NZ;6年振り返り咲きの保守連立政権、親中政策に転換【米メディア】(2023/10/22)
ニュージーランドでは、10月14日実施の総選挙で、与党・労働党(LP、1916年設立の中道左派政党)が惨敗し、野党第1党・国民党(NP、1936年設立の中道右派・保守政党)が大躍進して6年振りに政権返り咲きを果たすことになった。そしてこの程、これまでの親欧米路線より転換して、親中政策に舵を切る旨表明している。
10月20日付
『フォリン・ポリシー』オンラインニュースは、6年振りに返り咲くことになる保守連立政権が、従来の親欧米路線から親中政策に舵を切ると表明していると報じた。
ジャシンダ・アーダーンLP党首(当時37歳、2017年就任)は、ニュージーランド政治史の中で最年少の首相として、5年余りNZ憲政を牽引してきた。
特に、閣僚経験がなかったにも拘らず、2019年に発生したクライストチャーチ在モスク銃乱射事件の対応や、2020年初めに世界を恐怖に陥れた新型コロナウィルス感染流行問題における厳格な政策によって犠牲者を極小に止めたことが評価された。...
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10月20日付
『フォリン・ポリシー』オンラインニュースは、6年振りに返り咲くことになる保守連立政権が、従来の親欧米路線から親中政策に舵を切ると表明していると報じた。
ジャシンダ・アーダーンLP党首(当時37歳、2017年就任)は、ニュージーランド政治史の中で最年少の首相として、5年余りNZ憲政を牽引してきた。
特に、閣僚経験がなかったにも拘らず、2019年に発生したクライストチャーチ在モスク銃乱射事件の対応や、2020年初めに世界を恐怖に陥れた新型コロナウィルス感染流行問題における厳格な政策によって犠牲者を極小に止めたことが評価された。
ところが、今年1月、政権運営にエネルギーを使い果たしたため首相継続の余力がなくなったとして突然辞任を表明したことから、新党首となったクリス・ヒプキンス(45歳)が首相職を継ぐことになった。
そして、新首相の下で10月14日の総選挙を迎えたが、LPは惨敗(62から34議席に激減)し、代わってNPが勝利を収めることになった(34から50議席への大躍進)。
NP党首であるクリストファー・ラクソン(53歳、2021年就任)は、11月初めに右派の少数政党と組んで連立政権を発足させる見込みである。
そこで、今後のNZの対外政策をみると、大きな方針転換がなされるとみられる。
すなわち、NP報道官は、総選挙キャンペーン中に、中国の人権問題や南シナ海における軍事力拡大に難癖をつけることより、中国との貿易確保に重点を置くべきだと表明していた。
更に、ラクソン党首は、同キャンペーンにおいて、中国が推進する一帯一路経済圏構想(BRI)に“何が何でも”参画して中国のインフラ投資を呼び込む、とまで宣言していたからである。
従って、国防・機密情報共有等の枠組みである「ファイブアイズ(FVEY、注後記)」においても、左派のアーダーン首相が、同枠組みのパートナーである米国の共和党政権(2017~2021年)、英国の保守党政権(2010年より継続)、豪州の自由党連立政権(2013~2022年)、カナダの自由党政権(2015年より継続)に寄り添う柔軟な対応をしてきていたのに対して、
右派の新国民党連立政権は、逆に舵を切ることになるとみられる。
すなわち、NPは中国による総選挙への介入疑惑を軽視しているだけでなく、2021年に発足したAUKUS(豪州・英国・米国の軍事同盟)に参画する気はないと表明してきていたからである。
実際問題、NPが2008から2017年に政権を担っていたときも、FVEYにおいて他4ヵ国と違って、積極的に中国対峙を示すことはなかった。
更に、2008年には、中国が2001年に世界貿易機関(WTO、1995年設立)に正式加盟して以来最初に、西側諸国の中で率先して中国との自由貿易協定を締結していたからである。
従って、新NP連立政権は、同国最大の貿易相手国である中国との貿易促進、特に経済活性化のために必要とされる中国向け乳製品・肉類の輸出拡大に重点を置き、FVEYが重きを置く対中強硬政策には背中を向けることは必至とみられる。
(注)FVEY:米英などアングロサクソン系の英語圏5ヵ国によるUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組みの呼称。1943年に米英が立ち上げ、1950年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加盟。米国を中心に「エシュロン」と呼ぶ通信傍受網で電話やメールなどの情報を収集、分析しているとされる。参加国の情報機関は相互に傍受施設を共同活用する。
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日本;依然国内のワクチン接種率低調なれど、近い将来には中国のワクチン外交を打ち負かす戦略【米メディア】(2021/07/24)
中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題発祥の地でありながら、欧米諸国に比していち早く感染抑制に成功したこともあって、自国製のワクチンを途上国向けに提供するワクチン外交を展開して影響力を益々高めようとしている。しかし、以前から疑問視されていたように、中国製ワクチンの効果が欧米製薬会社製のワクチンより劣ることが明らかになりつつある。そうした中、日本は、依然国内のワクチン接種率は低調ながら、中国がワクチン有効性に問題を抱えている隙をついて、近い将来には中国のワクチン外交を打ち負かす戦略を着々と進めている。
7月23日付
『フォリン・ポリシー』(1970年創刊の国際外交関係メディア):「日本、ワクチン外交で中国に対抗」
菅義偉首相(72歳)は今月初め、COVID-19感染再拡大を受けて、東京都に対して8月22日まで緊急事態宣言を再適用することを決定した。
これによって、7月23日に幕開けした東京オリンピックの開催期間がすっぽり収まることとなり、デルタ株ウィルス(インドで発見された変異株)蔓延を抑えられていないことと、依然ワクチン接種率が低調なことが浮き彫りとなった。...
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7月23日付
『フォリン・ポリシー』(1970年創刊の国際外交関係メディア):「日本、ワクチン外交で中国に対抗」
菅義偉首相(72歳)は今月初め、COVID-19感染再拡大を受けて、東京都に対して8月22日まで緊急事態宣言を再適用することを決定した。
これによって、7月23日に幕開けした東京オリンピックの開催期間がすっぽり収まることとなり、デルタ株ウィルス(インドで発見された変異株)蔓延を抑えられていないことと、依然ワクチン接種率が低調なことが浮き彫りとなった。
日本におけるワクチン接種者(2回)は全人口の僅か23%で、主要7ヵ国(G-7)の中で最低である。
かかる状況にあるにも拘らず、日本は目下、人道支援の国際的評価向上とワクチン外交で躓いている中国に一泡吹かせようと、日本自身のワクチン外交を推し進めようとしている。
6月16日、日本は国内でライセンス生産された英国アストラゼネカ製ワクチン100万回分をベトナムに提供した。
その1週間後、200万回分の同ワクチンを台湾とベトナム向けに、更に、各々100万回分のワクチンをタイ、マレーシア、フィリピンに提供すると発表した。
そして、感染再爆発に喘ぐインドに対しては、1,480万ドル(約16億2,800万円)相当の医療機器及び930万ドル(約10億2,300万円)のワクチン冷凍貯蔵庫を提供している。
また、インド太平洋地域以外へのワクチン外交として、アフリカや南米諸国へのワクチン供与に資するよう国連児童基金(UNICEF、1946年設立)に3,900万ドル(約42億9,000万円)拠出することを決め、更に、途上国へのCOVID-19救済融資制度を立ち上げている。
かかる日本のワクチン外交は、中国やロシアが露骨に進めている政策ほど注目されていないが、日本の公衆衛生支援政策は、中国が推し進めてきた東南アジア諸国向けのワクチン外交に対抗するだけでなく、インド太平洋地域におけるパートナーとしてのインドとの連携を益々強化することとなろう。
一方、中国は、“保健衛生シルクロード”確立の方針の下、インドネシアを中核とした東南アジア諸国に中国製ワクチンを提供することで影響力の行使を目論んできた。
しかし、欧米製薬会社製ワクチンに比べて、中国シノバック(北京科興生物製品有限公司、1999年設立)製ワクチンの有効性が50%しかないことが判明したばかりか、同社の生産量が当初計画の半分に留まっていることから、当初予定のインドネシアのみならず、カンボジア、ラオス、タイ、フィリピン向けのワクチン提供量が大幅に減少した。
更に、デルタ株ウィルス感染爆発に襲われているインドネシアでは、シノバック製ワクチンを接種した医師の少なくとも10人が犠牲になったことが明らかになったことから、東南アジア諸国における中国製ワクチンの信頼性が失墜している。
かかる背景から、日本が新たにワクチン外交に積極的に取り組む姿勢をアピールしてきていることから、東南アジア諸国における日本支持が高まるのみならず、中国対抗戦略として日本・米国が主導している四ヵ国戦略対話(クワッド会議、注後記)の参加国であるインドとの連携強化が益々図られることになり、今後十数年先まで見越した対中国競争戦略の礎作りに繋がるものと考えられる。
(注)クワッド会議:非公式な戦略的同盟を組んでいる日・米・豪・印の四ヵ国における会談で、二ヵ国同盟によって維持。同対話は2007年当時、安倍晋三首相(当時53歳)によって提唱され、その後ディック・チェイニー副大統領(同67歳)の支援を得て、ジョン・ハワード首相(同68歳)とマンモハン・シン首相(同75歳)が参加して開催。この対話によって、インド南西端で毎年開催されるマラバール演習(四ヵ国合同演習)に繋がっている。
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