仏メディアが見る南シナ海問題とASEAN会議(2016/09/09)
G20終了後にラオスで開催されたアセアンの年次サミットでは、主要議題の一つだった南シナ海の領土紛争では、進展はほぼ皆無だったと言える。仲裁裁判所が下した中国の排他的領土主張を認めない判決を、中国は無視する形でスカルボロ環礁の埋め立てを続けるが、参加国はこの議題に極めて慎重だった。フランスメディアは次の通り報じる。
『ルモンド紙』は、南シナ海紛争にアセアン加盟国が慎重姿勢を見せた事で、「アセアン会議で中国は隣国の批判を逃れる」と報じる。また、この慎重姿勢が「中国の覇権主義で地域の緊張が益々熾烈になる事に加担する」と批判的だ。「ルモンド紙」は「アセアンの最終声明のどこにも中国の名前が無く」、「中国の人工島建設継続が緊張を高めると警告して海洋法順守を求めるにとどまった」事に驚きを見せた。南シナ海域での中国の領有権主張は不当で海洋法に違反するとしてハーグ仲裁裁判所は裁定を下したが、中国はこの裁定を無視し続ける。...
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『ルモンド紙』は、南シナ海紛争にアセアン加盟国が慎重姿勢を見せた事で、「アセアン会議で中国は隣国の批判を逃れる」と報じる。また、この慎重姿勢が「中国の覇権主義で地域の緊張が益々熾烈になる事に加担する」と批判的だ。「ルモンド紙」は「アセアンの最終声明のどこにも中国の名前が無く」、「中国の人工島建設継続が緊張を高めると警告して海洋法順守を求めるにとどまった」事に驚きを見せた。南シナ海域での中国の領有権主張は不当で海洋法に違反するとしてハーグ仲裁裁判所は裁定を下したが、中国はこの裁定を無視し続ける。ベトナムや提訴したフィリピンは最も領土問題の影響を受ける国だが、声明は「仲裁裁判所の裁定を言及しただけ」だった。「東南アジアと中国の関係は最も重要で相互の利益をはぐくみ、平和、安定と繁栄に貢献する」と称えすらした。
「ルモンド紙」は、比大統領によるオバマ大統領への侮辱も中国の根回しの一環とみており「フィリピンが演出した挑発」と示唆する。結果的に両国大統領会談は中止となり、フィリピン大統領は「仲裁裁判所提訴ではなくオバマ大統領への失言」によって語られる事となった。南シナ海問題は完全にかすんだ。
「ルモンド紙」によると「分裂を利用する中国がよく使う手法」だ。例えば「カンボジアは中国から6億ドルの支援と助成金を受けており、中国に批判的な合意を阻止するために何でもやる」中国昆明アセアン会議や前回の外相会議では、南シナ海に言及した声明案からカンボジアは土壇場で手をひいた。また7月には外相会議が仲裁裁判所に言及しない内容となった事を挙げる。
一方で多くの国にとって中国は最大貿易相手国で、中国の感情を損なう事を敬遠する。フランスも例外ではないが、南シナ海問題ではベトナムを選ぶようだ。
『レゼコー紙』によると、G20後にオランド大統領がベトナムで「フランスは海上の軍事海域の安定化においてベトナムを後押し、南シナ海航行の自由と海洋法順守を求めてベトナムと戦略的パートナーシップ強化」すると明言した。以前からドリアン仏防衛大臣は「南シナ海の状況はEUに直接関係する」として、「EUからの動員」と「欧州各国が南シナ海での軍事プレゼンスを確保する事」を提案してきた。今までは「英国離脱」と「中国の感情考慮」が優先された。しかし今後は「EU加盟国はベトナムとの戦略的提携を通して南シナ海の安定化に乗り出す」と「レゼコー紙」は見る。「軍事面でフランスが発言すれば他国が追随するのが常」だからだ。また中国とベトナムの間でオランド大統領は微妙な均衡を保つ必要があると伝える。
『フィガロ紙』は米国が慎重姿勢を見せた事に注目する。オバマ大統領が今回の侮辱の一件後、フィリピンに航空機2機を贈呈した事を、「武力バランスの必要性を見失わない」と、冷静な行為を称えた。
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仏メディア:北朝鮮ミサイル発射(2016/09/07)
杭州のG20サミット開催中のタイミングで北朝鮮は弾道ミサイル3発を発射した。核兵器と弾道ミサイル開発国連決議を無視した格好の北朝鮮の挑発行為に対し、安全保障理事会で非難決議が全会一致で採択された。フランスメディアは次の通り報じる。
『レゼコー紙』は、北朝鮮国営
『朝鮮国営通信』の報道内容から「金正恩第一書記は日本の米軍基地に新たな狙いを定めた模様」と報じる。「レゼコー紙」によると、北朝鮮西部から発射された弾道ミサイルはノドン型で1000キロ飛行し3発とも日本海の防空識別圏で落下した。また金正恩第一書記は実験目的を「信頼性、標的まで到達する精密性、改良版弾道ミサイルの飛行の安定性の再評価」と述べ、軍備強化は「太平洋に駐在する米国の侵略の起点となる軍事基地に対する攻撃のため」と発言した。...
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『レゼコー紙』は、北朝鮮国営
『朝鮮国営通信』の報道内容から「金正恩第一書記は日本の米軍基地に新たな狙いを定めた模様」と報じる。「レゼコー紙」によると、北朝鮮西部から発射された弾道ミサイルはノドン型で1000キロ飛行し3発とも日本海の防空識別圏で落下した。また金正恩第一書記は実験目的を「信頼性、標的まで到達する精密性、改良版弾道ミサイルの飛行の安定性の再評価」と述べ、軍備強化は「太平洋に駐在する米国の侵略の起点となる軍事基地に対する攻撃のため」と発言した。この事から「つまり日本に駐留する米軍基地とグアム島が北朝鮮の射程距離に入った」との韓国の専門家の見解を採用する。
また「レゼコー紙」は「中国が北朝鮮のミサイル所有を支援したのか?」と小見出しをつけて中国の関与の可能性を報じる。「8月末に北朝鮮の潜水艦から発射されたミサイルは中国のJL-1型ミサイルに酷似しており、中国製もしくはJL-1型に極めて近い改造型である可能性が高い」という米国サンアンジェロ大学のベクトル氏の見解を引用する。この見解は「北朝鮮は中国からミサイルを獲得した事を示唆する」というイスラエルのフィッシャー研究所の専門家と共通の見解という。
『フィガロ紙』はG20開催中でも特に、中国の習近平国家主席と韓国の朴大統領の会談の数時間後に実施された事から、中国への警告でもあったと指摘する。「中国は北朝鮮が懸命に維持したい主要同盟国だが、両国の関係は北朝鮮の核や弾道ミサイル計画で緊張状態にある」。また「韓国は米国の防衛ミサイルTHAADを国内配備して北朝鮮に反撃したが、この決定は論争を呼び、中国とロシアが一斉に非難した」という状況がある。習近平国家主席も「米国ミサイルシステム配備に繰り返し反対し、この問題の扱いを誤れば地域の紛争を激化させると警告」しており、これら「北朝鮮の挑発行為」は「中韓関係に対する挑戦」で両国に揺さぶりをかけているとの見方を示す。
『ルモンド紙』は、国連安全保障理事会は北朝鮮のミサイル発射を強く非難し、さらなる制裁措置を示唆し、北朝鮮に新たな核実験行為を控えるよう求めた事を報じる。理事会宣言が全会一致で採択され、北朝鮮の主要同盟国である中国を含む事を大きく評価する。一方で、核と弾道ミサイルを禁ずる国連決議と制裁措置を北朝鮮は無視する現実があり、効力への疑問が浮き彫りになる。また「ルモンド紙」は弾道ミサイルの飛行距離が伸びて日本のほぼ全土に到達可能になった事、金正恩が実験成功に満足して先制攻撃を示唆した事を報じ、北朝鮮のミサイル技術改良が懸念される。さらに今回は日本への事前通告がなかった。
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