10月21日付Globali「親米国家のシンガポールも中国マネーには逆らえず(?)」で触れたとおり、シンガポールのリー・シェンロン首相は、9月下旬の訪中時の歓迎ぶり、更に、10月中旬の中国共産党大会で習近平(シー・チンピン)国家主席の強力な指導体制継続を踏まえて、遥か太平洋の彼方の大国との連携方針を微妙に変更し、同じアジアの大国に秋波を送る態度を見せ始めている。しかしながら、総人口・領土で遥かに劣るシンガポールとしては、東南アジア諸国連合(ASEAN)内の連携を図ることも重要とみて、米軍事力分析機関グローバル・ファイアーパワー(GFP)の2017年版軍事力世界ランキング(注後記)で総合21位のタイと安全保障面での連携を強化している。
11月7日付米
『ザ・ディプロマット』:「ホァン大臣の訪タイの主目的はシンガポール・タイ間防衛連携」
シンガポールのホァン・ヨンホン(黄永宏)国防相は11月5~7日、タイとの防衛連携強化のためにタイを訪問している。
シンガポール国軍はこれまで、米国や豪州においてと同様、タイでの軍事訓練を行ってきた。特に、2000年以降はタイが主催する共同軍事演習“コブラ・ゴールド”にも積極的に参加し、また、新たに米国を交えた3ヵ国合同訓練にも関わっている。
シンガポール自身は長らく親米路線を取っているものの、米国自身が東南アジアで軍事同盟関係を結んでいるのは、タイとフィリピンのみである。
なお、シンガポール国防省(MINDEF)は、ホァン国防相はタイのプラユット・チャンオチャ首相(現陸軍総司令官)やプラウィット・ウォンスウォン国防相他と会談し、海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ対策につき協議したと発表している。
同日付シンガポール『チャネル・ニュース・アジア』:「シンガポール、海洋安全保障及びテロ対策でタイとの連携強化」
MINDEFは11月6日、ホァン国防相が訪タイの上、両国間の海洋安全保障、テロ対策、サイバーセキュリティ対策での協力体制強化を確認したと公表した。
同国防相がタイのプラユット首相と会談した際、同首相からは、2018年のASEANサミット議長国となるシンガポールを支援するとの表明があったとする。
なお、同国防相はまた、タイが主催したアジア防衛・安全保障博覧会にも出席し、プラウィット副首相兼国防相も面談したという。
(注)GFPの2017年版軍事力世界ランキング:兵器の数・質・種類、兵士の数・質、人口(潜在的兵士の数)、資源力、産業構造、核兵器ボーナスポイント、北大西洋条約機構(NATO)などの軍事同盟ボーナスポイント等を総合的に評価して、世界127ヵ国の軍事力ランキングを表したもの。主要国のランキングは、(1)米国、(2)ロシア、(3)中国、(4)インド、(5)フランス、(6)英国、(7)日本、(8)トルコ、(9)ドイツ、(10)イタリア、(11)韓国、・・・、(21)タイ、(22)豪州、(23)北朝鮮。
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史上稀にみる誹謗中傷に明け暮れた、米大統領選の結果がもうすぐ判明する。米国のみならず、国際社会のリーダー的役割を担う米大統領選挙が、“どちらが、より嫌いでないか”という消却方で決まるという状況に、米国民のみならず、多くの国から失望の声が聞こえる。オバマ大統領が“アジア太平洋重点政策”に挙げたアジアの国も、冷やかに見ているようである。
11月8日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「アジア、どちらが米大統領選で勝とうとも米戦略見直し必至」
「●日本の元外交官は、日本側がより好ましいと思うヒラリー・クリントン氏が仮に勝利しようとも、“アジア太平洋重点政策”を進めるに当っては、米国の信頼を取り戻すことが必須と発言。
●何故なら、ひとつには、アジア太平洋諸国が自由貿易発展を願って、漸く基本合意に漕ぎ着けた「環太平洋戦略的経済協定(TPP)」について、ドナルド・トランプ候補だけでなく、クリントン候補も選挙中は反対を表明していたこと、二つ目は、誹謗中傷・暴言等で名立たるトランプ氏を、曲りなりにも共和党代表候補に選んだという米国民に対する批判の目があること。
●インドネシアのバスリ前財務相も、TPPは中国排除の、言わば“アジア太平洋重点政策”を推し進める上で米国にとって最重要ツールであるにも拘らず、両候補がいずれもこれに否定的であることから、アジアにおける自由主義貿易推進の先進国、特に日本、韓国、台湾、シンガポールなどが、今後の対米戦略に懸念を抱いているとみられること。
●更に、シンガポールのアジア研究専門家のバジパイ教授も、米国がTPPから離脱するとなれば、それは中国がアジア地域での影響力増大を獲得することを意味すると解説。
●現実問題、既にフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領、マレーシアのナジブ・ラザク首相は、米国を見限って中国寄りの政策を推進。」
同日付シンガポール
『チャネル・ニュース・アジア』オンラインニュース(
『AFP通信』配
信):「アジア市場はクリントン氏勝利に期待して上昇せるも、投資家は苛立ち」
「●11月8日のアジア市場は、クリントン候補が勝利するとの期待の下、軒並み上昇。
●香港+0.5%、シドニー+0.1%、ソウル+0.3%、シンガポール+0.7%、上海+0.5%。
●ウェリントン(ニュージーランド)、台北、マニラ市場も上昇したが、日経株価は若干下落。
●また、ロンドン▼0.1%、パリ▼0.2%、フランクフルト横ばいと、欧州市場は悲観的。」
同日付中国
『人民日報』:「どちらの候補が勝とうが、米大統領選は“偽物の”民主主義を露呈」
「●今回の米大統領選が民主主義とはほど遠いと言える第一の理由は、二人の候補が、政策論争ならぬ誹謗中傷合戦に終始。
●第二に、民主党候補にクリントン氏が決まった途端、敵である共和党の重鎮たちが、トランプ候補を落選させるべく、共和党員にクリントン氏への投票を呼びかけ、更には、(中立であるべき)大手メディアの多くが、クリントン氏支持を公にしたこと。
●また、米経済、社会、政治をみてみても、米国が“病んでいる”ことが明白:
・米経済は成長しているとするが、貧富格差は拡大(弱者の犠牲の上で経済成長)。
・(初の黒人大統領の)オバマ政権の8年間を経ても、依然米社会の人種差別問題は未解決どころか悪化。
・政治的にも、二大政党がそれぞれ極端な政策を標榜し、かつ、相手方を非難するばかりで、およそ民主主義政党と評価するのは困難。
●以上より、どちらの候補が勝利したとしても、米国の真の政治的問題に直面することになろうし、国際社会も米国の将来について、大いなる懸念をもって注視。」
一方、同日付米
『クォーツ』オンラインニュース:「中国国内で米大統領選の結果を知る方法」
「●世界中で、米大統領選の投票状況についてのニュースが飛び交っているが、中国国内の大衆にとって、その情報を得るのは一苦労。
●第一に、中国政府がフェイスブック、ツイッター、ユーチューブ他多くの外国ネットサービスの閲覧を制限。
●更に、中国メディアに対しても、選挙戦の生放送は通常禁止。
●しかし、当クォーツが中国国内をチェックしたところ、米ABCニュース、CBSニュース、CNN、Foxニュース、NBCニュース、更には、当クォーツ・オンラインニュースは、これまで中国政府に制限されたことはなかったので、今回も当該選挙速報がつぶさに入手可能。」
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