トランプ新大統領:仏メディアがみる各国への影響と動向
トランプ新大統領の一挙一動に世界が注目する中で、トランプ新大統領登場の主要国への影響と動向を読み解く。仏メディアは自国以外では特に、ブレグジット後の英国、中国、日本への影響に関する記事が多くみられる。仏メディアは次の通り報じる。
メイ首相にはトランプ新大統領登場は好機
『レゼコー紙』は「米国との特別な関係が試される」と見出しを付け、「慎重なメルケル独首相に対し、メイ英首相は極めてオープンだった」と報じる。トランプ氏とメイ英首相の電話会談後の英政府の発表によると、メイ首相はトランプ氏から米国に招待された。また「レーガン=サッチャーの蜜月時代よりも緊密な関係を望む」と望むトランプ氏に対し、「英国は変化する世界に適応しなければならない」と応じた。...
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メイ首相にはトランプ新大統領登場は好機
『レゼコー紙』は「米国との特別な関係が試される」と見出しを付け、「慎重なメルケル独首相に対し、メイ英首相は極めてオープンだった」と報じる。トランプ氏とメイ英首相の電話会談後の英政府の発表によると、メイ首相はトランプ氏から米国に招待された。また「レーガン=サッチャーの蜜月時代よりも緊密な関係を望む」と望むトランプ氏に対し、「英国は変化する世界に適応しなければならない」と応じた。また、ジョンソン英外相もトランプ新大統領に善意を示しており、「レゼコー紙」は「英政府も英国の伝統的な実利主義外交を取る」と評する。
英国のトランプ接近の背後には、北大西洋条約機構(以下、NATO)がある。「NATOで米国に次ぐ軍事力を誇る英国政府は、NATOにおける米国のコミットメントを再確認させるべく、トランプ氏に圧力をかける予定」で、「NATOで英国はその役割を期待される」との見方を示す。一方貿易協定では、「保護主義貿易を前面に出すトランプ氏と自由主義経済のメイ首相が妥協点を見つけるのは難しい」と見る。
東アジアでの軍事レース再燃と日本の軍事費負担増
『フィガロ紙』は、日本については「トランプ氏は日本にとって未知数」と報じ、「TPPを拒否するトランプ政権の不確実性の中で、輸出に牽引された最新の日本の経済成長も長くは続かない」とみる。しかしそれより、トランプ新大統領の外交政策が、日本国内の経済政策に深く影響を及ぼす事を「フィガロ紙」は重くみる。日本は伝統的に軍事費をGDPの1%に抑制してきたが、稲田防衛大臣が既に「1%を超える事を妨げる規定は何もない」と発言した事から、「日本は米国から既に、金融バズーカ砲よりも軍事費にもっと予算を使うよう命じられた」可能性を指摘するモルガンスタンレーのエコノミスト山口氏の見解を採用する。トランプ新大統領は東アジアを不安定化させ、費用がかかる軍事レースを再開する可能性が高いため、それに伴い日本国内の米軍の費用負担増加を免れないと見る。
トランプVS中国 既に応酬始まる
『トリビューン紙』は「中国は、トランプ新大統領が関税に固執すればiPhone販売を中止すると脅す」と報じる。具体的には、米国工業活性化のために、中国からの輸入品に45%の関税を課す事をトランプ氏が実施する場合、ボーイングの受注をまとめてエアバスに変更、米国車とiPhone販売中止、トウモロコシと大豆の輸入中止を示唆しており、既に米中の応酬が始まったようだ。
「トリビューン紙」は、トランプの保護主義政策の理由だけでなく、地球温暖化抑止への努力を中国が否認したため、中国との二国間関係を悪化させるポーズが必要だったと分析し、iPhoneの販売中止は余程の事がない限りない実施しないと見る。電話会談では両者は協力する事で一致した模様。仏メディアでは、以前より米中は見かけほど関係は悪くなく、真っ向から対立する事はないとの見方が主流を占める。
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仏メディアがみるトランプ新大統領の変化
トランプ新大統領の誕生に警戒を示しながらもフランスは想定内の出来事であるかのように比較的冷静に受け止められている。「まさか」が起こる事を6月のブレグジット(英国離脱)で経験済みであるだけでなく、反エリート主義のポピュリズムの波は欧州各国にも押し寄せており、一つの政治的変換期との見方が多い。「トランプ勝利はエリート全てに対するもの」(「フィガロ紙」)、「第45代米大統領はブレグジット後のポピュリズムの新たな高まりを示す」(「レゼコー紙」)「トランプ、ブレグジット、FN(仏極右政党)に共通する投票の動機」(
『リベラシオン紙』)など世界的なうねりとして現実的に受け止める。気になるトランプ大統領の動向については、次の通り報じる
大統領の勝利スピーチが選挙中と比べかなり穏やかな論調で行われたように、トランプ氏のウェブサイトも変化があった。
『レゼコー紙』によると、「イスラム教徒の米国への移民を阻止するためのトランプ宣言」と書かれたリンクが、大統領選勝利と共に突然ウェブサイト上から消えた。それだけでなく、最高裁判事指名や経済政策や防衛戦略など、就任後の政策を左右する主要分野に関する詳細な見解が共に削除された。特にイスラム教徒の全面的入国禁止の公約については、共和党員の多くが非難し、世論調査でも過半数の米国人が反対していたことから、「レゼコー紙」は「トランプ氏は目立たないように論争を呼ぶ提案をひっこめる」と見出しを付け「軟化姿勢のサイン」との見方を示すが、トランプ氏からこの件の回答がきていない現時点では断定は避けた。...
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大統領の勝利スピーチが選挙中と比べかなり穏やかな論調で行われたように、トランプ氏のウェブサイトも変化があった。
『レゼコー紙』によると、「イスラム教徒の米国への移民を阻止するためのトランプ宣言」と書かれたリンクが、大統領選勝利と共に突然ウェブサイト上から消えた。それだけでなく、最高裁判事指名や経済政策や防衛戦略など、就任後の政策を左右する主要分野に関する詳細な見解が共に削除された。特にイスラム教徒の全面的入国禁止の公約については、共和党員の多くが非難し、世論調査でも過半数の米国人が反対していたことから、「レゼコー紙」は「トランプ氏は目立たないように論争を呼ぶ提案をひっこめる」と見出しを付け「軟化姿勢のサイン」との見方を示すが、トランプ氏からこの件の回答がきていない現時点では断定は避けた。
『フィガロ紙』も、トランプ新大統領が自身の改革を推し進めるために必要な共和党の過半数を取り込むために、論調を軟化させたとの見方を強める。「トランプ氏は全ての米国人に和解の手を差し伸べる事で、議会で効果的かつ必要な連携を必要とし、内部抗争に飛び込む事は得策ではないとわかっており、シグナルを送る」と評する。
また「フィガロ紙」によると、選挙中に対立関係にあった共和党員が次々とトランプ新大統領への協力と支持を表明し始めている。下院議長のライアン氏は10月のセクハラ告発以来トランプ氏の名を口にする事すらなかったが、当選後は「怒れる米国市民の叫びを聞いた唯一の人物」として歓迎。「ネバートランプ」運動の急先鋒のネブラスカ州議員も「公約を果たせるよう出来る事は力の限り行う」と宣言。「トランプ氏を熱狂的に支持し、意見の相違があれば個人的に話し合う」と上院多数派院内総務議員が表明。取り込みは順調に進んでいる様子。
公約の最優先事項は移民排斥でなくむしろ、「オバマケアと呼ばれるオバマ政権による医療保険改革に関する法律の代替案作成」と「フィガロ紙」は見る。「8年間のオバマ色を消すために共和党員は準備する」と評し、トランプ氏と共和党員の妥協点となると示唆する。
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