交差点を完全に支配することになるという。
ロシア側では、ロシア国防相が24日、4カ月目に入ったウクライナへの侵攻の目的を達成するためには、長い戦いをしなければならないことを示唆した。「ウクライナ政権に対する西側の膨大な援助や制裁の前例のない圧力にかかわらず、すべての目的が達成されるまで特別軍事作戦を継続する」と述べた。また、民間人の犠牲を避けるためのロシア側の努力は「攻撃の速度を遅くしているが、これは意図的なものだ」とも述べた。
なお、ロシア下院議会では、軍に入隊する年齢制限を廃止する法案が25日に審議される予定だという。法案の目的は、「現役世代の国民が最初の兵役契約を結ぶことができる年齢制限を撤廃することである」と説明書きに書かれている。現在、ロシア軍に入隊できるのは18歳から40歳までの国民に限られており、外国籍の場合は、18歳から30歳までが対象となっている。
一方、米『フォーブス』 は、戦争が長期化する中、ロシア軍が深刻な人材不足に陥っていると伝えている。22日にポパスナ周辺で撃墜されたロシア機を操縦していたのは63歳の退役パイロットであった。彼は2012年にロシア空軍を離れた後、ロシアの民間軍事会社ワーグナー・グループのために働くようになった。ウクライナでのロシアの犠牲者が増えるにつれ、ロシア軍にとってこのような傭兵が欠かせない存在になりつつあるという。英国国防省によると、3カ月間の激戦で約1万5000人のロシア人が死亡した。これは侵攻軍の10分の1以上にあたる。負傷者や捕虜を加えると、ロシア軍はウクライナでの戦闘力の3分の1程度を失ったことが明らかである。訓練された人材は貴重な資源となりつつあり、ロシア政府は先週からウクライナ東部ドンバス地域に残存兵力を集中させて新たな攻勢をかけているが、前線の大隊の一部を強化するためにワーグナーの傭兵を雇わざるを得なかったと考えられる。英BBCは、約30人のロシア人パイロットが死亡したと報じている。ロシア空軍も明らかに、経験豊富な飛行士を補充するのに苦労している。
『フォーブス』 は、ドンバス地方におけるロシア軍の前進はウクライナにとって深刻な脅威であるが、ロシアが訓練の出来ている最後の人材(つまり傭兵)を使って、ロシアの支配地域からわずか数キロ離れたところにある数十のウクライナの守備隊のうち1つを包囲しているとしたら、今後のロシアの攻勢拡大の見通しは芳しくないと言えるだろう、と指摘している。
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