言いたい放題のトランプ大統領、2016年大統領選でのロシア妨害工作の容疑者起訴の事態に、当時の大統領オバマ氏に責任転嫁するツイート【米・英・中国メディア】
ドナルド・トランプ大統領は、今週のGlobaliで報じられているとおり、「ワシントン誕生日(注後記)」に発表された米政治学者らの歴代米大統領の評価ランキングで、最下位の44位に甘んじた。同大統領自身がこれまで否定してきた、ロシアによる2016年大統領選妨害工作の容疑者が2月16日に起訴されたニュースと併せて、泣きっ面に蜂の事態ではある。更に、上記評価ランキングで、バラク・オバマ前大統領が8位にランクインしたこともショックだったのか、あろうことか、ロシア妨害工作があったとしたら、それを防げなかった2016年大統領選時の大統領であったオバマ氏にその責任がある、と子供でも判る詭弁を弄するツイートをしている。
2月19日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「トランプ大統領、ロシアによる大統領選妨害工作事件についてオバマ前大統領に責任転嫁」
ドナルド・トランプ大統領は2月19日、2016年大統領選時のロシア妨害工作疑惑が確実視される中、当時の大統領だったオバマ氏にそれを防げなかった責任があるとツイートした。
同疑惑を捜査している、ロバート・マラー特別検察官が2月16日、大統領選妨害工作容疑でロシア人13人を起訴している。...
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2月19日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「トランプ大統領、ロシアによる大統領選妨害工作事件についてオバマ前大統領に責任転嫁」
ドナルド・トランプ大統領は2月19日、2016年大統領選時のロシア妨害工作疑惑が確実視される中、当時の大統領だったオバマ氏にそれを防げなかった責任があるとツイートした。
同疑惑を捜査している、ロバート・マラー特別検察官が2月16日、大統領選妨害工作容疑でロシア人13人を起訴している。
その際にもトランプ大統領は、2016年9月にウラジーミル・プーチン大統領に対して、オバマ大統領(当時)が大統領選への不当介入を止めるよう告げていたのに、結局実のある防御策が講じられなかったともツイートしていた。
2月20日付英『ハフィントン・ポスト英国版』:「トランプ大統領、論理と事実を無視してオバマ氏をツイート攻撃」
トランプ大統領は、米大統領選でロシアによる妨害工作があったとすれば、当時大統領だったオバマ氏に責任があるとツイートした。しかし、同大統領はそれに関連する2つの事実を無視している。
(1)オバマ氏は2016年当時、ヒラリー・クリントン候補のキャンペーンへのハッキングによる妨害行為があったとして、35人のロシア外交官を国外追放し、更に9人のロシア人に対して制裁を下している。つまり、同氏は、何もしなかった訳ではない。
なお、2017年8月にプーチン大統領が報復措置として800人の米外交官を追放した際、既に大統領に就任していたトランプ氏は、ロシアの決定を非難するどころか、米外交官の人件費が削減できたとプーチン氏に感謝していた。
(2)トランプ政権となって以降、ロシア人グループが先週起訴されたように、ロシアによる米民主主義を脅かす行為に拍車がかかっている。現に昨年末、米上・下院が、ロシアの妨害工作を罰するため、新たな制裁決議を圧倒的多数で可決している。にも拘らず同大統領は、その制裁を発効させる署名を逡巡した。
2月19日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「トランプ大統領、ロシア疑惑の捜査に激怒して前任のオバマ氏の責任追及」
2016年米大統領選時に不当介入したロシア人グループの2月16日付起訴について、トランプ大統領は2月17日夜及び18日朝、週末を過ごしているフロリダ州のマー・ア・ラゴ別荘で、何ら対抗措置を取らなかった当時の大統領のオバマ氏に責任があるとツイートした。
そして同大統領は、ロシアによる妨害工作について非難はせず、代わりに、モラー特別検察官が発表した起訴状によって、トランプ陣営がロシア側と共謀していたとの事実はないことが証明されたと理解しているとまで言い放った。
また同大統領は、オバマ氏の他、下院情報委員会のアダム・スキッフ副委員長(カリフォルニア州選出の民主党議員)、CNNニュース、民主党までも攻撃の槍玉に上げた。
更に同大統領は、マラー特別検察官の起訴状によると、ロシア人グループの大統領選妨害工作は2014年から始まっており、自身が大統領候補に名乗りを上げる遥か以前の話であるとして、従って、ロシア側がトランプ氏を勝たそうとした訳ではないことが明らかだ、とも言ってのけた。
(注)ワシントン誕生日:米連邦の祝日(正式名称)。元々、2月22日生まれの初代大統領ワシントンを記念する日だが、現在は2月の第3月曜日に設定されている。非公式に「プレジデンツ・ディ(大統領の誕生日)」と呼ばれ、2月12日生まれのリンカーンを共に記念する日とされる。但し、いくつかの州では、ワシントン誕生日とは別に2月12日をリンカーン誕生日として州の祝日にしている。
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米・英・シリア・ロシアメディア;ISと有志連合の戦いの行方は?(3)-安保理の後押し
12月17日付
Globali「イスラム過激派組織イスラミックステート(IS)と有志連合の戦いの行方は?(2)」で触れたとおり、野党・共和党から弱腰外交と非難されたオバマ大統領が、IS掃討作戦に積極的に動き出しただけでなく、英国、フランス、ロシアの協調に加えて、ドイツも積極的に関わり始めている。そして今度は、国連安全保障理事会が、資金面でISを封じ込めようと、ISを支援した個人・団体に資産凍結や渡航禁止、また、武器禁輸などの制裁を科す決議案を全会一致で採択したと各国メディアが伝えた。
12月17日付米
『CBSニュース』は、「国連安保理、IS資金遮断を決議」と題して、「国連安全保障理事会は12月17日、理事国15ヵ国の財務相会合を開き、ISのテロ活動等を弱体化させるため、数十億ドル(数千億円)に上る資金提供の道を絶つための政策についての決議を全会一致で採択した。ISはこれまで、石油密売、薬物密輸、身代金目的の誘拐、シリアやイラクの歴史的遺物の売買などを通じて多くの資金を集めている。...
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12月17日付米
『CBSニュース』は、「国連安保理、IS資金遮断を決議」と題して、「国連安全保障理事会は12月17日、理事国15ヵ国の財務相会合を開き、ISのテロ活動等を弱体化させるため、数十億ドル(数千億円)に上る資金提供の道を絶つための政策についての決議を全会一致で採択した。ISはこれまで、石油密売、薬物密輸、身代金目的の誘拐、シリアやイラクの歴史的遺物の売買などを通じて多くの資金を集めている。そこで米国ルー財務長官のリードで国連安保理は、ISへの資金提供に関わった個人・団体に資産凍結や渡航禁止、また、武器禁輸などの制裁を科す決議案を採択したもの。」と報じた。
12月18日付シリア
『シリア・アラブニュース』(1965年創刊の国営通信)は、「国連安保理、テログループの資金封じ」と題して、「国連安保理でロシアのチュルキン国連大使は、ISが搾取した大量の原油が、シリアからトルコの国境を越えてトルコの石油精製所に運び込まれており、この原油密売によってISは、一日当り150万ドル(約1億8千万円)の資金を得ていると糾弾した。更に同大使は、ロシアの空爆によって原油密売ルートを絶つことに成功したが、ISは依然、その他の天然資源、農作物、工業製品などの売買で年間7億ドル(約840億円)の収入を得ているとも付け加えた。」と伝えた。
また、同日付ロシア
『ロシア国営テレビ』は、「国連安保理、IS資金封じを狙った決議案を全会一致で採択」と題して、「今回の決議案は、各国にIS資金源遮断のため何を履行したかを120日以内に報告すること、また、国連潘基文(パン・ギムン)事務総長にIS資金源を洗い出す報告書を45日以内にまとめるよう求めた。なお、同決議案が採択される前の12月15日、米ケリー国務長官がモスクワを訪問し、ロシアのラブロフ外相と会談して、シリア問題について米ロ間の歩み寄りを図っており、プーチン大統領も12月17日、シリア問題に関し米ロ間の意見の相違はかなり狭められたと強調していた。」と報じた。
一方、12月17日付米
『ABCニュース』は、「国連決議を受けて、米人二人がテロ支援容疑で逮捕」と題して、「国連のIS制裁決議が採択された12月17日、米当局は、ペンシルベニア州の19歳の男を、ISを支援する目的で57ものツイッター・アカウントを保有・運営した容疑で逮捕し、また、カリフォルニア州の22歳の男を、IS戦闘員になるために出国しようとしたところを拘束した。」と伝えた。
更に、12月18日付英
『ハフィントン・ポスト英国版』は、「アノニマス、ISに更なる警告」と題して、「国際的ハッカーグループのアノニマス(注後記)は12月18日、テロリストグループのISに対して新たな攻撃を仕掛けると発表した。ISとインターネットでつながっている世界中のアカウントを焙り出すというもので、既に、IS支援者と認められる2万人のソーシャル・メディアアカウントを特定したという。なお、アノニマスは先月、ISによるパリでの無差別テロ事件を受けて、“パリ作戦”と題したISネット攻撃を仕掛ける反ISキャンペーンを展開するとしていたが、直近数週間では、IS支援者と無関係なネット・アカウントも攻撃されたとして非難されていた。」と報じた。
なお、国連安保理は12月18日、シリアの和平を目指す初めての決議案を全会一致で採択している。決議は、シリア政府(アサド政権)と反体制派の双方が参加する「政権移行プロセス」についての公式な交渉を、来年1月初旬を目処に開く等、シリア内戦終結、和平に向けた段階的なステップを踏むよう、国連がリードすることを求めたもの。これまでの国連安保理決議案は、常任理事国のロシアや中国の拒否権行使で一切採択されていなかった。
(注)アノニマス:ハクティビズムという、政治的な意思表示や政治目的の実現のために、ハッキングを手段として利用する行為、もしくはそのような行動をインターネット上で取る活動家の国際的ネットワーク集団。
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