テキサス州共和党のグレッグ・アボット知事は10日、米国の国境を守るために、「連邦政府が取り組むべき仕事」を州自ら行っていくことを宣言し、トランプ前大統領が進めていた国境の壁の建設をテキサス州で取り組んでいくことも明らかにした。
米
『テキサストリビューン』と
『ニューズマックス』によると、アボット知事は、テキサス州デルリオで開催された国境に関するサミットで、「テキサス州で国境の壁の建設を開始する計画を来週発表する」ことを明らかにした。さらに、不法移民の急増に対し、非常事態を宣言し、国境警備強化のための10億ドル(約110億円)の資金の承認や、テキサス州への不法入国者を逮捕する方針なども発表した。
アボット知事は記者会見で、「不法移民の流入と不法な密輸品の流入を食い止めるための方法に取り組むことは、私たち全員の益となるだろう」と述べた。また、国境沿いでの検挙数を増やし、州刑務所の収容人数を増やす計画も発表した。
知事は、テキサス州には「連邦政府が敷いてくれたレッドカーペットはなく」、「期待していたものとは違う待遇を受けることになるので、もうテキサス州を越えて来ようとは思わないだろう」と述べ、会議出席者から拍手を受けた。
また、アリゾナ州との間で、国境の「危機」を解決するための州間協定の締結を発表し、他の州にも同様の協定を呼びかけた。
アボット知事はサミット後の声明で、「バイデン大統領の国境開放政策により、記録的な数の不法移民、麻薬、密輸品がテキサスに流入し、南の国境で人道的危機が発生している」と述べた。そして、本来は「国境の安全確保は連邦政府の責任である。テキサス州はこの危機が拡大するのを黙って見過ごすことはできない。テキサス州は、この危機で被害を受けている地域社会と協力して、不法に入国した人々を逮捕、拘留する」と宣言した。
さらに、「国境の安全確保、犯罪者の逮捕、土地所有者の保護、地域社会からの危険な薬物の排除、そしてテキサス州民が必要としている支援を提供するために協力しなければ、我々の努力は効果的ではない。これは前例のない危機であり、テキサス州はこれまでに経験したことのない最も強固で包括的な国境対策計画で対応している」と訴え、「国境の危機は笑い事ではない。国会議員が毎年国境に巡礼して、戻って連邦政府レベルで危機を解決するために全く何もしないというような観光地でもない」と指摘した。
2週間前、アボット知事は3月に発表した「オペレーション・ローンスター」の一環として、1000人以上のテキサス州公安局の隊員と州兵を国境に配備し、国境の警備を強化した。その後、国境での人身売買対策にも取り組み、テキサス州警察とテキサス公安局が、国境を越えてきた同伴者のいない未成年者に聞き取り調査を行い、人身売買の被害者を特定する計画を発表した。
バイデン大統領は、就任初日に国境の壁の建設を中止することを宣言している。その後、亡命希望者が米国の移民裁判所で審理されるまでメキシコで待機することを義務づけたトランプ前政権の「移民保護プロトコル」の見直しも命じている。
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ジョー・バイデン大統領(78歳)はこの程、長らく空席となっていた駐日米国大使に前シカゴ市長のラーム・エマニュエル氏(61歳、注1後記)を指名した。しかし、日本政府は心の中で、付き合いづらい候補者が指名されてしまったと落胆していると一部米メディアが報じている。
5月13日付
『ニューズマックスTV』(1998年設立の保守系メディア):「日本側、ラーム・エマニュエル氏の駐日大使候補指名に落胆」
ジョー・バイデン大統領は5月12日、第31代駐日米国大使として、前シカゴ市長(2011~2019年)であり、かつオバマ政権(2009~2017年)下では大統領首席補佐官(2009~2010年)を務めたラーム・エマニュエル氏を指名した。
しかし、日本の菅政権に近い事情通の情報によると、日本政府は同氏の指名に落胆しているという。
あるベテラン記者が『ニューズマックス』に語ったところによれば、“日本政府は、彼はむしろ駐中国大使の方が相応しいと思っている”という。
また、安倍政権に近かった事情通も、匿名を条件に『ニューズマックス』のインタビューに答えて、“同氏の選出は日本側にとって困惑となる”とした上で、“同氏は多くの強みを持っているかも知れないが、ただそれは外交上相応しいものではない”と断じた。
同氏はかねてより、激高しやすい性格、汚い言葉遣いに加えて、オバマ政権下の首席補佐官時代もシカゴ市長在任中も、しばしば回りと衝突する姿が目撃されていた。
従って、その事情通も、“彼に関する前評判が極端すぎる”とコメントした。
何故なら、日本人は得てして、過ちに寛容で万事に控えめであり、エマニュエル氏の性格とは正反対であるからである。
米政府はこれまで、駐日大使には次のような大物政治家を充ててきた。
ハワード・ベイカー(1925~2014年):上院院内総務(共和党、1977~1985年)、レーガン政権(1981~1989年)時の大統領首席補佐官(1987~1988年)を経て、ブッシュ政権(2001~2009年)時に第26代駐日大使(2001~2005年)。
トム・フォーリー(1929~2013年):下院議長(民主党、1989~1995年)を経て、クリントン政権(1993~2001年)時に第25代駐日大使(1998~2001年)。
ウォルター・モンデール(1928~2021年):カーター政権(1977~1981年)時の副大統領を経て、クリントン政権時に第24代駐日大使(1993~1996年)。
マイク・マンスフィールド(1903~2001年):上院院内総務(民主党、1961~1977年)を経て、カーター政権及びレーガン政権時に第22代駐日大使(1977~1988年)。
かかる歴史もあって、バイデン政権を観察する人たちは、同大統領が、エマニュエル氏ではなく、もっと大物の民主党政治家、例えば、クリントン政権時の副大統領(1993~2001年)で、2000年大統領選では民主党候補ともなったアル・ゴア氏(73歳、環境活動家として2007年にノーベル平和賞受賞)などを指名することを期待していた。
5月12日付『トゥルースアウト』オンラインニュース(2001年設立の倫理追及のNPOメディア):「好戦的なラーム・エマニュエル氏の米国大使指名は悲嘆にくれる選択」
バイデン政権が発足して4ヵ月、日米関係に注力しようとしている政権が誰を駐日大使に指名するか注目されていた。
しかし、この政治家だけは政権内に入れるべきではないと警告されていたにも拘らず、バイデン大統領は、よりによってエマニュエル氏を指名してしまった。
彼の好戦的キャリアはつとに有名で、シカゴ市長時代(2011~2019年)もいろいろ物議を醸していた。
特に強調すべきは、2014年時の2期目を狙った選挙戦時の問題行為である。
実は、Black Lives Matter(黒人の命も大切、BLM、注3後記)運動が大きく広がる契機のひとつとなった事件が、シカゴで2014年に発生している。
同年10月、歩行中のアフリカ系米国人少年のラクアン・マクドナルド君(享年17歳)が、シカゴ市警の白人警官ジェイソン・バン・ダイクに16発も撃たれて死亡した。
当初市警側は、ナイフを保持した同少年が警官の警告に従わなかったため、正当な発砲だったとして、同警官が罪に問われることはなかった。
しかし、事件から13ヵ月後の2015年11月、地裁の命令によって、パトカー搭載カメラの映像が提出されると、無抵抗の同少年をダイク容疑者が後ろから撃っていたことが判明した。
この結果、同容疑者には第1級殺人容疑で有罪判決が下されることになったが、実はこの背景には、2期目の再選しか考えていなかったエマニュエル市長が、選挙に不利とならないよう、搭載カメラ映像の隠蔽を図ったと考えられる。
なお、裁判を通じて真実が判明したこともあって、市警側の一方的な落ち度につき責任を問われ、市から遺族に対して500万ドル(約5億5千万円)の賠償金が支払われることになっている。
従って、エマニュエル氏は市長に再選されたものの、かかる人物が、果たして重要な同盟国のひとつである日本に駐留する大使として適任か、もっと厳しく評価する必要があろう。
(注1)ラーム・エマニュエル:ユダヤ系移民の政治家でイスラエルの国籍も所有。典型的なシオニスト(注2後記)で、1993~1998年の間、ビル・クリントン政権下で補佐官を務めた際は、毒舌・攻撃的姿勢から、同僚より“ランボー(1982年制作映画の主人公のベトナム帰還兵)”と呼ばれる。2003~2009年イリノイ州選出下院議員、2009~2010年バラク・オバマ政権下で大統領首席補佐官、そして2011~2019年にシカゴ市長を2期務めた。
(注2)シオニスト:イスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建、あるいはユダヤ教、ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興運動(ルネサンス)を興そうとするユダヤ人の近代的運動を支持する人。
(注3)BLM:アフリカ系米国人のコミュニティに端を発した、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動。特に、白人警官による無抵抗な黒人への暴力や殺害、人種による犯罪者に対する不平等な取り扱いへの不満を訴えている。
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