スペインの消費者担当大臣が、国民に、健康と地球のために肉の消費を減らすよう呼びかけ、食肉協会などから反発を招いている。スペインはEU諸国の中で最大の肉の消費国だが、最も健康な国との指標もある。
7月8日付スペイン
『The Loca es』(AFP通信引用)は「大臣が肉食習慣を減らすよう国民に呼びかけ」との見出しで以下のように報道している。
アルベルト・ガルソン消費者問題担当大臣が、国民の健康と地球の未来のために「肉」の消費を減らすよう呼びかけ議論を巻き起こしている。大臣は7日、ツイッターに投稿された動画で、「私は心配しているのだ。地球がなければ我々の生命も存在しない。サラリーも経済もなくなる。...
全部読む
7月8日付スペイン
『The Loca es』(AFP通信引用)は「大臣が肉食習慣を減らすよう国民に呼びかけ」との見出しで以下のように報道している。
アルベルト・ガルソン消費者問題担当大臣が、国民の健康と地球の未来のために「肉」の消費を減らすよう呼びかけ議論を巻き起こしている。大臣は7日、ツイッターに投稿された動画で、「私は心配しているのだ。地球がなければ我々の生命も存在しない。サラリーも経済もなくなる。自分の問題として考えよう。我々が変えられることが一つあるとしたら、我々の食だ。」等と訴えた。
同氏はまた、国連食糧農業機関の統計を引用し、肉と乳製品による温室効果ガス排出への影響が14.5%にあたると説明。保健当局の推奨に従い、国民が適度に肉を消費するなら、CO2の排出量を半分に減らすことが可能だとした。同国の1年間の肉の消費量は700万トンで、これは7000万頭のと殺により支えられている。食の安全と栄養庁が推奨する1週間当たりの肉の消費量は200~500グラムだが、実際には平均1キロ以上が消費されており、適量値とされる量の2~5倍となる。
家畜業者は、肉の消費を減らすというこの提案を拒否する姿勢を示している。スペイン北西部バリャドリッドの若者農業協会は、発言を撤回しなければ即時辞任を求めるとする声明を出している。
スペインの肉の消費量はEU諸国の中で最も多く、スペイン農務省の最新統計によれば、肉の消費は昨年比で10.5%増加している。一人当たりの年間消費量は50キロで平均約45,500円となる。2015年、WHOはスペイン製生ハムなど、肉の発がん性物質を含む健康に関する警告を発表したが、それでも肉の消費が落ちることはなかった。
ところが、肉食過多が健康に悪影響とは言えないようで、スペインは2040年までには一番の長寿国となるとの予測もあり、これは「地中海食」に依るところが大きいという。ブルームバーグの2019年度「最も健康な国指数」によるとスペインは世界一健康な国とされている。
同付英国『BBC』は「スペインで肉食削減キャンペーンを巡り閣僚が対立」との見出しで以下のように報道している。
スペインの閣僚がスペイン国民に肉消費を抑えるよう発言したことで、政府内で批判されている。今週、アルバート・ガルソン消費者問題担当大臣は、ツイッター動画で、「肉の食べ過ぎは皆さんの健康にも地球にもよくない。」とし、国民に肉の消費を減らすよう訴えた。
しかし、一部の閣僚からこの訴えは受け入れ難いとされ、ルイス・プラナス農務大臣は、「キャンペーンは残念」で、スペイン経済を牽引している食肉業界にとり「不公平」だとしている。これに賛同するように、食肉協会6団体から、ガルソン氏へ抗議する書簡が送られている。
これらの批判を受け、ガルソン氏は国営テレビに出演し反論。自身のメッセージについて説明した。「肉食をやめろと言っていない。食料規制当局の指針に沿うよう求めているだけだ」と主張している。
世界の多くの国では文化や経済上、そして個々人の理由から、肉は今も主食となっている。リトアニアを訪問していたペドロ・サンチェス首相は、会見でこの問題について、「私は(提供されたら)肉には目がない」とし、肉食業者側を擁護するコメントをしている。
この議論はスペインの与党連合の対立を浮き彫りにした。プラナス農務大臣はペドロ・サンチェス首相と同じ、農村地を基盤とする社会党に属し、ガルソン氏は、若年層と都市部の支持を得た左翼政党ユニドスポデモス党に属する。
肉食を巡っては、隣国フランスでも賛否が分かれる。フランス政府は、リヨン市の学校給食から肉を外したことで市長を批判している。
閉じる