トランプ政権;国連が米国の極貧層は1,850万人と発表したことに対して、僅か25万人に過ぎないと猛抗議【米メディア】(2018/06/28)
トランプ政権は昨年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退を決定した他、地球温暖化防止のための国際的枠組み「パリ協定」からの離脱も表明している。そして同政権は6月19日、国連人権理事会がイスラエルに対して恒常的な偏見を示してきていることを理由に、突然同理事会からの脱退を発表した。ただ、この背景には、同理事会の貧困及び人権問題特別報告者の報告内容も気に入らなかったとみられる。すなわち、同報告者が、米国の貧困層は4,000万人に上り、極貧層も1,850万人もいると報告したことに対して、同政権は、極貧層の実数は25万人に過ぎないと猛抗議しているからである。
6月26日付
『ワシントン・ポスト』紙:「国連が米国には“極貧層”が1,850万人いると発表したことに対して、トランプ政権は僅か25万人だと猛反発」
国連人権理事会が公表した、米国に“極貧層”が1,850万人いるとの報告に対して、トランプ政権は6月22日、とんでもない誤解で、実数は僅か25万人だとして猛抗議した。
同理事会から任命された、貧困及び人権問題担当の特別報告者(注後記)であるフィリップ・アルストン氏が今年5月、米国には貧困層が4,000万人いて、極貧層も1,850万人に上るとする報告書を公表していた。...
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6月26日付
『ワシントン・ポスト』紙:「国連が米国には“極貧層”が1,850万人いると発表したことに対して、トランプ政権は僅か25万人だと猛反発」
国連人権理事会が公表した、米国に“極貧層”が1,850万人いるとの報告に対して、トランプ政権は6月22日、とんでもない誤解で、実数は僅か25万人だとして猛抗議した。
同理事会から任命された、貧困及び人権問題担当の特別報告者(注後記)であるフィリップ・アルストン氏が今年5月、米国には貧困層が4,000万人いて、極貧層も1,850万人に上るとする報告書を公表していた。
これに対して米国のニッキー・ヘイリィ国連大使は先週、同報告者の示した数値は、“誇張され”かつ“政略的”であると非難した。
アルストン特別報告者はメディアのインタビューに答えて、数十年間公表された米国政府の国勢調査のデータを基にしたもので、極貧層は貧困層の収入の半分以下の人たちを指しているとする。
同報告者によると、2016年の当該数値は家族4人で年収が1万2千ドル(約132万円)であり、これによる貧困率は1960年代から少々下がっただけだとしている。
一方、トランプ政権側は、米保守系シンクタンクのヘリテージ財団が公表している貧困率算定基準による極貧層は、様々な社会保障(医療費補助、食糧支援、住宅補助)を加えても一日4ドル(約440円)、年間1,500ドル(約16万5千円)しか収入がない人たちであり、それは全世帯数の僅か0.08%(25万人)だと主張した。
更に、同政権側は、1980年代に比較して、貧困層は77%も減少しているとの数値もあるとしている。
しかし、多くの専門家は、ヘリテージ財団の公表値を前面に出すことで、結果として極貧層救済の措置がおざなりになる恐れを指摘している。
例えば、無党派シンクタンクのアーバン・インスティテュートのグレゴリー・アクス氏は、2016年における“深刻な貧困層”は1,570万人に上るとしている。
米連邦予算などを分析するシンクタンクのセンター・オン・バジェット&ポリシー・プライオリティーズも、米国の貧困層は約18%と、他主要国と比べて高いと主張している。
更に、プリンストン大学の経済学者アンガス・ディートン氏は、米国では、社会保障サービスを加えても一日4ドル以下で暮らしている人たちが530万人はいるとしている。
同氏は、一日4ドル以下が1,850万人もいるということに異議を述べることに異論はないが、しかし、ヘリテージ財団のいう25万人であるはずは決してなく、この数値がまかりとおると、貧困層問題が過小評価されてしまうと警鐘を鳴らしている。
(注)特別報告者:国連人権理事会が任命した、個人資格の独立した専門家。北朝鮮・イラン・ミャンマー・シリア等の特定国を対象とする報告者と、貧困・人種差別・信仰の自由・表現の自由・女性差別等のテーマ別の報告者がいる。同報告者は国連スタッフではなく、その勧告は国連の見解ではないものの、国連から特定された役割を与えられている。
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コロンビア大、入国ビザ取得不可にもかかわらず、シリア人を奨学金で支援(2018/04/17)
15日、
『AP通信』によると、ニューヨークのコロンビア大学は、米国の入国禁止令により受入れ不可となる懸念があるにもかかわらず、難民となったシリア人大学生のための奨学金制度を進めている。
同大学はこの制度を通じてすでにシリア人学生を受け入れているが、このたび2期目の申請を受付中であると発表した。昨年の275名の応募に匹敵する230名ほどがこれまでに応募している。
しかし、現在の米国の政策が変わらない限り、シリア人留学生は入国時に困難に直面するだろう。シリアの国民は、トランプ政権によって学生ビザを含むいかなるビザの取得も制限されているためだ。例外が認められるケースは非常に限られている。...
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同大学はこの制度を通じてすでにシリア人学生を受け入れているが、このたび2期目の申請を受付中であると発表した。昨年の275名の応募に匹敵する230名ほどがこれまでに応募している。
しかし、現在の米国の政策が変わらない限り、シリア人留学生は入国時に困難に直面するだろう。シリアの国民は、トランプ政権によって学生ビザを含むいかなるビザの取得も制限されているためだ。例外が認められるケースは非常に限られている。
今月下旬、シリアなどの国に対する入国禁止令の合法性が最高裁判所で審理される。大学経営者は、最高裁が入国制限を緩める、または無効にすることに期待している。判決が下される時期は未定である。
奨学金制度の設立に携わったコロンビア大学ビジネススクールのブルース・アッシャー教授は、次のように述べる。「我々は前に進める結論を下した。我々のしていることは人々を教育することである。特定の応募者が入学できないことが判明した場合であっても、最終的にはビザを取得できることを願っている。」
現在米国は、イラン、リビア、北朝鮮、ソマリア、シリア、イエメン、ベネズエラ(特定の政府役人が対象)の7カ国に対する入国を拒否している。チャドは以前対象であったが、最近対象リストから外れた。
ベネズエラを除くこれらの国々の国民は、移民として恒久的に米国に移住するためのビザ取得が禁止されている。観光ビザや学生ビザの規制は、国によって異なり、シリア人の場合いかなるビザも取得できない。制限のない国との二重国籍を持つシリア人の場合は、入国が認められる可能性はある。
コロンビア大学が2016年に奨学金制度を作った際、入国禁止令は存在していなかった。大学は、初年度はシリア人学生4人に授業料と住宅費を含む学費を無料にする奨学金を支給した。今年度も同様の人数に支給したい考えだ。応募資格を満たすには、難民であること、
現在レバノン、ヨルダン、トルコ、または米国に住んでいることが条件である。また応募者は、コロンビア大学の通常の入学要件を満たす必要もある。
コロンビア大学2年のクタイバ・イドルビさん(28歳)は、初年度に奨学金を支給された学生の一人である。経済学と政治学を学ぶイドルビさんは、自身の政治活動のためシリア政府治安部隊に拘束され、2011年にシリアを去った。2013年以降、米国に滞在しているが、もし奨学金がなかったら学業を続けられずアメリカを去らねばならなかっただろうと語った。「教育は就職への鍵となるだけでなく、世界を変えるための手段である。」と述べた。イドルビさんはシリア人に対する入国禁止を裏切りのように感じている。シリア人は米国の援助と軍事的支援を必要としており、入国禁止は「私たちはあなたを人間として好きではない、ここにいてほしくない」というメッセージを強調するものだと話した。
入国制限はこれまで何度か改正されてきた。禁止令の支持者は、学業や親族に会うためにビザが発給されないことは一部の人々に苦労をもたらすと認めている。しかし、危険を及ぼす可能性のある入国者をふるいにかけるためには特定の国に安全対策を講じることは必要で、この規則が必要なのだとの考えだ。「大学や医療などのためにアメリカに入国したい人にとっては不便かもしれないが、実際深刻な脅威にさらされている現実があるとの意見がある。」と保守系シンクタンク、ヘリテージ財団に籍を置く国家安全保障専門家のジェイムズ・カラファノ氏は述べた。
シリアは、内戦によって不安定であり、渡航者を適切に識別するために必要な記録を保持できるかわからない状況だという。
コロンビア大学は、シリア人難民の奨学金やその他資金援助を行う数十のアメリカの学校から成るコンソーシアムの一角をなす。
留学生をサポートするNPO法人米国国際教育研究所のアラン・グッドマン理事長は、コロンビア大学にあるような奨学金を提供している米国の学校は、これまでに約60人の学生を支援している、と語った。グッドマン理事長は「数字は需要に比べて少ないが、微力であっても支援を行う方が良いと思う。」と述べた。
世界全体で見ると、約500人の学生や教授が米国国際教育研究所の取組みを通じて米国や世界各国で支援を受けている。グッドマン理事長によると、最近では米国でのシリア人のビザ取得が大変難しいため、米国外の大学に留学するケースが増えてきた。
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