イランのハッサン・ロウハニ大統領が今週来日する。イラン大統領としては19年振りの訪日となるが、安倍晋三首相のこれまでの対イラン親睦政策が奏功しているものとみられる。そこで同首相としては、米・イラン間悪化に伴うホルムズ海峡不安定化に対応するため、米主導の有志連合に加わらない代わり、“調査・研究”目的での自衛隊中東派遣について、同大統領の理解を求めたいと考えている。
12月17日付米
『ロイター通信』:「米・イラン間緊張激化の中、イランのロウハニ大統領が訪日」
イランのハッサン・ロウハニ大統領が12月20~21日、米同盟国である日本を訪問する。
イランは目下、核の問題で米国と激しく対立しており、日本の協力を求めたい意向とみられる。
イランは、1979年のイラン革命で米国支援の王制を倒して以来、米国とことごとく対立してきたが、イランとの友好関係を保っている日本が、しばしば両国間の外交的仲介を試みてきている。...
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12月17日付米
『ロイター通信』:「米・イラン間緊張激化の中、イランのロウハニ大統領が訪日」
イランのハッサン・ロウハニ大統領が12月20~21日、米同盟国である日本を訪問する。
イランは目下、核の問題で米国と激しく対立しており、日本の協力を求めたい意向とみられる。
イランは、1979年のイラン革命で米国支援の王制を倒して以来、米国とことごとく対立してきたが、イランとの友好関係を保っている日本が、しばしば両国間の外交的仲介を試みてきている。
そして直近でも、ドナルド・トランプ大統領が昨年、2015年に成立したイラン核合意からの離脱を宣告して以来、両国間の緊張は最大限まで高まっている。
今回のイラン大統領訪日に当り、菅義偉官房長官は12月17日の記者会見で、中東の緊張緩和に資するため、米国、イランはもとより、他関係国とも十分連携して外交努力を続けていく意向だと表明した。
一方、ホルムズ海峡の航行の安全確保に向けて、米国主導で有志連合による軍艦派遣が進められている(編注;現下の参加国は米、豪、英国、サウジアラビア、アラブ首長国連合、バーレーン、アルバニアの7ヵ国)。
日本はこの有志連合に加わらない代わりに、“調査・研究”の目的で自衛隊を中東に派遣する意向を表明している。
『共同通信』報道によると、ロウハニ大統領は安倍首相に対して、イランは日本による艦船派遣には反対しないと伝える意向だという。
イランはこれまで、中東の原油輸送等を不安定化させるとして、米国主導の有志連合含めて、外国の軍隊の進出に真っ向から反対してきている。
なお、『共同通信』は、日本の自衛隊が派遣されるのは、アラビア海北西部のオマーン湾(編注;ホルムズ海峡から大洋に出た先)や、紅海とアデン湾をつなぐバーブ・アル=マンデブ海峡であると報じた。
一方、イラン国営メディア『IRNA通信』は12月16日、アッバース・アラーグチー外務次官の公式発表として、イランと日本の両国間の共通の国益に鑑み、ロウハニ大統領が12月20日から訪日することになったと報じている。
同日付イラン『IRNA通信』:「イランのロウハニ大統領と日本の安倍首相が12月20日に会談」
日本政府は12月17日、ハッサン・ロウハニ大統領が訪日して、安倍晋三首相と12月20日に首脳会談を持つ予定である旨発表した。
菅官房長官は、両首脳間では様々な問題について協議する予定で、特に目下の不安定な中東問題に時間が割かれることになろうと言及した。
同大統領の訪日は、2000年にモハンマド・ハタミ大統領(当時)が訪問して以来となる。
また、同首相が今年6月、1978年に当時の首相がイラン訪問(編注;福田赳夫氏が同年9月訪問)して以来初めてイランを訪問したが、それから6ヵ月後のイラン首脳の訪日となる。
2015年に成立したイラン核合意から、トランプ大統領が突然離脱すると宣言して以来、中東情勢が特に不安定になっている。
日本は当該イラン核合意の正規メンバー国ではないが、折に触れてイラン側に対して同合意内容から逸脱しないように提言してきている。
日本としては、原油輸入量の約90%を中東各国に依存しており、原油輸送に支障を来すことを非常に懸念するとの背景がある。
なお、日本は、米国主導のホルムズ海峡への艦船派遣の有志連合に加わらないことを決定しているが、イランはもとより米国との関係を毀損しないよう、研究目的で自衛隊を中東に派遣する意向である。
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イランは15日、同国の政府機関のサーバーを標的とした外国からの組織的で、大規模なサイバー攻撃の試みを防御システムが未然に検知、阻止したと発表した。同国の国営放送プレスTVなどが報じた。
イラン国内での報道を受けて、
『AP通信』『CNN』『BBC』などがその内容を伝えた。ツイッターで発表を行ったアザリ・ジャフロミ通信・情報技術相は、11日にも国営イラン通信(イスラム共和国通信、IRNA)に対し、外国政府による同国の電子インフラへの大規模なサイバー攻撃を阻止したと明かしていたが、詳細については説明しなかった。ジャフロミ氏はさらに、その前日の10日、イランの銀行を狙い、数百万人の顧客の口座情報がハッキングされたとの報道を否定した。
ジャフロミ氏は、今回のサイバー攻撃について、イランの防御システムが、「APT27」として知られる中国系組織が仕掛けた、政府の機密情報に対する攻撃を阻止したと説明した。同氏は攻撃されたサーバーを特定し、ハッカーらを追跡したとしている。
ジャフロミ氏は今年6月、米国がイランのミサイル制御システムへのサイバー攻撃を行ったが、失敗に終わったことを明らかにした。プレスTVは「米国は懸命に攻撃を試みているが、成功に至っていない。」との同氏の当時の発言を伝えている。ジャフロミ氏は、イランは2018年3月からの1年間で、3300万件のサイバー攻撃を封じたと強調していた。
当時、事情を知る米国の当局者らは、米サイバー軍がイランの諜報組織への報復措置として、サイバー攻撃を行ったとメディアに語っていた。同作戦の目的は、イランが支援するイスラム教シーア派の武装組織カタイブ・ヒズボラの通信ネットワークを破壊することだったという。
米メディアは当時、米国のサイバー攻撃は、ホルムズ海峡でのイランによる米国の偵察用ドローン(無人航空機)撃墜や、サウジアラビアの石油施設への攻撃、各国のタンカー襲撃に対する報復措置と報じた。
米国防総省は、6月のサイバー攻撃についてはコメントしていない。中東などの軍事作戦を監督する米中央軍司令部の報道官、ウィリアム・アーバン大佐は、「米中央軍は、いかなるサイバー攻撃に関してもコメントしない。」と述べた。
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