アルメニアは、アルメニア人とアゼルバイジャン人が衝突するナゴルノ・カラバフ紛争におけるトルコのアゼルバイジャン支援は、トルコの拡張主義政策の一つの過程にしか過ぎないとし、エルドアン大統領の帝国主義的外交政策に対し警鐘を鳴らした
仏
『レゼコー』によると、アルメニアを訪問しているフランス国会議員の代表団を前に、アルメニアのニコル・パシニャン首相は「トルコのエルドアン大統領は、オスマン帝国の再興にも似た拡張主義的戦略を進めており、ナゴルノ・カラバフだけでなく、シリア、リビア、キプロス、エーゲ海でもその戦略に沿った政策を展開している」と述べた。そして、かつてオスマン帝国の影響下にあった「イラクやレバノンに干渉していく」こともためらわないだろうと指摘した。
ナゴルノ・カラバフでの1ヶ月間の戦闘を経て、トルコの支援を受けているアゼリ軍が、優勢な立場になってきた中、こうした懸念は、アルメニア内で広がっているという。アゼルバイジャンが勝利すれば、即座に、ナゴルノ・カラバフ住民15万人の集団脱出を意味する。これは、わずか500万人の人口で、ディアスポラからの送金を除けばほとんど資源のないアルメニアのような国にとって耐え難い負担となる。
アルメニア議会の副議長を務めるリナ・ナザリャン氏は、この紛争は、「領土や宗教という単純な問題」(アルメニア人はクリスチャン、アゼリ人はスンニ派イスラム教徒)ではなく、独裁者に対する民主主義という、別の価値観との戦いであり、生きるか死ぬかという戦いなのだと訴えている。そして、トルコが支援しているアゼルバイジャンが勝った場合、トルコは東地中海、コーカサス、中央アジアの支配に乗り出すだろうと警告した。
『アルメンプレス』によると、パシニャン首相は、イランのIRNA通信とのインタビューで、ナゴルノ・カラバフの停戦の確立を妨げる要因は、トルコの拡張主義的外交政策であると指摘した。
同首相は「トルコが野心的な目標を掲げて、停戦を弱体化させようとしているのは明らかだ。トルコはナゴルノ・カラバフを標的にしているだけでなく、南コーカサス地域での自らの存在感を押し付けようとしている。ここで強調しておきたいのは、これはナゴルノ・カラバフの東・北・南東への影響力拡大を目指すトルコの帝国主義政策の一環であり、地域のすべての国に直接影響を及ぼすものであるということだ。この事実を真剣に検討する必要があり、地域の利害関係者は、この点での立場を表明すべきである」と語った。
首相は、ナゴルノ・カラバフとの戦争が事前に計画されていたことを確信しているとも述べた。「アゼルバイジャン共和国は、紛争ぼっ発の1ヶ月半前にトルコとの合同軍事演習を行い、演習終了後もトルコ軍の一部がアゼルバイジャンに留まった。トルコはシリアのテロリストも募集してアゼルバイジャンに送り、事前計画された紛争に参加させることを目的としていた。侵略が事前に計画されていなければ、シリアからアゼルバイジャン共和国に軍隊を移動させる理由はなかっただろう。」と述べ、「私たちは、地域全体に脅威をもたらす事前に計画された大規模な戦争の真っ只中にいる」と指摘した。
『ロシアトゥデイ』によると、アルメニアのパシニャン首相は25日付のインドのチャンネルWIONとのインタビューで、ナゴルノ・カラバフ地域にロシアの平和維持軍を派遣することが、現在の紛争の解決策になる可能性があると述べたという。
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イランのハッサン・ロウハニ大統領が今週来日する。イラン大統領としては19年振りの訪日となるが、安倍晋三首相のこれまでの対イラン親睦政策が奏功しているものとみられる。そこで同首相としては、米・イラン間悪化に伴うホルムズ海峡不安定化に対応するため、米主導の有志連合に加わらない代わり、“調査・研究”目的での自衛隊中東派遣について、同大統領の理解を求めたいと考えている。
12月17日付米
『ロイター通信』:「米・イラン間緊張激化の中、イランのロウハニ大統領が訪日」
イランのハッサン・ロウハニ大統領が12月20~21日、米同盟国である日本を訪問する。
イランは目下、核の問題で米国と激しく対立しており、日本の協力を求めたい意向とみられる。
イランは、1979年のイラン革命で米国支援の王制を倒して以来、米国とことごとく対立してきたが、イランとの友好関係を保っている日本が、しばしば両国間の外交的仲介を試みてきている。...
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12月17日付米
『ロイター通信』:「米・イラン間緊張激化の中、イランのロウハニ大統領が訪日」
イランのハッサン・ロウハニ大統領が12月20~21日、米同盟国である日本を訪問する。
イランは目下、核の問題で米国と激しく対立しており、日本の協力を求めたい意向とみられる。
イランは、1979年のイラン革命で米国支援の王制を倒して以来、米国とことごとく対立してきたが、イランとの友好関係を保っている日本が、しばしば両国間の外交的仲介を試みてきている。
そして直近でも、ドナルド・トランプ大統領が昨年、2015年に成立したイラン核合意からの離脱を宣告して以来、両国間の緊張は最大限まで高まっている。
今回のイラン大統領訪日に当り、菅義偉官房長官は12月17日の記者会見で、中東の緊張緩和に資するため、米国、イランはもとより、他関係国とも十分連携して外交努力を続けていく意向だと表明した。
一方、ホルムズ海峡の航行の安全確保に向けて、米国主導で有志連合による軍艦派遣が進められている(編注;現下の参加国は米、豪、英国、サウジアラビア、アラブ首長国連合、バーレーン、アルバニアの7ヵ国)。
日本はこの有志連合に加わらない代わりに、“調査・研究”の目的で自衛隊を中東に派遣する意向を表明している。
『共同通信』報道によると、ロウハニ大統領は安倍首相に対して、イランは日本による艦船派遣には反対しないと伝える意向だという。
イランはこれまで、中東の原油輸送等を不安定化させるとして、米国主導の有志連合含めて、外国の軍隊の進出に真っ向から反対してきている。
なお、『共同通信』は、日本の自衛隊が派遣されるのは、アラビア海北西部のオマーン湾(編注;ホルムズ海峡から大洋に出た先)や、紅海とアデン湾をつなぐバーブ・アル=マンデブ海峡であると報じた。
一方、イラン国営メディア『IRNA通信』は12月16日、アッバース・アラーグチー外務次官の公式発表として、イランと日本の両国間の共通の国益に鑑み、ロウハニ大統領が12月20日から訪日することになったと報じている。
同日付イラン『IRNA通信』:「イランのロウハニ大統領と日本の安倍首相が12月20日に会談」
日本政府は12月17日、ハッサン・ロウハニ大統領が訪日して、安倍晋三首相と12月20日に首脳会談を持つ予定である旨発表した。
菅官房長官は、両首脳間では様々な問題について協議する予定で、特に目下の不安定な中東問題に時間が割かれることになろうと言及した。
同大統領の訪日は、2000年にモハンマド・ハタミ大統領(当時)が訪問して以来となる。
また、同首相が今年6月、1978年に当時の首相がイラン訪問(編注;福田赳夫氏が同年9月訪問)して以来初めてイランを訪問したが、それから6ヵ月後のイラン首脳の訪日となる。
2015年に成立したイラン核合意から、トランプ大統領が突然離脱すると宣言して以来、中東情勢が特に不安定になっている。
日本は当該イラン核合意の正規メンバー国ではないが、折に触れてイラン側に対して同合意内容から逸脱しないように提言してきている。
日本としては、原油輸入量の約90%を中東各国に依存しており、原油輸送に支障を来すことを非常に懸念するとの背景がある。
なお、日本は、米国主導のホルムズ海峡への艦船派遣の有志連合に加わらないことを決定しているが、イランはもとより米国との関係を毀損しないよう、研究目的で自衛隊を中東に派遣する意向である。
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