米メディアは当初、クルーズ船“ダイアモンド・プリンセス号”における新型コロナウィルス(COVID-19)対策や検疫数の絶対的不足等で、日本の対応策を疑問視してきた。しかし、現状を見ると、感染者数・死者数ともに主要7ヵ国で最も低く、また、最悪の結果となっている米国と比べると、格段の差となっている。そこで、米国内でも徐々に都市封鎖解除が始まる段階で、日本に見習うべきことがあるとして、当初の評価を変更している。
5月30日付
『ヤフー・ニュース』:「米国の都市封鎖解除に当たり、日本のCOVID-19対策が参考に」
米国において、これから徐々に都市封鎖解除が進められていく際、COVID-19再感染問題が発生しないよう、安全で賢く、しかも長続きする対策が求められている。
そこで、結果的にCOVID-19対策が奏功しているとみられる日本のやり方が参考になるかも知れない。
日本は当初、対策がどうしようもなく遅く、また、検疫数も絶対的に少なく、それは現段階においても人口比僅か0.2%と、主要国の中で最低値となっている。
更に、クルーズ船でのCOVID-19対策や、二転三転する政策発表等、混沌の極みであり、その結果として、安倍晋三首相の支持率は急落している。
しかし、5月29日現在の結果をみてみると、日米間には大きな差が生じている。
すなわち、米国の感染者は200万人に近づきつつあり、死者は10万人を超えている(編注;実数は、それぞれ172万1,750人、10万1,617人)。
一方、日本は、総人口1億2,600万人のうち、65歳以上が4分の1以上占めているにも拘らず、それぞれ1万6,673人、886人と圧倒的に少ない。
世界保健機関(WHO)報告では、4月12日に一日の感染者743人の最多記録を出して以来、直近1週間では14~90人と激減している。また、1ヵ月前にはCOVID-19入院患者が1万人いたのに、現在は僅か2千人まで減少している。
これらの結果を踏まえて、効果的だったと考えられる点として、国民皆保険制度、ウィルス耐性の差、遺伝的特徴、高齢者保護や介護施設の拡充等が挙げられる。
ただ、これらのほとんどは米国に適用されておらず、また、今後の対策としてはすぐには採用できない。
そこで、米国が参考にすべきは以下と考えられる。
(1) 国民の自発的な心構え
・日本において、都市封鎖措置等、強制的な方法は取られず(行政はその法的権利も有せず)、ただ国民に、外出自粛、テレワーク採用、バーやレストランに閉店要請等々、協力を訴え続けた。
・『ワシントン・ポスト』紙報道によれば、レストランでは対面ではなく横並び着席、おしゃべりは控えめにしてBGMを聴く等々、非常に細かいところまで要請されたという。
・一方、米国では、ある日ドナルド・トランプ大統領が都市封鎖を打ち出したかと思えば、次には経済活動再開を各州知事に訴え始める等、首尾一貫していないこともあってか、米市民自身も、マスク着用、ソーシャルディスタンスを保つ等々、役人が言うことに耳を傾けない傾向が強い。
・従って、都市封鎖解除後の感染第2波を防ぐためにも、自発的な心構えに訴えかけることが肝要。
(2) 専門家の具体的提言
・感染対策の具体例として、専門家が“3密を避けること”と強調。すなわち、密接、密閉、密集を極力避けることにより、感染リスクが低減可能とアピール。
・多くの国が検疫、感染ルート解明、隔離政策に努めたのに対して、日本は集団感染(クラスター)発生回避に注力。具体的には、スポーツジム、ライブハウス、カラオケバー等、クラスター発生源となったり、あるいは、なりそうな場所に対して、徹底的な対策を講じた。
・一方、ハーバード大精密医療専門のジュリア・マーカス教授は、“米疾病予防管理センター(CDC)は一切実用的な助言をしていない”とし、“マスク着用、外出自粛、手洗い、ソーシャルディスタンスを保つこと、に留まらず、例えば「3密を避ける」等、更に突っ込んだ具体的助言が必要であった”と強調。
(3) マスク着用の習慣化
・日本ではずっと以前から、マスク着用文化が根付いている。例えば、冬季のインフルエンザ対策、また、早春からの花粉症対策。
・そのためもあってか、悪名高い満員電車でも、マスク着用者が多数で、かつおしゃべりもしないため、そこでのクラスター発生は認められていない。
・一方、CDCも漸く、ソーシャルディスタンスが保てない場所-スーパーマーケット、薬局、ガソリンスタンド等-でのマスク着用を提言しているが、残念ながら、米国では、もはやマスク着用が“政治問題化”して“二極分化”してしまっている。
・すなわち、民主党支持者の87%は、都市封鎖解除後でも人混みの中ではマスク着用するとしているのに対して、共和党支持者は42%しか賛同せず、かつ、34%もの人がCDCの提言は厳しすぎると回答している。
・更に、トランプ大統領が、マスク姿のジョー・バイデン民主党候補を嘲笑ったことも影響したのか、同大統領支持者の多い街では、マスク着用者の来店拒否や、ハグ・握手を奨励する店も現れる程。
一方、同日付『CNNニュース』:「日本のテーマパーク、COVID-19対策の新ガイドラインとしてジェットコースター等で叫ばないよう提言」
東・西日本テーマパーク協会はこの程、COVID-19対策上の新ガイドラインとして、非常にユニークな提言を打ち出した。
それは、テーマパーク内のジェットコースター等に搭乗した際、叫ばないよう心掛けること、というものである。
本来のジェットコースター等搭乗の醍醐味と正反対の要請だが、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオジャパン等、日本国内の30以上のテーマパークに適用される。
協会は更に、全従業員に対して、“COVID-19後の新しい形のサービススタイルとして、マスク着用しながらでも目元の笑み、ジェスチャー等でゲストを歓待するよう心掛けること”、また、“手洗い・うがい、ソーシャルディスタンスを保つことはもとより、マスク着用不可のキャスト等は、ゲストと少なくとも1メートルの距離を保つこと”等を求めている。
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中国新疆ウイグル自治区の首都での“ウルムチ動乱(注後記)”発生から、7月5日で10年を迎えた。中国政府は、30年前の天安門事件発生以降、徹底的に民主化運動を取り締ってきたが、同地区におけるイスラム教徒のウイグル族への弾圧も徹底している。直近の調査報道によると、ウイグル族の大人のみならず、子供までも収容施設に放り込んで、中華思想を植え付け、かつ、習近平(シー・チンピン)国家主席への忠誠を誓わせる洗脳教育に取り組んでいるという。
7月5日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「ウルムチ動乱発生から10年経った今も、ウイグル族の厳重監禁措置継続」
10年前の7月5日、中国新疆ウイグル自治区の首都ウルムチで、数百人の暴徒が店舗を襲ったり、駐車中の車を転覆させたりの暴動が発生した。
この直接の原因は、中国南部の都市の工場に出稼ぎにきていた2人のウイグル人が、同じ工場で働く漢民族の中国人に殺害されたことに端を発したもので、そこに至るまでの長期間、ウイグル族の宗教・文化や言語等で差別を受けていたことへの不満が一挙に噴出したものとみられる。
ただ、この暴動を契機に、中国政府によるウイグル族他少数民族への締め付けが厳しくなっている。
中国問題専門家によれば、100万人に及ぶウイグル人、カザフ人やその他のイスラム教徒が、半ば強制的に収容施設に入れられたという。
また、ウルムチ動乱以降も、駅舎の襲撃や爆弾騒ぎが相次いだことから、政府の取り締まりが更に厳しくなっている。
しかし、中国政府は、当該収容施設は、テロ行為を止めさせるための教育や就職用の訓練を行うところだと説明している。
ところが、収容施設を出所したウイグル人らが『AP通信』に語ったところによれば、施設内では、イスラム教からの決別、中国共産党及び習国家主席への忠誠を誓わせる等、政治的洗脳や心理的拷問が繰り返されているという。
一方、ここ数年で、新疆ウイグル自治区内の至る所に顔認証システム機能付きの監視カメラが設置され、ウイグル人等の行動が常に監視されている。
また、同地区を取材するジャーナリストには絶えず私服警官が付きまとい、撮影した映像は強制的に削除されている。
更に、学校では生徒に北京語を習得させ、ウイグル語を話すと罰が与えられている。
同日付英国『ヤフー・ニュース』:「中国政府、“学校を隠れ蓑にして”イスラム教徒の子弟を親から引き離し」
直近の調査報道によると、新疆ウイグル自治区のウイグル族の子弟が親から引き離され、漢民族伝統の中華思想を植え付けられているという。
『BBCニュース』が、新疆ウイグル自治区と国境を接するトルコ側に逃れてきたウイグル族のおよそ60家族に聴取した内容として報道した。
それによると、同地区で親から引き離されて、特殊学校に入れられた100人以上のウイグル族の子供の動静について詳しく証言しているという。
また、同地区のある町では、400人以上のウイグル族の子供の両親が、収容施設かあるいは刑務所に収容されたために、結局親子が引き離されてしまったという。
そして、人権活動家が近年調査した結果では、特殊学校に入れられた子供は50万人以上に上り、また、同時に収容施設に押し込められた大人も数十万人になるとしている。
しかし、かかる非難に対して中国政府は、ウイグル族の人たちが進んで施設や学校に入り、テロリズム撲滅やイスラム過激主義排除のための教育を受けていると反論している。
(注)ウルムチ動乱:2009年7月5日に、中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市において発生した騒乱事件。このデモに先立つ6月に広東省の工場でデマを発端として、玩具工場で労働者として勤務しているウイグル人が中国人に襲撃されて多数が殺傷されたが、襲撃側の刑事処分が曖昧にされたことから、ウイグルでの不満が高まったことが本事件の引き金となったとされる。 当時の『新華社通信』報道によると、死者192名、負傷者1,721名に上る犠牲者が出たとしている。
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