11月12日付GLOBALi「南シナ海問題:習・ドゥテルテ両首脳が対話路線を強調すれば、トランプ大統領はベトナム首脳に仲介の申し出」で触れたとおり、本家のドナルド・トランプ大統領はもとより、フィリピンのトランプことロドリゴ・ドゥテルテ大統領も、習近平(シー・チンピン)国家主席のいない所でないと、強気の姿勢を見せられないようである。一方、習指導部は、トランプ大統領が北朝鮮及び通商問題にかかずらっている間に、南シナ海の軍事拠点化拡充並びに東南アジア諸国連合(ASEAN)抱き込みを着々と進めている。
11月16日付米
『フォリン・ポリシー』オンラインニュース:「トランプ大統領が北朝鮮問題にかかずらっている間に中国が南シナ海制圧を着々と促進」
ドナルド・トランプ大統領は、直近12日間に及ぶアジア初歴訪の間、北朝鮮及び通商問題に焦点を当て、一方で、南シナ海問題に関わり中国を直接批判することを避けた。
これを千載一遇の機会と捉えてか、習近平指導部は、南シナ海に建設した人工島の軍事拠点化と、一部の国と領有権問題を抱えるASEAN諸国の抱き込みを着々と進行させている。...
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11月16日付米
『フォリン・ポリシー』オンラインニュース:「トランプ大統領が北朝鮮問題にかかずらっている間に中国が南シナ海制圧を着々と促進」
ドナルド・トランプ大統領は、直近12日間に及ぶアジア初歴訪の間、北朝鮮及び通商問題に焦点を当て、一方で、南シナ海問題に関わり中国を直接批判することを避けた。
これを千載一遇の機会と捉えてか、習近平指導部は、南シナ海に建設した人工島の軍事拠点化と、一部の国と領有権問題を抱えるASEAN諸国の抱き込みを着々と進行させている。
特に、南沙(スプラトリー)諸島内に建設した7つの人工島のうち、ファイアリー・クロス、ミスチーフ、スビ礁において重点的に恒久施設-ジェット戦闘機離着陸用滑走路、レーダー設備、戦闘機格納庫、ミサイル防衛ドーム等-の建設を完工させている。
軍事専門家によると、トランプ政権は、南シナ海については、北朝鮮及び通商問題程緊急性がないとの判断であろうが、中国があまり目立たないように、しかし着々と同海域を制圧しつつあるとみている。
トランプ大統領は外遊時の最後、ベトナム首脳との会談時に南シナ海領有権問題での“仲介役”を買って出たが、ベトナム高官としては、北朝鮮問題で中国の協力を仰ぐことの方が優先されると見越している。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『AP通信』配信):「ASEAN首脳、中国が建設の人工島や仲裁裁定敗訴の件は回避」
ASEANは11月16日、首脳会議から3日遅れで声明を発表した。それによると、これまで言及されてきた中国による南シナ海海洋進出についての“深刻な懸念”や“懸念”との表現が使われず、ただ、今年枠組み合意された「行動規範(COC)」に基づき、中国・ASEAN間で詳細交渉が進展することが期待されるとのみ言及した。
今年度のASEAN議長国フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領も、中国とASEANの関係は改善されていると強調し、前政権が提訴して勝ち取った常設仲裁裁判所の裁定についても何ら言及しなかった。
一方、国際人権監視団等から非難されていた、フィリピンの麻薬犯罪取り締り上の超法規的殺人やミャンマー政府によるロヒンギャ族虐待についても、同声明で直接的な批判表現が使われることはなかった。
一方、11月13日付中国『環球時報』:「南シナ海で部外者の“助け”は不要」
トランプ大統領はベトナム訪問時、チャン・ダイ・クアン国家主席に対して、もしベトナムが中国と南シナ海領有権問題でもめるようなことになれば、いつでも仲介役を買って出ると申し出た。
しかし、この自惚れた申し出に対して、当事国はいたって気のない反応を示した。すなわち、チャン主席は、南シナ海問題は国際法に則って平和裏に交渉していくと返答した。また、フィリピンのアラン・カイェタノ外相は、申し出は感謝するが、本問題はASEANグループと中国間で解決の道を探るとコメントした。
米国は、オバマ前大統領時代から南シナ海に必要以上に口出ししてきている。しかし、その時代と違って、中国とフィリピン間、また、ベトナムとの間において、領有権問題を対話で解決する態勢が形成されつつある。
従って、関係国はみな、日米の余計な干渉によって、問題が反って複雑化するだけだということを、段々と認識するようになっている。それは、トランプ大統領の申し出に対する、ベトナム及びフィリピンの対応で明らかであろう。
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