親中政権のフィリピン;南シナ海のフィリピン領海付近への中国船団押しかけを公に非難【米・フィリピンメディア】(2019/04/05)
3月30日付Globali
「中国;西沙諸島内のウッディ島を拠点に南シナ海の領有権既成事実化を着々と推進」で触れたとおり、中国は、表向きはあくまで東南アジア諸国連合(ASEAN)との行動規範(COC)合意に注力するとしているが、実際のところは、南シナ海全体を実効支配すべく、西沙(パラセル)諸島内のウッディ島に三沙(サンシャ)市政府を置き、既成事実化を着々と進めている。そして、親中政権に代わったフィリピン政府に対して、中国マネーで黙らせ、南沙(スプラトリー)諸島内で我が物顔の振る舞いをしている。しかし、さすがのフィリピン政府も唯々諾々と従うことを良しとしなかったのか、同諸島内のティツ島(フィリピン名パグアサ島、1971年より実効支配)周辺に中国船団が押し寄せて違法行為をしていると、公に非難する声明を発表した。
4月4日付米
『AP通信』:「フィリピン政府、領海侵入を犯す中国船団を強く非難」
ロドリゴ・ドゥテルテ政権となって以降、フィリピンは中国からの経済支援に期待して、南シナ海領有権問題で中国に対して強く出ることは控えてきた。
しかしこの程、フィリピン外務省は4月4日、同国が実効支配するスプラトリー諸島内のパグアサ島近海に多くの中国船団が侵入しているとして、厳しく非難するとともに、事態好転がなければ“相応の行動”を取るとの強い声明を発表した。...
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4月4日付米
『AP通信』:「フィリピン政府、領海侵入を犯す中国船団を強く非難」
ロドリゴ・ドゥテルテ政権となって以降、フィリピンは中国からの経済支援に期待して、南シナ海領有権問題で中国に対して強く出ることは控えてきた。
しかしこの程、フィリピン外務省は4月4日、同国が実効支配するスプラトリー諸島内のパグアサ島近海に多くの中国船団が侵入しているとして、厳しく非難するとともに、事態好転がなければ“相応の行動”を取るとの強い声明を発表した。
フィリピン軍によれば、今年1~3月の間、パグアサ島近くのサンディ・ケイと呼ばれる砂州に中国船200隻以上が進出してきているという。
同島はパラワン州に属し、フィリピン軍関係者等が常駐しているが、同島北西にあるスビ礁(1988年にベトナムから中国が奪取して実効支配)に中国が人工島を建設し、灯台や滑走路も設けて同海域の支配を高めている。
そして、フィリピンが2017年にパグアサ島近くの砂州を支配下に置くべく進出を試みたところ、すぐさま中国海軍、海警(沿岸警備隊に相当)によって、しばしばフィリピン軍艦や漁船を威嚇していた。
その当時、デルフィン・ローレンザーナ国防相によれば、ドゥテルテ大統領の命令で同計画を中止したという。
なお、今回の問題について、フィリピン外務省は3月29日、在マニラ中国大使館に非難声明を文書で届け、また、4月3日にも中国高官に対して、直接懸念を伝えたとする。
一方、中国外交部(省に相当)の耿爽(ガァン・シゥアン)報道官は4月4日、前日に中比高官が南シナ海の件で協議したことを認め、2017年以降始まった相互協力・信頼に基づく両国間対話の一環で、建設的に処理されると了解していると表明した。
同日付フィリピン『マニラ・タイムズ』紙:「外務省、パグアサ島周辺に中国船団が大挙していることは“違法”と表明」
外務省のエマニュエル・フェルナンデス次官補は4月4日、南シナ海のカラヤーン群島(スプラトリー諸島のフィリピン名)内のパグアサ島周辺を膨大な数の中国船団が取り巻いているが、これは明らかに1982年国連海洋法条約(UNCLOS、注後記)違反であると語った。
同次官補は、“大群による威嚇”であり、中国海軍であろうと漁船団であろうと、今後もかかる威嚇行為が継続するのであれば、フィリピン政府として相応の行動を取らざるを得ないと付言した。
更に、現在ASEANと中国間で協議が進められているCOCの精神にも反し、悪戯に緊張を高め、相互不信を惹起し、地域の平和と安定を損なうものだとも言及した。
(注)UNCLOS:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月30日に第3次国連海洋法会議にて採択され、同年12月10日に署名開放、1994年11月16日に発効した、海洋法に関する国連条約。通称・略称は国連海洋法条約で、別名「海の憲法」。日本は1996年6月に批准。
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フィリピンのトランプ;自身に批判的な上院議員の逮捕命令を出す等本家に負けず暴君振り発揮【米・フィリピンメディア】(2018/09/07)
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、自身に批判的な人・グループに暴言を吐き、また、自分第一主義で政策を進める等、ドナルド・トランプ大統領に近似していて、フィリピンのトランプと揶揄されている。これまで同大統領は、反対派の上院議員を監獄送りにし、同じく批判的な最高裁長官を追放している。そして今度は、自身を汚職及び麻薬取引き疑惑で強硬に追及してくる上院議員を逮捕するよう大統領令を出した。当然のことながら、同上院議員は大統領に逮捕命令権はないと提訴している。
9月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「上院議員がドゥテルテ大統領による逮捕命令は違法だと提訴」
フィリピンのアントニオ・トリリヤネス上院議員(47歳)は9月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が自身を逮捕するよう出した大統領令は違法だとして最高裁に提訴した。
同上院議員はかねてより、同大統領が過去に重大な汚職事件及び麻薬取引きに関わったとして糾弾してきていた。...
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9月7日付
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「上院議員がドゥテルテ大統領による逮捕命令は違法だと提訴」
フィリピンのアントニオ・トリリヤネス上院議員(47歳)は9月6日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が自身を逮捕するよう出した大統領令は違法だとして最高裁に提訴した。
同上院議員はかねてより、同大統領が過去に重大な汚職事件及び麻薬取引きに関わったとして糾弾してきていた。
同上院議員は、退役海軍将校だが、海軍大尉だったときに2003年クーデター未遂事件(注1後記)に、また、上院議員選挙に出馬する直前の2007年ホテル占拠事件(注2後記)に関わり、都合7年半余り監獄に入っていた。
しかし、2007年にベニグノ・アキノ大統領(当時)の恩赦で釈放され、過去の二つの反逆罪・動乱罪について無罪判決を勝ち取っていた。そして、上院議員に当選・就任した。
一方、自身を批判する人・グループに直情的な敵愾心を表すドゥテルテ大統領はこれまで、反対派の上院議員を麻薬犯罪の罪で監獄送りにし、同じく批判的な最高裁長官を、他の判事の決定という手段で追放処分にしている。また、外国人に対しても容赦なく、例えば豪州人修道女などを再入国禁止、あるいは国外退去処分にすると脅している。
そしてこの度同大統領は、目の上のたんこぶ的存在のトリリヤネス上院議員について、過去の反逆罪等の罪で改めて同氏を逮捕するよう、司法省及び軍に対して命令を下した。
ただ、法律専門家は、前任大統領が出した恩赦及びそれを追認した議会の決定について、現大統領にそれを覆す権利があるのか疑問だとしている。
同上院議員も最高裁の聴聞で、逮捕等の執行権は司法のみに認められているので、同大統領の命令は憲法違反だと訴えている。
ただ、かかる法律的解釈の問題があるにも拘らず、国防省は議会に対して、同氏を保護観察処分とし、また、軍事裁判所も同氏の過去の罪状について再度問い質すよう求めるとしている。
一方、同日付フィリピン『マニラ・タイムズ』紙:「元“厳格な判事”が最高裁でトリリヤネス氏の恩赦についての審理を担当」
トリリヤネス上院議員による、ドゥテルテ大統領の大統領令を無効とする申立てについて、最高裁で審理するのは、かつて“厳しい判決を下す判事”と言われたディオスダド・ペラルータ陪席判事(2009年、アロヨ政権時に就任)となる見込みとなっている。
同大統領は、同上院議員の恩赦を取消し、(反乱罪で)逮捕するよう司法省に命令を下しているが、同上院議員はまず、この仮処分の停止を9月4日に最高裁に申し立てている。
同陪席判事は、最高裁判事(計15名)のうち3番目の古株で、かつてケソン市(マニラ首都圏の都市)地方裁判所判事だった際、40人以上の被告人に死刑を宣告したことから、“厳しい判決を下す判事”との評判がたっていた。
なお、最高裁の大法廷での審理は9月11日に予定されている。
(注1)クーデター未遂事件:2003年7月、トリリヤネス大尉(当時)を含めた300人余りの若い将校が、グロリア・アロヨ政権(当時)の汚職を非難し、同大統領の退陣を求めて、マカティ市(マニラ首都圏の都市)のオークウッド・タワーに立てこもり。
(注2)ホテル占拠事件:2007年11月、トリリヤネス氏をリーダーとする36人が武器・爆弾を持ってペニンシュラホテルを占拠。追って投降したが、36人全員が反乱罪で訴追された。
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