既報どおり、ドナルド・トランプ大統領(74歳)が新型コロナウィルス(COVID-19)陽性となり先週末より入院・加療に入っている。そこで、中央情報局(CIA)元支局長が、敵対国が普段以上にスパイ活動等を活発化させる恐れがあるので、国防総省他関係省庁が目を光らせる必要があると訴えている。
10月4日付米
『Foxニュース』:「元CIA支局長、トランプ大統領がCOVID-19罹患で不在の今こそ、国防総省は敵対国のスパイ活動等の阻止が“非常に重要”と訴え」
元CIA支局長のダニエル・ホフマン氏は10月3日、ドナルド・トランプ大統領がCOVID-19罹患で入院・加療の今こそ、敵対国からのスパイ活動等に普段以上に目を光らせることが肝要だと訴えた。
同氏コメントは、直前に国防総省から出された、(大統領不在という)異例な時期にあっても必要なら軍事作戦は可能だとの声明を受けてのものである。
同氏は、『Foxニュース』の報道番組「ビル・ヘマー・レポート」に出演してコメントしたもので、“この非常事態にあって、政府、特に国防総省は、同盟国はもとより全米市民を安心させるため、敵対国からの不穏な動きをいつでも阻止することができると宣言しておくことが非常に重要だ”と言及している。
同番組司会者のビル・ヘマー氏から疑わしい場所等を尋ねられて、同氏は、“自身の経験則より言って、南シナ海、台湾、台湾海峡、イラク、イラン軍部、北朝鮮等、米国の関与が重要とされている場所・国において、米国を標的にしたサイバー攻撃等のスパイ活動が繰り広げられることが予想される“とコメントした。
更に同氏は、“マイク・ポンペオ国務長官(56歳)率いる国務省の外交官らも、同盟国との連携はもとより敵対国の監視に注力しており、これによって、米国とのビジネスも、また世界の安全保障問題も普段通りに対応が可能となっていることを知らしめることになる”とも付言した。
なお、同氏は、“特に、ロシアや中国のスパイ活動が活発化する恐れがあり、注視する必要がある”とも強調した。
一方、同日付英国『ザ・テレグラフ』紙:「米国防総省、トランプ大統領COVID-19罹患発表後に「地球最後の日」用軍用機離陸という事態につき補足説明」
トランプ大統領がCOVID-19罹患を10月1日に公表した直後、「地球最後の日」用軍用機(注1後記)2機が東・西海岸からそれぞれ離陸したことから、米国が敵対国に攻撃を仕掛ける準備に入ったとの噂がソーシャルメディア上で広まった。
そこで米国防総省はすぐさま、その噂を打ち消すコメントを発表した。
すなわち、米戦略軍(注2後記)の報道官が『ザ・テレグラフ』紙のインタビューに答えて、“両機の離陸は予め計画されていたもので、偶々大統領の入院の時期と重なったもの”だと強調した。
ただ、米国防総省高官は10月2日、トランプ大統領が罹患していても“米軍総司令官”であることに変更はなく、同大統領がワシントンDC北西部のウォルター・リード米軍医療センター(メリーランド州ベセズダ在、前身は1909年設立)に入院するために大統領専用機マリーン・ワンに搭乗した際も、“核のフットボール(注3後記)”を携行していた、とコメントしている。
(注1)「地球最後の日」用軍用機:通称「地球最後の日」に使われる軍用機ボーイングE-6Bマーキュリー。米大統領と国防長官からの軍事命令を受け取り、深海に潜むステルス潜水艦に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射を命令するために作られた通信中継局の機能を果たす。また、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射をリモートコントロールする機能も備えている。
(注2)米戦略軍:第二次世界大戦での広島、長崎への原子爆弾投下を皮切りに米軍は核攻撃能力を保有することとなったが、核攻撃の指揮系統は、空軍や海軍に分散していたため、冷戦終了後、戦略爆撃機および大陸間弾道ミサイルを保有していた米空軍戦略航空軍団と、海軍の弾道ミサイル搭載潜水艦部隊を統合指揮するため、1992年に発足させた。
(注3)核のフットボール:米大統領が司令部を離れている時でも核攻撃の許可を出せる道具が入った黒いブリーフケース。このブリーフケースは、米軍の戦略的防衛システムにおいて、ホワイトハウス地下のシチュエーションルームなどの固定された司令部に対する移動可能な拠点として機能する。なお、他に、原子フットボール、大統領の非常用サッチェル、核のボタン、ブラック・ボックス、あるいは単にフットボールとも呼ばれる。
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既報どおり、ドナルド・トランプ大統領(74歳)は、ほとんどの世論調査で対抗馬のジョー・バイデン民主党候補(77歳、2009~2017年副大統領職)に差を付けられていることに嫌気してか、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の収束がみえるまで投票日を延期するよう要望すると泣きを入れる程である。そこで、内外の関心は、バイデン氏が誰を副大統領候補に選出するかに集まっている。本邦メディアの中には、クリントン政権(1993~2001年)時代にひどい目に遭った日米貿易戦争に深く関わったスーザン・ライス元大統領補佐官(55歳)を警戒している記事が散見されるが、欧米メディアは、カーマラ・ハリス上院議委員(55歳、元カリフォルニア州司法長官、2017年現職)が最有力としている。
8月1日付
『ロイター通信』:「バイデン氏の副大統領候補指名がいよいよ大詰め」
大方の世論調査の結果、ジョー・バイデン民主党候補が大統領選を有利に進めていることから、目下の関心事は、同氏が誰を副大統領候補に選ぶか、に集まっている。
仮に同氏が当選した場合、来年1月の大統領就任時、歴代大統領の最高齢となることから、同氏は1期4年で退き、後を託す意味も含めた副大統領候補であるが故に、通常以上に関心が高まっている。
更に、同氏はかねてより、女性候補の中から選ぶ、と明言していること、また、現下の“ブラック・ライブズ・マター”運動に端を発した人種差別問題が深刻化していることもあって、有色人種が選ばれるという期待の声も高まっている。
以上の背景から、民主党高官やバイデン氏支援者の情報によると、次の3名が最終候補と言われている。
(1) カーマラ・ハリス上院議委員(2011~2017年カリフォルニア州司法長官、2017年より現職)
(2) スーザン・ライス氏(1997~2001年アフリカ担当国務次官補、2009~2013年国連大使、2013~2017年国家安全保障問題担当大統領補佐官)
(3) カレン・バス下院議員(66歳、2008~2010年カリフォルニア州議会議長、2011年より現職)
その中でも、最有力とみられるのがハリス上院議員で、今週(7月末)には、カリフォルニア州の政府高官、労組代表、経済界代表らが挙ってバイデン氏側近の身元調査・審査委員会委員の元を訪れ、同議員を強く推挙する運動に出ている。
ハリス氏自身も7月31日、オンラインで実施されたブラック・ガールズ2020(注1後記)に参加して自身の主張等をアピールしている。
また、バイデン氏自身もハリス氏を支持している模様で、7月28日のキャンペーン・イベントの際には、ハリス氏を称賛する事項を記載したメモを事前に準備していたことがテレビ映像で確認されている。
一方、バス下院議員については、当初は余り目立たなかったが、直近で支持する声が高まってきており、ハリス氏に取って代わる勢いである。
ただ、支持が高まるにつれて反対派から出てきている批評は、バス氏の親キューバ対応である。
すなわち、バス氏が1970年代に左翼団体とキューバを何度か訪問していたり、2016年には、故フィデル・カストロ元国家評議会議長(1926~2016年、1959年に米傀儡政権を倒した革命家)を称賛する発言をしていること等が問題視されている。
そこで、民主党関係者は、もしバス氏が副大統領候補に選ばれた場合、ドナルド・トランプ大統領がこの点を突いてくることは必至と考えられ、弱点になる恐れがあると懸念している。
ライス氏については、民主党の歴代大統領の下で政権運営に関わってきた実績があること、更には、バイデン氏が副大統領時代に同じくホワイトハウス内で一緒に仕事をしていたという強みがある。
あるバイデン氏側近も、同氏との人的関係があることは有利とみられるとコメントしている。
ただ、ライス氏はこれまで、選挙で選ばれた議員として一般大衆のための政治経験が一切ないことが弱みとみられることもあり得る。
なお、巷間では、来週(8月上旬)にも副大統領候補が発表されるという噂があるが、関係者によると、もう暫くかかるとみられるという。
ただ、同氏及び副大統領候補を正式に代表と決定する民主党全国大会が8月17~20日に開催されるため、遅くとも10日から1週間前までには明らかにされよう。
8月2日付英国『ザ・テレグラフ』紙:「ジョー・バイデン氏、かつての論敵と和解してカーマラ・ハリス氏を副大統領候補に選出か」
7月31日晩、一通のメールがバイデン氏支持者の元へ届いた。
それはハリス上院議員からのもので、“バイデン氏の思いやりや民衆への献身を称え、必ずや民衆のための大統領になると信じる”とした上で、“自身もバイデン氏の力になれるよう貢献したい”と訴える内容であった。
ハリス氏は、バイデン氏が考える副大統領候補の中の最有力メンバーとみられているが、かかるメール直訴をしなければならない程、水面下で激しい誹謗中傷合戦が行われていると想像できる。
民主党内で一部囁かれているハリス氏へのコメントは、果たしてバイデン氏に忠誠を貫き続けられるのか、情け容赦ないほど功名心に燃えている、御都合主義的、信頼感に欠ける等々、かなり辛らつである。
ある民主党支持者は、“もし彼女が副大統領候補に選ばれたならば、彼女は、バイデン氏が来年1月に大統領就任式に臨んだその日から、次の大統領選に向けてキャンペーンを始めるだろう”とまで酷評している。
かかる批評が上がるのは、かつてハリス氏が何度もバイデン氏に食って掛かっている過去があるからである。
例えば1年前の民主党討論会において、バイデン氏の長男故ボー・バイデン氏(2015年5月脳腫瘍で死去、享年46歳)の命日が近かったにも拘らず、ハリス氏は全く遠慮なくバイデン氏の諸政策に噛み付いている。
ハリス氏は、かつてバイデン氏が“バス通学政策(注2後記)”に反対していたことを責め立てた。
何故なら、彼女自身が少女時代に黒人生徒として同政策の恩恵にあずかっていたが、当時バイデン氏が上院差別主義者のグループに入って同政策に反対していたことを不快に思っていたからだという。
その他、数々の勇猛果敢振りを発揮してきていることから、トランプ大統領は彼女を“意地悪”と評し、また、民主党議員は“女性版オバマ”だと呼ぶほどである。
しかしながら、バイデン氏は今週(7月末)の段階では、民主党の集会において同氏が用意したスピーチ用メモに、ハリス氏の名前及び功績等が一番上に書かれていたことがテレビカメラによって捉えられており、バイデン氏としては過去の論敵と和解し、今では副大統領候補の有力メンバーの一人として支持しているものとみられる。
(注1)ブラック・ガールズ2020:7~17歳の黒人女性に学習機会を提供する運動をしている慈善団体ブラック・ガールズ・コード主催の、2020年活動の一環の全米会議。
(注2)バス通学政策:1970~1980年代に行われた、人種差別撤廃に向けたバス通学制のことで、米国の公立学校における差別撤廃に向けた取り組み。差別的な学校制度や学区設定を改革する為に、特定の学校に子どもたちを入学させ、その通学のための輸送手段を用意することで、通学する学校は、近所の学校以外の学校であることが多く、通学のための輸送手段(大概はバス)が無料で用意されている。この取り組みに反対する人々は、これを強制バス通学と呼ぶこともある。
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