米メディア;NASA、火星探査に向け着々と準備(2015/08/17)
米国では、ブッシュ前大統領時代に、コンステレーション計画と呼ばれる、人類を再度月に送り、更に火星まで向かう大規模宇宙開発計画があったが、2008年の世界金融危機以降急速にしぼんでしまった。しかし、その後を引き継いだオバマ大統領は、2030年代半ばまでに、宇宙飛行士を火星の軌道に送り込む目標を掲げた、新宇宙政策を公表している。その宇宙開発の中心的役割を担うのが米航空宇宙局(NASA)で、毎年180億ドル(約2兆2,500億円)余りもの予算が配分され、2020~2030年に向けての新たな宇宙開発計画の実践が日々続けられている。そうした中、最近の新たな取り組みについて米メディアが伝えている。
8月13日付
『USAトゥデイ』紙は、「NASA、次期大型ロケット(SLS)用のスペース・シャトル改造エンジン再使用試験」との見出しで、「NASAは8月13日、ミシシッピー州の宇宙センターで、元のスペース・シャトルに使われたロケットエンジンを改良したRS-25の試験着火を実施した。同エンジンは、NASAが目指す火星探査用の322フィート(約97メートル)長のSLS打上げのために改良が加えられたものである。...
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8月13日付
『USAトゥデイ』紙は、「NASA、次期大型ロケット(SLS)用のスペース・シャトル改造エンジン再使用試験」との見出しで、「NASAは8月13日、ミシシッピー州の宇宙センターで、元のスペース・シャトルに使われたロケットエンジンを改良したRS-25の試験着火を実施した。同エンジンは、NASAが目指す火星探査用の322フィート(約97メートル)長のSLS打上げのために改良が加えられたものである。NASAは、無人宇宙探査機オリオンを載せたSLSを、2018年にケネディ宇宙センター(フロリダ州)から打上げる計画である。」と報じた。
同日付
『ユニバース・トゥデイ』宇宙・天文ウェブサイトは、「NASAのSLS用エンジン着火試験、人類の遥か彼方の宇宙への旅立ちの一歩」との見出しで、「RS-25開発ロケットエンジンの535秒(約9分)の着火、フル出力試験は、SLS打上げにかかる時間と同じ長さで実施され、成功をみた。SLSは、将来、有人探査機を遥か彼方の宇宙まで運んだ後、地球に無事帰還させるのに必要なもので、過去三十有余年に及ぶスペース・シャトル運行で培われた技術が生かされている。」と伝えた。
一方、同日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』オンラインニュースは、「宇宙飛行士が、宇宙で栽培されたレタスを史上初試食」との見出しで、「国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士が、微小重力のISSの中で栽培したレタスを初めて試食し、地上で食べるのと遜色なく美味だったと述べた。NASAは、将来、遥か彼方の宇宙までの有人飛行を実現するため、宇宙での食物生成が必要と考え、1990年代後半から発光ダイオード(LED)の光を利用しての野菜栽培実験に取り組んでいた。2014年にISSでのレタス栽培が成功したが、念の為地球に持ち帰って消毒処理などを行い、安全であることを確認していた。」とし、「また、試食した宇宙飛行士は、将来の長い時間と距離の宇宙飛行を考えた場合、栄養学上も心理学上も、宇宙で栽培される作物の方が、凍結した乾燥食(宇宙食)より遥かに有益であることは明らかであるともコメントした。」と報じた。
なお、NASAはまた、2020年代前半に火星探査を実施する計画の一環で、火星の上空を飛びながら広範囲の地形を調べるグライダー型の無人探査機を開発している。地球より大気が薄い火星(大気圧は地球の1%未満)での滑空に耐えられるか、同様の条件の大気圏まで試作機を運んで実験する。同機は、2030年代に計画する、有人火星探査に不可欠な、宇宙飛行士の着陸点の地図作りなど、重要な役割を担うことになる。
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米メディア;過激派組織イスラミックステートの脅威(2015/08/10)
今年6月に何度か報じたとおり、過激派組織イスラミックステート(IS)は、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の後継者と目されていたアブアラー・アフリ容疑者、及びIS金融担当幹部を相次いで失い、ISの勢力は縮小するとみられていた。しかし、近況報告では、ISによるイラク、シリア両国の支配地域は依然変わらず、中東や北アフリカでは、ISの影響下にある組織によるテロが続発している。そうした中、ISによる残虐な行為が依然繰り返されていると米メディアが伝えた。
8月8日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』は、「IS戦闘員、シリアのキリスト教信者らを拉致」との見出しで、「シリア人権監視団体が8月7日に明らかにしたところによると、シリア中央部のアル・カリアテイン村の住民300人近くが、IS戦闘員によって拉致されたという。約170人がスンニ派のイスラム教徒で、60人程がキリスト教徒とみられる。同地域では、イスラム教徒とキリスト教徒が平穏に暮らしていたが、近郊の古都パルミラが今年5月にISによって占領されて以降、2千人余りいたキリスト教徒の多くは逃げ出し、僅か300人程度しか残っていなかったという。...
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8月8日付
『ラピッド・ニュース・ネットワーク』は、「IS戦闘員、シリアのキリスト教信者らを拉致」との見出しで、「シリア人権監視団体が8月7日に明らかにしたところによると、シリア中央部のアル・カリアテイン村の住民300人近くが、IS戦闘員によって拉致されたという。約170人がスンニ派のイスラム教徒で、60人程がキリスト教徒とみられる。同地域では、イスラム教徒とキリスト教徒が平穏に暮らしていたが、近郊の古都パルミラが今年5月にISによって占領されて以降、2千人余りいたキリスト教徒の多くは逃げ出し、僅か300人程度しか残っていなかったという。」とし、「ISはシリアにおいて、これまで継続的にアサド政権の政府関係者、軍隊、政府協力者を殺害してきており、一般市民を含めると、7万1,781人(うち子供が1万1,964人)が犠牲になっている。」と報じた。
8月9日付
『Foxニュース』は、「IS、モスル(イラク)の当局者300人を殺害」との見出しで、「イラクの政府軍報道官によると、ISは8月8日、自身が制圧しているイラク北部のモスルで、少なくとも300人のイラク最高選挙管理委員会の当局者を殺害したという。IS戦闘員幹部が犠牲者の家族に伝えたことには、彼らはISが定めるイスラムの掟によって裁かれたとされた。なお、モスルではこの2週間で、合計2,070人が処刑されたと言われている。」とし、「ISは、昨年6月にモスルを制圧して以降、ここを中心拠点として、イラクとシリアの支配地域を拡大している。」と伝えた。
一方、8月8日付
『ディスパッチ・タイムズ』は、「IS、サウジアラビアのイスラム寺院で自爆テロ」との見出しで、「国連安保理事務局によると、サウジアラビアのイスラム教寺院で8月6日、ISによる自爆テロによって10人以上が犠牲になったという。サウジアラビア内務省報道官によると、他に9人が負傷し、うち3人は重傷という。ISはこれまで、シーア派が大勢を占めるサウジアラビアに対して、何度もテロ行為を仕掛けており、直近でも今年5月、別の都市のイスラム教寺院でも自爆テロを起こし、少なくとも21人の参拝者の命を奪い、97人を負傷させている。」と報じた。
米軍主導の有志連合は、昨年8月にイラク、そして9月にシリア領内でも対IS空爆に踏み切った。米中央軍は、これまでの空爆でIS戦闘員1万人以上を殺害したというが、米情報機関の調査では、IS戦闘員の規模は2~3万人と、空爆開始前から実質的に減っていない。ISによる、中東やその他諸国のイスラム圏出身者のIS戦闘員としての勧誘が、依然奏功しているとみられる。一方、米国のIS掃討作戦は戦闘部隊を派遣せず、空爆と、イラクやシリアでISと戦う部隊への武器供与と訓練に留めるという、対症療法的なものであるため、ISを減退させるまでに至っていないというのが実情と思われる。
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