中国国営メディア;プロパガンダ喧伝のため米紙に多額の報酬拠出【米メディア】(2020/06/10)
中国国営メディアの一社が、中国プロパガンダ喧伝のため、米紙に対してこれまでに1,900万ドル(約20億5千万円)近くも拠出していたことが判明した。これは、米連邦「外国代理人登録法(FARA、注1後記)」に基づいて、同メディアが米司法省宛に直近で提出した報告書より明らかになったものである。
6月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー』保守系オンラインニュース:「中国のプロパガンダ放送局、米紙に総額1,900万ドル拠出」
中国国営メディアの一社が、プロパガンダ喧伝のため、複数の米紙宛に直近4年間で、総額1,900万ドル近くの報酬を支払っていたことが判明した。
中国共産党運営の英字紙『チャイナ・デイリィ』で、FARAに基づいて直近の活動内容を報告するために司法省に提出した報告書で明らかになったものである。...
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6月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー』保守系オンラインニュース:「中国のプロパガンダ放送局、米紙に総額1,900万ドル拠出」
中国国営メディアの一社が、プロパガンダ喧伝のため、複数の米紙宛に直近4年間で、総額1,900万ドル近くの報酬を支払っていたことが判明した。
中国共産党運営の英字紙『チャイナ・デイリィ』で、FARAに基づいて直近の活動内容を報告するために司法省に提出した報告書で明らかになったものである。
それによると、2016年11月以降2020年4月までの間、『ワシントン・ポスト』紙に460万ドル(約4億9,700万円)余り、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙には600万ドル(約6億4,800万円)近くが支払われている。
両紙は、当該報酬の見返りとして、『チャイナ・デイリィ』紙が投稿した“チャイナ・ウォッチ”なる記事を本紙の中に綴じ込み、中国プロパガンダ喧伝に一役買っていた。
例えば、2018年9月から“一帯一路経済圏構想でアフリカ諸国と連携”とのタイトルの記事を挿入し、習近平(シー・チンピン)国家主席が推す同構想を宣伝した。
また、昨年に挿入した“関税賦課で米住宅が割高に”という記事では、米政府が中国産木材に関税を賦課することによって、結局米市民に関税分の追加負担のしわ寄せがいくとアピールした。
更に、他紙には広告掲載料として、『ニューヨーク・タイムズ』紙(5万ドル、約540万円)、『フォリン・ポリシー(ワシントンDC)』紙(24万ドル、約2,590万円)、『デモイン・レジスター(アイオワ州)』紙(3万4,600ドル、約374万円)、『CQロール・コール(ワシントンDC)』紙(7万6千ドル、約820万円)宛にも支払っている。
また、『ロスアンゼルス・タイムズ』紙(65万7,523ドル、約7,100万円)初め、『シアトル・タイムズ』紙、『アトランタ・ジャーナル=コンスティテューション』紙、『シカゴ・トリビューン』紙、『ヒューストン・クロニクル』紙、『ボストン・グローブ』紙にも、記事の掲載や投稿記事印刷費用として、合計760万ドル(約8億2,100万円)の報酬を支払っている。
以上のとおり、当該報告書から分かることは、米紙に対して総額1,860万ドル(約20億900万円)、ツイッターでの宣伝費用26万5,822ドル(約2,870万円)の報酬を支払っていたことである。
今回の報告書提出は、司法省が『チャイナ・デイリィ』紙に対して何年もの間、FARAに基づいて米国における活動報告を半年に一度提出するよう求めてきた結果、この程漸く同紙が6月1日付で提出してきたものである。
なお、米国の民主活動グループはこれまで長い間、中国政府が米メディア網を駆使してプロパガンダを喧伝していると警鐘を鳴らしてきた。
フリーダム・ハウス(注2後記)及びフーバー研究所(注3後記)は特に、『チャイナ・デイリィ』紙投稿の記事によって、米メディアへの影響力駆使に努めていると警戒を強めている。
また、最近でも、『チャイナ・デイリィ』紙初め中国国営メディアが、挙って中国政府擁護に注力している。
すなわち、新型コロナウィルス感染問題で、中国政府が米国や他西側諸国より厳しく責任追及されていることから、政府高官の意を酌んで、批判の芽を逸らさせようと躍起になっている。
(注1)FARA:1938年に可決された米国の法律で、「政治的または準政治的権能を持つ」外国勢力の利益を代表するエージェント(外国のエージェント)が、その外国政府との関係及び活動内容や財政内容に関する情報を開示することを義務付けたもの。目的は、「米国政府と米国民による、外国勢力の発言と活動の評価」を容易にすること。司法省の国家安全保障局のスパイ対策室のFARA登録ユニットによって管理されている。
(注2)フリーダム・ハウス:ワシントンDCに本部を置く国際NGO団体で、1941年にナチス・ドイツに対抗して、自由と民主主義を監視する機関として設立。毎年193の国と地域に関して、「自由度や人権状況」、「報道の自由度調査」、「インターネットの自由度ランキング」のレポート等を公開している。
(注3)フーバー研究所:1919年に、後の大統領でスタンフォード大学(1885年創立、カリフォルニア州私立大学)卒業生のハーバート・フーバー(1874~1964年、第31代大統領)が大学内部に創設した、公共政策シンクタンク。同研究所はスタンフォード大学の敷地内にあるものの、同大学に付属する研究・教育機関ではない。
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未曾有のウィルス禍を前に内戦中の反政府勢力まで停戦応諾にも拘らず、一人中国のみが東アジアでやり放題【米メディア】(2020/05/06)
既報どおり、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題で、米中間のつばぜり合いがヒートアップしている。そして、中国に対峙するトランプ政権を後押しするかのように、米メディアが中国批判の報道を行っている。すなわち、ウィルス禍の中、中東、南米、アフリカ、アジアにおける内戦中の反政府勢力まで、人道主義的観点からCOVID-19対策を優先すべく、停戦に応諾しているにも拘らず、中国のみが、COVID-19収束見通しが立ったことを良いことに、東・南シナ海で近隣諸国に対する軍事・経済的圧力を増強している、と批判している。
5月5日付
『ロスアンゼルス・タイムズ』紙:「中国、COVID-19初期対応の失敗から眼を逸らさせるべく、マスク外交という“見せかけの善意”に注力」
COVID-19流行抑え込みにほぼ成功したとしている中国は、財力に物を言わせて、COVID-19対策で困窮している欧州、中東、アフリカ、アジアの100余りの国に対して、数千万枚のマスク、数百万の検査キット、及び人工呼吸器(ニューヨーク向けの1千台含めて)を提供している。...
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5月5日付
『ロスアンゼルス・タイムズ』紙:「中国、COVID-19初期対応の失敗から眼を逸らさせるべく、マスク外交という“見せかけの善意”に注力」
COVID-19流行抑え込みにほぼ成功したとしている中国は、財力に物を言わせて、COVID-19対策で困窮している欧州、中東、アフリカ、アジアの100余りの国に対して、数千万枚のマスク、数百万の検査キット、及び人工呼吸器(ニューヨーク向けの1千台含めて)を提供している。
これは正に、COVID-19発症地の中国が、初期対応に誤った過去について、国際社会の眼を逸らさせるべく、マスク外交とでも呼べる“チャーム・オフェンシブ(見せかけの善意、注後記)”以外の何物でもない。
経済的にも軍事力でも劣る多くの国にとって、COVID-19対策での中国支援に感謝しているとしても、大国となった中国のこれまでの外交姿勢(札束で頬を打つやり方)から判断して、中国から、どういった内容で借りを返すよう迫ってくるのか、心穏やかでないはずである。
他国がCOVID-19で忙殺されている隙に、中国が傍若無人に振舞っている行いには、次のようなものがある。
・南シナ海/スプラトリー(南沙)諸島のファイアリークロス礁及びスビ礁上に建設した人工島に、資源探査研究所を設置して、同海域の天然資源探査を独占する体制整備。
・2月中旬~3月中旬にかけて、同海域の海底から世界最大規模での天然ガス塊回収。
・ファイアリークロス礁に戦闘機を配備する等、軍事拠点化を推進。
・南シナ海/パラセル(西沙)諸島の中国実効支配の島嶼海域で操業していたベトナム漁船に中国海警艦が体当たりして沈没。
・台湾付近に、空母や戦艦を配備して実戦訓練を繰り返し、台湾独立派に対して、武力での圧迫を増大。
・東シナ海の尖閣諸島(日本領土とされているが中国も領有権主張)領海内に何度も中国公船が進入、特に今年1~3月の頻度は異常。
中国外交部(省に相当)の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は、COVID-19感染問題を隠れ蓑にしての活動との非難を真っ向から否定し、“中国がCOVID-19感染問題で得た知見を、各国に積極的に提供している”と表明した。
しかし、2016年当時、劉振民(リウ・チェンミン)外交部次官が、マレーシアから“札束で頬を叩かれた”とのクレームに対して、“中国は、財力に物を言わせる外交は行っていない”と全面否定していたが、今もこの姿勢が変わっていないことが覗える。
一方、COVID-19感染問題に対応している諸外国をみてみると、中国の対応と全く逆で、次の例のように、内戦中の反政府勢力までが、人道主義の観点から一時的停戦に応じている。
<中東>
・イエメン;同国イスラム教シーア派の武装組織フーシと戦闘状態にあるスンナ派のサウジアラビアとアラブ首長国連合が、同国のCOVID-19感染拡大を慮って、一方的に停戦表明。
・リビア;新政府に対抗する、カダフィ前政権支持者グループを含めて複数の勢力が反駁し合っているが、目下、一時停戦に合意。
<南米>
・コロンビア;反政府武装組織“民族解放軍(ELN)”が、人道主義を最優先するとして一方的に停戦表明。
<アフリカ>
・カメルーン;南部カメルーン防衛組織の民兵が、一時的停戦を表明。
<アジア>
・フィリピン;ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、共産主義武装勢力との一時的停戦を発表。
・タイ;イスラム系武装組織“国民革命戦線(BRN)”が、組織立ち上げ後初めてとなる停戦を一方的に宣言。
(注)チャーム・オフェンシブ:直訳は“魅力攻勢”。国の場合は、政治や外交の場面で、目標を達成するために、意図的にお世辞や自身の魅力を利用すること。または、政治家が、支持者等相手の心をつかむために,意識的に親切に温かく接すること。
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