2020年アラブ・ユース・サーベイ、アラブ人の若者のほぼ半数が海外移住を検討(2020/10/08)
ドバイ首長国に拠点を置く広告会社「ASDA’A BCW」は6日、アラブ人の若者を対象とした世論調査「アラブ・ユース・サーベイ」の結果を発表した。今年は、移住や汚職が若者の関心事のトップに来ている。
毎年行われているこのサーベイには、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、パレスチナ、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメン、計15か国の国・地域の、18歳から24歳までの男女約4000人が参加している。
今年の調査では、アラブ人の若者の一番の関心事は移住であることが判明した。この地域の若者の10人に4人以上が、他国への移住を検討している、あるいは過去に検討したことがあると回答している。...
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毎年行われているこのサーベイには、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、パレスチナ、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメン、計15か国の国・地域の、18歳から24歳までの男女約4000人が参加している。
今年の調査では、アラブ人の若者の一番の関心事は移住であることが判明した。この地域の若者の10人に4人以上が、他国への移住を検討している、あるいは過去に検討したことがあると回答している。
海外への移住志向の高い国・地域は、危機に見舞われたレバノン、リビア、イエメン、次いで北アフリカとなった。レバノン、リビア、イエメン、イラクでは、60%以上の若者が海外移住を検討している。
『エルサレムポスト』や『アルジャジーラ』によると、中でもレバノンでは77%もの若者が移住を検討しているという。反面、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の湾岸諸国では3%にとどまっている。
多くの若者が移住を検討している理由として、自国の貧弱なリーダーシップ、横行する汚職、広範な経済的失敗などへの失望をあげている。アラブ・ユースの77%が自国に汚職があると回答しており、特にイラク、リビア、チュニジア、イエメンが上位を占めている。
サーベイでは、若者が反政府デモを熱心に支持していることも判明した。アルジェリア、レバノン、イラク、スーダンではいずれも最近大規模な抗議運動が起こっており、それぞれの国の若者の80%以上が支持している。
『モロッコワールドニュース』によると、若者の3分の1以上は、政府が国内の汚職を止めること最優先事項とし、続いて新たな雇用創出に力を入れるべきだと回答している。
なお、若者の35%が借金をしており、2019年の21%から大幅に増加している。学生ローンや車のローンが主な借金内容となっている。
しかし、87%以上が失業を懸念していると回答しており、これらの借金に対処するのは難しい状況となっている上、政府が失業問題に対処できると確信しているのは、半数以下だった。
『エルサレムポスト』によると、若者の20%が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、自分か家族の一人が職を失ったと答え、72%が仕事を見つけるのが困難だと答えている。就職に最も苦労しているアラブの若者はヨルダンで90%、レバノンで91%となっている。
『モロッコワールドニュース』は、2019年のサーベイと同様に、今年も、アラブ人の若者、特に北アフリカでは、宗教が自分たちのアイデンティティの重要な部分であると考えていると伝えている。
しかし、67%が中東では宗教があまりにも大きな役割を果たしており、66%が宗教機関の改革を希望していると回答している。イエメンとアラブ首長国連邦の若者が、宗教とのつながりが最も低く、宗教が自分たちのアイデンティティにとって重要な要素であると答えた若者は10%に満たない。
『モロッコワールドニュース』は、2020年のアラブ・ユース・サーベイは、この地域の若者が改革を熱望していることを改めて示していると伝えており、次世代が、緑の牧草地に見える海外の国に出ていくことがないよう、各国政府は仕事、教育、腐敗との戦いを優先すべきであると指摘している。
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レバノンとイスラエル、海洋境界交渉開始合意(2020/10/02)
レバノン議会議長は、陸と海の境界線をめぐる何十年もの紛争を解決するために、イスラエルとの協議を開始すると発表した。今回の発表は、ユダヤ国家とアラブ近隣諸国との関係正常化の一環として劇的な展開だといえる。
仏
『レゼコー』は、レバノンとイスラエルの国境協議開始の合意は劇的な新展開だと驚きを隠していない。
レバノンは現在、正当な政府を確立できておらず、3月の債務不履行、人口の過半数の急な貧困化、ベイルート港での8月4日の大規模爆発(死者200人、負傷者6,300人)、汚職と公共サービスの怠慢に対するほぼ1年に及ぶ国民のデモなどで、足元が揺さぶられている状態だ。
それでもレバノン政府は1日、重要な地政学的発展を発表した。...
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仏
『レゼコー』は、レバノンとイスラエルの国境協議開始の合意は劇的な新展開だと驚きを隠していない。
レバノンは現在、正当な政府を確立できておらず、3月の債務不履行、人口の過半数の急な貧困化、ベイルート港での8月4日の大規模爆発(死者200人、負傷者6,300人)、汚職と公共サービスの怠慢に対するほぼ1年に及ぶ国民のデモなどで、足元が揺さぶられている状態だ。
それでもレバノン政府は1日、重要な地政学的発展を発表した。海上および陸の国境をめぐる紛争を解決するために、国連の仲介の下、米国を「ファシリテーター」として、イスラエルとの交渉を開始する。
両国は2006年の1ヵ月間に及ぶ紛争以来、正式には戦争状態にあり、交渉も2013年以降中断されていた。
今回の協議開始は、イスラエルとアラブ近隣諸国との関係正常化の動きの一環だと言える。イスラエルは、9月中旬に初めてアラブ首長国連邦と、次にバーレーン首長国と国交を結んでいる。
カタールの『アルジャジーラ』は、レバノンの沖合にある天然ガス資源をめぐり、数十年にわたって国境をイスラエルと争ってきたレバノンだが、経済が山のような負債に押しつぶされ、壊滅的危機に直面する中、戦略変更に出たと報じている。
2018年2月、レバノンはエネルギー大手のTotal、ENI、Novatekと、地中海の2つの鉱区で石油・ガスの探査契約を締結している。しかし、鉱区の1つ「ブロック4」で調査をすすめたところ、ガス資源が確認されたものの、商業的に実行可能な埋蔵量はないことが判明した。
もう一つの鉱区「ブロック9」は、イスラエルとの境界線付近にある3つの鉱区の内の1つで、イスラエル側が、一部はイスラエル領海だと主張しており、探査が開始できないでいる。
イスラエルのシュタイニッツ・エネルギー相は、イスラエル日刊紙『エルサレムポスト』に対し、「今後、イスラエルとレバノンの間の海上境界線をめぐる歴史的な論争をまとめるために、米国が直接仲介する交渉が行われる」と語った。
同氏は、地中海の経済水域と天然ガスをめぐる紛争が1年以内に解決されることに期待を表明し、ポンペオ米国務長官とシェンカー近東担当国務次官補に、交渉の実現に向けた努力に感謝の意を表した。
同氏はまた、イスラエルにとってこの問題は重要で、「問題を解決したい」と述べた上で、レバノンにとっては、「ガスを必要としているので、それ以上に重要だ。彼らの経済には欠かせないからだ」と語った。
『エルサレムポスト』は、天然ガスがイスラエルと近隣諸国との間で大きな外交関係を築くきっかけとなったのは、レバノンだけではないと指摘している。イスラエルはエジプトと長い間平和を保ってきたが、エネルギー分野でパートナーシップを築いたことで、関係が友好的なものになったと伝えている。
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