4日、太平洋経済連携協定(TPP)の署名式がニュージーランド、オークランドで行われ、日本からは前TPP相甘利氏に代わり高鳥内閣府副大臣が主席。参加はオーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの12カ国。
世界の経済の約半分を担うこの12か国により税を撤廃し貿易障害を撤廃する自由貿易交渉に署名がされた。発行されれば世界のGDP4割弱、人口で約8億人の巨大経済圏となる。雇用創出、持続可能な経済発展をめざし相互の繁栄が共通の目標だ。発効には日米の批准が不可欠だが、米国では承認手続きが難航する恐れが指摘されている。式典会場のオークランド周辺では千人のデモ隊により交通がマヒし警察による警備体制が敷かれた。
2月4日付
『ロイター』は、「TPP署名も交渉は続く」との見出しで次のように報道している。
・5年を費やした合意は重要なステップであるが、紙面(1万6千枚分)上の合意であり、発効
は先のこととのNZのジョン・キー首相は署名式で述べた。
・12か国のうち最低6か国(加盟国の85%のGDP)の批准を推進する交渉に移る。施行までには2年間の交渉が必要となる。
・経済的重要度により米国と日本の批准は必須。労働者の権利、知的財産権保護等における基準作りを行う。
・日本のTPP交渉の表に立っていた甘利前経済担当大臣の辞任により日本の合意を得るのが更に難しくなるであろう。
・多くの国でTPPへの草の根の反対勢力はTPP交渉の不透明さを指摘する。医薬品の入手困難さ、原産国の法規制により利益を損うと想定される場合には海外投資家が訴訟を起こす権利を認めるとする条項が付く等が懸念材料。
・チリのエラルド・ムニョス外務大臣は、南米各国と「健全で民主的な議論」を交わすとした。
・オーストラリアの貿易大臣はTPP合意は次の議会で議論される予定で反対の声が高まるが合意に自信をのぞかせた。
・この日カナダの新政府は署名したが、貿易大臣は署名は批准を意味しないとした。
・メキシコの経済省の書記官はTPPは今年末までに投票が行わるとし、マレーシアは法改正が必要だがTPPは国内で承認されているとした。
同日付米
『VOA』は、「12か国が自由貿易合意に署名」との見出しで次のように報じた。
・TPP合意はオバマ大統領の7年任期での成果の一つであり、大統領はこの合意は米国のリーダー性を高め国内の雇用を促すもので、議会で早急に批准を促したいと述べている。
・TPPの反対派の主張は国内の雇用を縮小し外国製品であふれ、安全でない輸入食品により人体、環境へのダメージにある。
・政府は1万8千の輸出品への税撤廃は米国産製品の海外へ販売拡大に繋がると主張。
・世界第二の経済大国、中国は独自の経済目標を掲げるとしTPPに不参加。しかし米政府当局は中国が参加の意思を示せば何時でも参加を歓迎するとしている。
同日付
『ヤフーニュース』は「米が中国へ対抗し世紀の貿易合意に署名」との見出しで、以下のように報道している。
・「TPPは中国の様な国でなく米国に21世紀の規範を描く事を可能とした」と署名が行われた後オバマ大統領は述べた。米国や日本等他国内の反対意見を制して成された合意は中国という脅威に対する「アジアの軸足(ピボット)」(オバマ氏)となる。
・米は選挙年は民主、共和両党の選挙区に自由貿易に反対する有権者がいるため、11月の大統領選までは国内批准は難しい。
・TPP圏で第二の経済大国日本は、農産業への影響に懸念があるものの、政治家と経済学者は輸出拡大による経済成長を期待しTPPを概ね支持している。
・韓国は6千ページの文書を精査しているとし今回の署名式を静観している。
・カナダ政府は批准には至っていない。
・米経済学者とノーベル賞受賞者ジョゼフ・スティグリッツ氏はTPPが数十年で最悪の貿易合意となる可能性を示唆している。
同日付中
『新華社』は「NZ首相は抗議デモのさなか署名式でTPP交渉団を称賛」との見出しで、労働党の抗議グループが政府はTPPの交渉合意を秘密裏に行ったと主張している等とデモの様子を報道している。
同日付ニュージーランド
『Scoop』は「牛肉生産者TPP署名を歓迎」との見出しで次の様に伝えた。
・TPP合意はアジア太平洋の長期自由貿易圏構想へ向けた動き。牛肉輸出の機会を実現、参加国が増えると利益増が見込める。
・TPP批准により、市場へのアクセスが改善、輸入コストやレッドテープ(繁文縟礼)が減り、牛肉産業全体の供給チェーンを確保。生産者、消費者共にTPPの恩恵を享受できる。
同日付マレーシア
『The Straits Times』は「マレーシアを含む12か国が画期的TPP交渉合意」との見出しで次の様に伝えた。
・殆どの署名国は貿易主要国。TPPの経済的恩恵の9割以上は関税撤廃政策によるものであり、雇用の創出、8億人の生活水準の向上、貧困を減らし持続的成長を促す。
・2018年~2027年で1兆~2.1兆米ドル規模のGDPの拡大、主に繊維業、建設業、販売業への1,3兆~2,3兆米ドル投資増を見込む。
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