1月28日付米
『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』(1996年設立、米議会出資の短波ラジオ放送局:「中国、墜落した米軍ステルス戦闘機回収に興味なしと表明」
中国は1月27日、墜落した最先端技術搭載の米軍F-35C戦闘機の残骸を回収することに興味がない旨表明した。
定例記者会見で中国外交部(省に相当)の趙立堅報道官(チャウ・リーチアン、49歳)が答えたもので、“墜落機に何ら興味はない”とした上で、“関係国に対して、同海域で武力を誇示するより平和と安定に繋がるような行動を求める”と強調した。
米海軍は今週初め、最先端技術の詰まった1億ドル(約115億円)もするF-35Cの機体回収に努めていると表明していた。
当該機は1月24日、南シナ海において空母“カールビンソン”(1982年就役)への着艦訓練をしていた際に横滑りして海に墜落していた。
同空母は、別の空母“エイブラハム・リンカーン”(1989年就役)と2つの空母打撃群による海上訓練を実施していたところで、同事故によって、パイロットは救助されたが、甲板上の乗組員7人が軽傷を負った。
米太平洋軍統合情報センターの元作戦部長のカール・シャスター氏は『RFA』のインタビューに答えて、南シナ海海底に沈んでいる同機を探して回収するまでに3週間、悪天候やその他の問題が発生した場合は最長4ヵ月かかると推測するとした。
その上で、“中国は当該機に興味があるはずだが、米海軍が回収すると言っている以上、ただでさえ米中間の緊張が高まっている最中、無用な軋轢を避けるためにも、(回収に)興味はないと表明したに過ぎない”と分析した。
但し、“中国は米側の回収作業を見守るはずで、もし中国側が密かに回収できるとなったら、潜水艇を繰り出して詳細な情報収集に当たるだろう”とも付言している。
一方、中国国際センターのアンディ莫(モク)研究員は、“中国以外にも最先端技術満載の当該戦闘機に興味を持つ国があるはずだが、別の問題は、当該機が、中国が主張する領有権内の海域に沈んでいた場合、中国側は米軍の進入を許さず、従って同機の米側引き渡しも拒否するだろうという点である”と解説した。
なお、元米軍高官のシャスター氏は、“米軍はかつて水深1万5千フィート(4,572メートル)の場所から飛行機を回収した実績があるが、南シナ海の最深部は1万6千フィート(4,876メートル)あることから、場所を特定した上で必要な回収設備を送り込むまで大きな試練となろう”と言及した。
また、“中国側も、米国が7万ポンド(35トン)の戦闘機をどのように回収するのか注視するであろう”とも付言した。
一方、米太平洋軍第7艦隊報道官のハーレー・シムズ中佐は1月26日、米軍の準機関紙『星条旗新聞』(1861年発刊)のインタビューに答えて、当該機の墜落事故の他に4件、“クラスA事故(注後記)”が昨年11月22日から12月31日の間に発生していることから、目下詳細調査を行っているとした。
同日付香港『アジア・タイムズ』(1999年発刊のオンラインニュース):「墜落したF-35戦闘機回収に法律問題」
1月24日、米海軍F-35戦闘機が空母“カールビンソン”への着艦に失敗して海に転落したニュースが世界を駆け巡った。
そして目下注目されているのは、米軍がどうやって回収するのか、また、仮に回収できるとしても数ヵ月かかるとみられる回収方法である。
沈んでいる場所の特定には、曳航式反響音特定機(ソナーの跳ね返りを利用した捜索物特定機器)が使われ、場所が特定され次第、深海潜水艇による回収作業が行われることになろう。
ただ、沈んでいる場所が、フィリピンが主権を主張する海域内であると、両国間で法律問題が発生する可能性がある。
かつて、2016年12月に中国が、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に沈んだ米軍のドローンを回収する作業を行った際、フィリピン側が両国に対して、速やかにフィリピンEEZから退去するよう厳しい警告を発していたからである。
一方、それとは別に、当該F-35が、最新鋭のステルス戦闘機であることから、中国はもとよりロシアも非常に興味を持っていると考えられる。
サイバーセキュリティ専門家のジョシュ・ロスピノッソ氏は、“同機は空飛ぶコンピューターであり、電子戦争や機密情報収集に長けていることから、中国としては、同機が回収できれば、対空サイバー攻撃技術の開発に役立てられるので、非常に興味を抱いているはずである”とコメントした。
そこで、中国側は、潜水艇やその他の遠隔操作機器を用いて、米海軍の同機回収作業を固唾を呑んで見守っているとみられる。
(注)クラスA事故:米海軍が指定している事故のクラス分けで、犠牲者が出たか、恒久的障害を負ったか、もしくは250万ドル(約2億8,800万円)以上の損失となった場合の事故。
閉じる
航空自衛隊が約50年前から導入・運用してきた、伝説的戦闘機F-4(愛称“ファントムⅡ”)がいよいよ来年までに全機が退役する。そして、入間基地(埼玉県)を訪問した菅義偉首相の前に最後の雄姿を見せた。
11月30日付
『星条旗新聞』(1861年創刊の米軍準機関紙):「“ファントムよ永遠に”:伝説的戦闘機が航空自衛隊基地で最後の雄姿」
日本の伝説的なF-4EJファントムⅡ超音速戦闘機が11月28日、入間基地で最後の雄姿を見せた。
航空自衛隊が長期間運用してきたファントムⅡは、機体にサメの歯・咆哮の鼻・日章旗・“ファントムよ永遠に”とペイントされているが、同日に同基地を訪問した菅義偉首相を歓迎した。
同首相は800人の自衛隊員の前で、安全保障問題が深刻化する中、航空・陸上・海上自衛隊間の相互協力・支援の必要性を説いた。
同首相はその後、F-4戦闘機の操縦席に着座して記念撮影に応じた。
日本は1968年11月1日、次世代戦闘機として米マクドネル・ダグラス製F-4を140機導入することを決定した。
F-4は1960年~1970年代、米軍にとって最も著名な戦闘機となり、冷戦時の制空権で力を発揮し、また、ベトナム戦争時にも広範囲に起用された。
同機は合計5,195機生産され、米空軍・海軍・海兵隊及び日本を含めた11ヵ国の軍隊で運用された。
しかし、世代交代もあって、米軍では1996年に実戦部隊から退役した。
その5年前の1991年、湾岸戦争(注後記)においてイラクの対空ミサイル基地の空爆のために活躍したのが実戦投入の最後であった。
日本においても、老朽化・旧世代化もあって1年以内に全機が退役予定である。
その代わり日本は、米ロッキード・マーティン製最新鋭ステルス戦闘機F-35を150機導入する。
なお、菅首相が入間基地を訪問する1週間前の11月20日、百里基地(茨城県)所属の第301飛行隊が一足先にファントムⅡの見送り式を実施している。
そして同飛行隊は来年3月、同基地から三沢基地(青森県)へ配置転換され、そこで新規導入のF-35編成の飛行隊となる。
(注)湾岸戦争:1990年8月2日のイラクによるクウェート侵攻をきっかけに、国連が多国籍軍(連合軍)の派遣を決定し、1991年1月17日にイラクを空爆して始まった戦争。米・英国を中心とする34ヵ国から成る多国籍軍は、圧倒的な勢力でクウェート占領イラク軍を撃退し、同年2月28日に停戦。
閉じる