仏大統領選:本命サルコジ消える右派指名候補予備選(2016/11/22)
2017年に行われる仏大統領選へ向けて右派と中道派の統一候補指名の予備選(第一回戦)が実施された。サルコジ前大統領、ジュペ元首相、フィヨン元首相の3候補のみつどもえで、サルコジ氏とジュペ氏が本命視されてきたが、ふたを開けてみればフィヨン氏圧勝で予備選を通過し、サルコジ氏は姿を消した。予備選敗北を受けサルコジ氏はブレグジット、米大統領選に続くまさかの結果に最も衝撃を受けたのはメディアかもしれない。仏メディアは衝撃をもって報じる。
『ルモンド紙』は今回の結果は、サルコジの政権復帰を阻止する力が身内の中で大きく働いた結果との見方を示した。党員以外の一般人に投票を認めたのは右派だったが、アンチサルコジを加速させたと見る。トランプ大統領しかり、マクロン仏経済相しかり、日本しかり、離反や身内おろしなど政界再編は世界的な流れのようだ。
右派
『フィガロ紙』は社説で、予備選で最有力視してきたサルコジ氏が消え、本線に最も遠いと思われたフィヨン氏圧勝に「津波!」と見出しを付けた。...
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『ルモンド紙』は今回の結果は、サルコジの政権復帰を阻止する力が身内の中で大きく働いた結果との見方を示した。党員以外の一般人に投票を認めたのは右派だったが、アンチサルコジを加速させたと見る。トランプ大統領しかり、マクロン仏経済相しかり、日本しかり、離反や身内おろしなど政界再編は世界的な流れのようだ。
右派
『フィガロ紙』は社説で、予備選で最有力視してきたサルコジ氏が消え、本線に最も遠いと思われたフィヨン氏圧勝に「津波!」と見出しを付けた。移民政策やテロに厳しい姿勢をみせたサルコジ氏の敗因は「ジュペ氏に対する口激と毒舌が裏目に出て、アンチサルコジ主義を助長した」、「穏健派で右派団結を呼びかけたジュペ氏は反サルコジの受け皿となったがフィヨン氏の政治的手法は影が薄い」と分析する。一方、予備選3週間前に方向転換したフィヨン氏の圧勝については「怒れる有権者が再度テーブルをひっくり返した」「民主主義の危機」と嘆きトランプ氏勝利に重ね合わせる。「フィガロ紙」によると、フィヨン氏は本来の自由主義経済を捨てて「イスラム全体主義に反対する著書、アンチ現ジャーナリズム、アンチ政治ゲーム」など右派の大衆のあらゆる「アンチ」に訴えた。一方トランプ氏と違い、「穏やかな右派像」を確立した事が勝因となった。「討論会でジュペ氏より毅然としてサルコジ氏より穏やか」に有権者にはみえた。
最大経済紙
『レゼコー紙』は「全選挙区、全世代、あらゆる職業で票を根こそぎさらった」事を、「フィヨンという名の見知らぬ人」と評し、全方位的で「アンチ」を軸に勝利したフィヨン氏に批判的である。相手によって戦略を変え、本来のリベラル経済主義を破棄したフィヨン氏をカメレオン的な評価を下す。101県のうち87県でトップに出たが、年齢層、職業が多岐にわたるフィヨン氏の支持者をひとくくりにする事ができず、左派の4分の1までもが支持する。「フィヨンがだんとつトップでサルコジが消えた」この現状を「二重の稲妻」と形容する事からもその衝撃がうかがえる。今回の投票は党員以外の一般市民も参加可能で、400万という前回の大統領指名予備選を大きく上回る人数が投票に参加し、国民の関心の高さがうかがえる。
「レゼコー紙」によると、フィヨン圧勝は社会党には不利に働く。社会党を始めとする左派は、反サルコジ色を強く出していたため、方針転換に迫られているだけでなく、オランド大統領に反旗を翻した経済相のマクロン候補に有利に働く。オランド大統領が左派指名予備選で敗退する可能性を指摘する。
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COP22:米投資家トランプ氏へ圧力(2016/11/17)
昨年議長国フランスのメディアは、パリ協定合意を求めて特に米国の投資家や大企業が中心となって意見書を出していた事に注目し、気候変動枠組み条約に加盟する全196か国採択という快挙を成し遂げた影の立役者の一つと見た。今回もトランプ次期大統領に対する米国企業や投資家など資本主義の圧力に注目する。
『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。...
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『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。「気温上昇を2度未満に抑制するために、自分達の分担分を達成するよう努力」、「企業と国家両方が結集する事が必須で、環境とビジネス両方を維持する最良の手段」と並々ならぬ決意で圧力をかけた。これら企業には持続可能な発展に関連する部署があり、今回の意見書の署名者(社)の殆どはCOP21から参加しており、トランプ氏当選の翌日に直ぐに再結集した。世界自然保護基金(WWF)もパリ協定の目標達成に民間分野の声が必須と考える事に触れ、民間の力に期待を寄せる。
『レゼコー紙』も民間力に注目するが、パリ協定に関する米国を次の見出しで総括する。「企業のトランプ次期大統領への警告」、「ケリー長官は米国の目標維持を主張」、「化石異燃料の終焉は明日には来ない」。「レゼコー紙」も資本による警告の有効性を認め、「トランプ氏の気候変動懐疑主義によって、米国が気候への取組みを放棄する事になならない」との見方を示し、「企業や投資家が意見書で打ち出した要求は、低炭素経済の米国が将来繁栄するための条件の一つ」と意義付ける。また、負担を強いられるはずの民間企業の中でも米国ビジネスのアイコンともいうべき企業がパリ協定の目標達成のために、自分の分担分を果たす準備が出来ていると、進んで言ってきている」と、驚きをもって確実性を見出す。
また、
『フィガロ紙』によると、COP22での演説で、「再生可能エネルギーが徐々に競争力をつけて、気候とエネルギー需給両方の観点から選択できるよう方向づけるのは“市場”」と、ケリー米国務長官も述べており、民間力に期待をよせる。
とはいえ、直ぐに状況が改善する訳ではない。
『AFP通信』によると、「米国は現在設定された国際目標を達成するべくあるべき道筋にいる」とケリー長官が述べたものの、「化石燃料は使用料が増え続け、国際エネルギー機関(IEA)は、「石油ガス石炭は、以前2040年のエネルギー消費の74%に相当する」と予測を出し危機感を示す。トランプ政権がパリ協定に留まったとしても、道のりは長い。
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